漫画「潔く柔く」いくえみ綾 感想

最近、少女漫画にハマってしまって、電子書籍サイトで試し読みして、気に入ったのは、ブックオフ、ネットオフで買って読んでいる。

そして最近読んだ「潔く柔く」に今とらわれてしまっていて、とらわれすぎて気持ちが苦しい。
なので、感想を書いて気持ちをまとめて多少なりともすっきりしたい。

完結して全巻出ているのを購入したし、試し読みもしていたから、幼馴染の男の子が死んじゃって、そのトラウマをひきずったままの女の子が別の男と出会って救済される話、というあらすじは知っていた。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

相手が死んじゃう話は苦しくなってしまうのはわかっていたけど、相思相愛のお互いを唯一無二に考えている男女のピュアな話が大好きだから、読みたかった。
最後は救済される話だから、死んだのが悲しい気持ちは消えなくても、最後まで読んだら、もっとすっきりできると思っていたのに、いろいろとはっきりと描かれない描かれ方をしているので、最後まで読んでも、え?これで終わりなの?と思って、かなりモヤモヤした。

 

 

思った通りにハルタとカンナの話は好きだったし、ハルタが死んじゃうのはすごく苦しかった、いつまでも。
でも思ってたのと違って、カンナはハルタのことを大好きじゃなかった。
いや、本当は大好きだったし唯一人の人だったけど、ハルタが死んだときカンナの恋愛感情は幼くて、それに気付いていなかった、という話だった。
でもそのこと自体が、はっきりとは描かれていないので、最終章にでてくる「ハルタのことを好きになってやれなかったから罪悪感を抱えている」ということをロクに言われ、カンナもそれを認めていて、私はそれを文字通りの意味に受け取って、「え?カンナってハルタのこと好きだったんじゃないの?」と思って、ショックだった。

「カンナは当時本当は誰のことを好きだったのか」という問いかけは、他の登場人物の心の声として何回か出て来るが、答えは出てこない。私はその問いかけ自体に違和感を感じていて、そりゃハルタでしょって思ってた。
そして最終章で、アサミに再会して、今度は直接、アサミがカンナに、もう時効だから教えてよと聞くのだが、考えてる風な絵のまま、答えずに終わってしまう。

 

 

最終話で、カンナの胸の中にずっとあったシコリがとける描写のシーンで、
ベンチに座るカンナ、カンナが手を伸ばして、そこに誰かの手が重なり何かをカンナに渡す
そして、「…あのなぁ」「うん、なぁに?」というセリフの後、カンナが目を覚ますというシーンがある。
このカンナの手に、後に出てくる「温かなもの」を渡して話しかけた誰かは、ハルタだと思うけど、こんな手だけじゃなく、話し始めの言葉だけじゃなく、ちゃんとハルタとカンナが会って話す夢の中のシーンを描いてほしかった。
こんなに曖昧にぼんやり描かず、そこははっきりしてほしかった。
カンナがハルタのことを本当はどう思っていたのかをちゃんと言葉にして書いてほしかった。
あの時、カンナは気付いてなかった、自覚していなかったけど、本当はハルタがカンナのことを思っていたのと同じようにカンナもハルタが大好きだったし一番大事な人だったってことをちゃんと言葉にしてはっきりしてほしかった。
あのなぁ、なんて話しかけの言葉だけじゃなく、その後ハルタがカンナに何を話したのか、死ぬ前に言えなかったハルタがカンナを思う気持ち、告白をちゃんと書いてほしかった。
ハルタの気持ちは、一応、中学生時代、キヨに話していたというのが、中学時代のエピソードでちゃんと書かれてはいる。カンナには言えなかったハルタの気持ちはちゃんと言葉で書かれてはいる。
そしてそれが最後に大人になってからだけど、キヨを通じてだけど、カンナに伝えられてはいる。
中学時代、ロクに話したときで2回出てきているからか、カンナに伝えるシーンでは絵だけで言葉がない。
「私の知らなかったこと」というモノローグは、中学時代のエピソードの時と同じだ。
だから、カンナが好きだという意味のことをハルタがカンナに伝えたんじゃないか、っていう想像はできるけど、それでもやっぱりちゃんとハルタがカンナに伝える言葉として聞きたかったし、手だけじゃなくちゃんとハルタの姿でカンナと会ってほしかった。

 

 

そして、カンナの気持ちは全然言葉で出てこないまま終わってしまったので、ここで、二人でお互いの気持を伝え合うという姿をちゃんと描いてくれてたら、こんなにモヤモヤせずに、私にとって素敵な話で終われたんじゃないかっていう気がしている。

ああ、うん、そうか。
書いていて自分で納得したけど、「…あのなぁ」「うん、なぁに?」の後って、きっと二人でお互いの気持を伝えあったんだよね。ハルタが死ぬ前に言えなかったカンナへの好きの気持ちだけじゃなく、カンナがあの時自覚してなかったけど、本当は思っていたハルタへの好きの気持ちも。
そう思ったら少し気が済んだので、そう思っておくことにしよう。
作者がはっきり描いてないんだから、自分で補完するしかない。
当然(?)作者はその後何を話したのかを考えつつ、読者の想像に任せて余韻を残した、ということなんだろうけど、それを推測するには、あまりにその材料が足りないんじゃないだろうか。はっきり描かれていなさすぎる。
ああ、本当にあのシーンは、ちゃんとハルタとカンナを描いて会話をさせてほしかったなぁ。

 

 

そして、カンナはあの当時自覚できていなかっただけで本当はハルタが好きだった、というのが正解だと思っているんだけど、そうだとして、いや、そうじゃなかったとしても、カンナが本当はハルタのことをどう思っていたのかを正しく(作者の意図通り)解釈できている人がどれだけいるのだろう。
カンナがはっきり言わなくても、それまでに描いているいろんなことからそこはわかるはず、というつもりで書いてるんでしょうが、そこのところ、かなりの人が、カンナはハルタのことを好きじゃなかった、と解釈しているようにみえます。そこもはっきり描かれていなさすぎる。
ここはこの物語のかなり重要な要素だと思うんだけど、こんなに解釈が分かれてしまうようでは、描き足りなかったのではないかと思います。私も自分で読んだだけでは、そうだと思う、そうであってほしいけど、それにしてはどうもセリフ(好きになれなかった罪悪感)がそう解釈できない、と思って、悩みました。
そしてネットでいろいろ検索しました。

本当はやっぱりカンナはハルタのことを好きだったんだ、ってちゃんと思えたのは、このブログを読んだおかげ。
http://olivelove.cocolog-nifty.com/konna/2009/12/post-2838.html
すごく納得のいく説明だった。ただ残念ながら完結する前に書いているので、最後の方の話のことが書いていない。

 

 

この作品の中で、いまひとつ、ピンとこないところはいくつかある。

ラスト、中学時代のカンナとハルタが出てきて、ハルタが最後に「見つめることが愛なのか」というセリフを言うんだけど、この言葉も私にはピンとこなかった。
見つめるを見守ると解釈している人が多くいて、ハルタが天国からカンナを見守るっていう意味に受け取ってる人がいるようだけど、見つめると見守るは意味合いが違うと思う。
ハルタが天国からカンナを見守るということなら、中学生じゃなく高校生のハルタが出てきて、大人になった今のカンナの姿を見ている描写になるんじゃないだろうか。

ハルタが亡くなった時の高校生の姿ではなく中学生で描かれているということに意味があると思う。
ハルタの髪の長さ、カンナがハルタに普通に話しかけていること、カンナがマフラーをしている等から推測して、中3の冬、つまり、ハルタがキヨに「自信がない」という話をした後、じゃないかと思う。
自信がないと言っていたハルタが「見つめることが愛なのか」と気付いた、みたいな感じの場面で、踏み出そうとしても足がすくむと言っていた時と、中3の終わりにカンナに初めてキスする時の間の時期なんだろうと思うんだけど、見つめることが愛という言葉自体の意味はわかっても、ここで物語の最後でハルタがそれを言う意味、見つめることが愛だと気付いてどうなのか、というのがよくわからない。

「見つめるのが恋」だったら、第一話にあるように、恋に気付いたってことになるけど、ハルタはカンナを無視し始めた小6ぐらいからカンナへの恋に気付いてたと思うから、恋に気付いたシーンではない。
(10巻でキヨへの告白シーンで言っていたように、キヨ「本気で好きな子には意識してしゃべれなくなっちゃったり」ハルタ「いやそうゆう時期はもうすぎた」の時期が「6年になった頃くらいかな、なぜかむこうが無視するようになったから」とカンナが10巻冒頭の中1の時に言っていた時期だと思う)

 

 

またその後に最終章で何度か出て来る「魂は~」の言葉が続くのも関係あると思うんだけど、そこもどう関係あるのかピンとこない。
ついつい見つめてしまう、ああこれが恋なんだっていう、恋への気づきが見つめることっていうのには納得するんだけど、見つめる=愛って、そうかなぁ?
見つめることが愛っていう言葉自体がいまいちピンとこないんだ。

それから、キヨがロクにハルタの「自信がない話」をしたとき、ロクが涙を流して「残酷だな」と言ったこと。
残酷だから、カンナにはこの話は言うなって言ったこと。
ロクは、ハルタがカンナのことを大好きだったことは既に知ってたんだよね。
涙を流したってことは、ハルタがカンナのことを好きっていうだけじゃない、それ以上の何かを知ってということなんだろうけど、それって何だろう。
ハルタ「一番だいじなことなのに、一番自信がねんだよ」
   「踏み出そうとしてもなんでか足がすくむんだ、どっかに落とし穴がある気がして、落ちたらもう戻れないんじゃないかと思うと、ビビる」

 

 

モモカからハルタとカンナの話をロクがどう聞いたのかは、わからない。言葉じゃなく絵で描かれてただけだから。でもカンナに「好きになってやれなかったから後悔してるんだろ?」と言っているんだから、ハルタが死んだ時に別の男(マヤ)と会っていたってのは聞いてるんだろう。そこからそう推測したんじゃないだろうか。
彼女じゃなかったというのはカンナも言ってて伝わってそうだから、告白してなかったってことも驚きではない気がする。落とし穴がある気がして踏み出せないってところなのかな。

ロクは、カンナが本当はハルタのことを好きだったけど当時は自覚していなかったから、ちゃんと好きになれなかったんだってところまで、わかってたんだろうか?そこまではわかってなかったよね、きっと。
マヤと会ってたってことから推測して、好きになってやれなかった、と言っているだけで、本当はカンナもハルタのことが好きだったってことは、誰も言葉にしていないことだから、わかってなかったよね。
だから「落とし穴がある気がして踏み出せない」が、カンナがまだ恋愛感情を持ってないのをなんとなく感じていたから、っていうところまでは、考えてないよね。

その話をキヨから聞く前に「それってアレだろ?カンナちゃんをすっごい好きだったやつ」っていう軽い感じのい言い方からして(この場では、わざとそう言ってるんだろうけど)、単にすごく好きってことは知ってたけど、そこまで真剣にカンナのことを想ってたんだってことを知って泣けたんだろうか。

 

 

落とし穴の話もいまいちよくわからないところで、キヨがハルタに「落とし穴ってなんだよ?」と聞いても「さぁ」「ふられること?」「あぁ…ん〜〜……」とはっきり答えていない。
単純にふられるではない何か、だったのかな。カンナは自分に好意は持ってるけど自分と同じような恋愛感情になってないことを感じていて、ふられないかもしれないけど、何かうまくいかないかもしれないとか、そこらへんの曖昧な感じをうまく説明できないってことだったのかな。漠然とした不安感で自分でもそれが何なのかわかってなかったってことなんだろうか。

「好きになってやれなかったから後悔している」っていうのは、ロク自身のことでもある。
ロクの場合は、カンナの場合と違って、相手から一方的に好意をよせられていてロクの方は全くなんとも思っていなかった。でもロクが遠足の時にその女の子がすぐそばを歩くのを疎ましく思って押して転ばせちゃったのが、車にひかれた直接的な原因だから(ロクも転んだ子を助けてて一緒に巻き込まれたけど)、直接的な原因も作っちゃったし、好きになってもやれなかったし、っていうところで罪悪感があるんだと思う。
でもロクの場合の「好きになってやれなかった」はカンナのとは違って、その気持が本当になかったから、だから、「しょーがない、自分のことはごまかせない」で、好きになってやれなかったことには、それほど重く罪悪感を持っていない気がする。
そして、モモカから話を聞いた時は、自分と同じようにカンナも好きになってやれなかった相手が死んじゃった経験を持ってるんだと、自分と同じようにカンナもハルタが好きじゃなかったんだと思っていたのかもしれない。
残酷っていうのは、カンナは好きじゃなかった(とロクは思っている)のに、ハルタの想いがそんなに強かったんだって知ったから、だから、ハルタの想いの強さを知らせてカンナに更に追い打ちをかけるようなことをするなってことで、カンナに言うなって言ったのかな。

 

 

だから、「好きになってやれなかったから後悔している」というのは、カンナの気持ちをズバリ言い当てていたけど、相手を好きじゃなかったロクと、本当は好きだったのに自覚していなかっただけのカンナでは、それ以外の事情が、気持ちが違っている。
ロクの場合は好きじゃなかったんだからしょうがないってことで、本当にそれはそうだと思うし、好きになってやれなかったことについてはそれで終われるけど、カンナの場合は違う。
カンナの場合は、ハルタが死んでから自分の気持ちに気がついて、本当は好きだったんだってことに気付いたから、もっと早く気付いていれば違ったかもしれない、違う未来にいけたかもしれない、どうして気づかなかったんだろう、という行き場のない後悔に、「後悔の闇」にとらわれてしまっていて、カンナの方が後悔が重い。

カンナの場合は、本当は好きだったし、特別で大事な人だったから、ハルタを失った喪失感がすごくある。
お互いに気持を伝え合って、付き合ってたとしても、それだけ大事な人を失った喪失感をどうにかするには時間がかかったと思う。
それに加えて、お互いに気持を伝え合って、一緒になれなかったことへの後悔。
カンナがハルタの写真をお守りにできないのは、相手への想いの強さがロクと全く違うからじゃないかと思う。
ハルタと今も一緒にいたかったと、ハルタを求める気持ちが未だに強すぎて、まだ客観的にみれない、常に近くに置いて目にすると、とらわれてしまうからつらい。だから、ハルタのことをしこりのように奥深くに沈めてしまって、時々思い出しはするけど、つらいからあまり思い出さないように閉じ込めようとしていた。
それがカンナのしこりで、優しい楽な気持ちで、ハルタのことを思い出すことができなかったんだと思う。

 

 

それがロクと出会って、「好きになってやれなかったから後悔している」と気持ちを言い当てられ、「ちゃんと思い出してやれよ」って言われて、故郷に帰って、ちゃんと思い出しに行けて、アサミに再会して、キヨに再会してハルタの気持ちを聞けて、しこりを解消できて、やっと新しい恋を始められることになったんだなと思う。

ロクとはまだ始まったばかりで、これからだから、カンナは番外編でもまだロクのことを名字で呼んでるし、敬語を使ってたりする。でもロクの方は途中からカンナちゃんLOVEになってて、なんか急に何故?って感じがしてしまった。ロクがカンナちゃん大好きになるのが急な感じがして、どこからそうなったの?っていう気がした。

それとハルタって名字で、名前は一恵(かずえ)なんだけど、なぜ一恵?と思った。
私には一恵って女の子の名前にしか思えないんだけど、男で一恵っていう人も珍しくないの?
男でも女でもある名前っていろいろあると思うんだけど、一恵は私の中ではそうなじゃかったので、なんで女の子みたいな名前なのって思った。1巻のACT2の冒頭から、名前がでてくるけど、春田一恵って一覧に出てるから、え?女の子だよね、え?どっちの名前?って思った。
でも女の子みたいな名前っていう話は全く出てこないし、名前についてはACT5で一恵と書いて「いちえ」と読む女の子が出てくるけど、女の子と同じ名前っていうだけだったら、他にどっちもありな名前がたくさんあると思うし。私はだいぶ疑問だったんだけど、ネットで感想とか見ててもそこにふれている人はいなかった。

 

 

あと、つらつらといろいろなセリフやシーンの意味を考えてみる。

13巻にのっている番外編で、社会人になったマヤがモモカに、カンナに会いたいか聞かれて、会いたくないって言ってるのをみて、なんで?前に会った時は最後に電話するとか言ってたのに、アサミはカンナにまた会おうって言ってたのにマヤはもう会いたくないんだ、となんか寂しい気がしちゃったんだけど、後々考えてみるとなんかわかった気がした。
マヤはカンナのことが好きだったわけで、大学生で再会した時も、会えて喜んでいたし、カンナと一緒にいた方がいいんでは(いやだめなのか)と考え続けていたし、今でもまだ好きの気持ちが残っているんだろうと思った。
大学生で再会した時に、カンナはやっぱりハルタのことが好きだったんだと思って(カンナから言われてないけど、アイがそういう夢を見たし)、諦めきれていなかったカンナへの気持ちを諦めることにして、けじめをつけた。
マヤ「またtelする」カンナ「あんましない方がいーよー」マヤ「する」ってこの時は言ってたけど、それから数年たった今ではカンナの言うとおり、もう会わない方がいいと思ったんだろうと思う。
マヤ「カンナが会いたいって言ってんの?」モモカ「いや、そうゆうわけじゃ…」で、マヤが「だよな」って言ってるのは、カンナはもう電話しない方がいいって言ってたくらいだから、マヤと会わない方がいいと思ってるだろうなって、思ってるってことで。
カンナに会ったら、また好きの気持ちがよみがえってきたりしちゃうかもしれないから、だからそうなる可能性のある若いうちは会わなくて、何十年か後の、もうそういう心配のないくらいの年になってからならいいってことなんだろうなと思った。

 

 

ACT2をふりかえる。
「初めて朝美の本音きいた」ってカンナが思うけど、でも全然本音じゃなかったって、後でわかる。
カンナがマヤの服をひっぱってチョコバナナ半分こしない?って言ってたのは、ハルタだと思って服引っ張ってたんだな。
マヤが電源切ってたのは、もちろんわざとだし、その前に祭りからはずれて静かなところに来たのもカンナと二人きりになるため。
期末の結果の会話の後「バカだな、カンナは」っていうのは、なんのことをいってたんだろう。
成績のこと?それともいろんなことに鈍感だったこの頃のこと?

そして、カンナの部屋でハルタとの会話。
誕生日プレゼントを
カンナ「ナンパした彼女にでももらえばいーじゃん」
ハルタ「あ、そーしよー」
で、ハルタが否定しないから、この後のセリフをカンナが言っちゃうんだよなと思う。
ハルタ「たんじょうびきたらバイクの免許とりにいくから、したら1番好きな女のせよー」
カンナ「あたしはバイクこわいよ?」
ハルタ「誰がおまえだって言ったよ」

このあたりは、お互い駆け引きしてると思う。
相手の反応を探ってて、2人とも意地張って素直には言わなかった会話。

恋の駆け引きの1つで、素直に言えないとか、そういうのをいろいろ繰り返して、だんだん恋愛が進んでいくはずだったろうに、ハルタが死んじゃったことで、後々カンナが繰り返し後悔してしまう会話。
「うん、走ろう、2人で、どこまでも」
「言えなかった希望の言葉を、瞳を閉じて百万べんもくり返す」

 

 

最終章では「あたしはいつもぼんやりしていたんだ」と恋愛に疎かったんだという描かれ方をしているけど、ここではそれなりに駆け引きしてたなって思う。
ACT2の時点では、カンナの話の続きを描くつもりではなくて、後で決まったらしいから、多少違う部分はあるのかもしれない。
ACT2では中3と高1の間の春休みにハルタがカンナの部屋に久しぶりにきたって言ってるけど、最終章の中学編ではその前に中3で勉強しにカンナの部屋に久しぶりに来て恐竜の絵を見て驚いている。

そして、マヤに誘われてカンナは2人で花火大会にいく。
ここでカンナはマヤにキスされて告白される。
カンナはキスされたり抱きしめられたりを拒否しなかったけど、カンナがこの時、ハルタのことを好きってはっきり自覚していたら、拒否していたはずだと思うから、カンナはまだ自分の気持はぼんやりしてたんだよな、と思う。誰かを強く好き、とは思ってなくて受け身だったんだね。全くなんとも思ってなかったら嫌だろうけど、マヤに惹かれる部分もあったんだろうね。
ハルタが夜部屋に来た時に「マヤ?」って言っちゃったりしたのは、そういうのを表してるのかな。
4人のうちのカンナ以外の他の3人は、はっきり誰かを好きになってたのにね。

そしてハルタがトラックにひかれて亡くなった後から、カンナがハルタのことを本当は好きだったってことがわかるセリフ、モノローグがはじまる。

「…でも あたしにはハルタがいるから いいんだ いるから」
「ハルタ 『離れられない運命だ』って 言ってたよね? 一人でどこにいくの」

「フツー死ぬか?」と恐竜の絵を見ながら思って、眠るとその恐竜が抜け出てきてカンナの顔をかぷっと噛む夢をみる。これって「フツー死ぬか?」に対して「うるせー」みたいな感じでハルタの代わりに恐竜が返してきたってことなのかな。

「あたしってばハルタの着ぐるみ脱いで裸ででも歩いてんのかな?」ってカンナが思うくらい、男達がカンナにアプローチしてくるようになる。

「なんで 運命なんていって 浴衣がいいって言ったり 猫のキスしたり なんでナンパしてあそんだり バイクに好きな女のせるって言って 『おまえじゃない』って言ったり ねえ ハルタ」
「ハルタがあたしにくれたものはなんだったの」
「ハルタ 一人で なんで」

 

 

朝美がハルタにふられていた話で
ハルタ「ごめんな朝美 もー決まってんだ オレん中で!」(バイクの後ろに乗せる人)
朝美「どうしてカンナばっかりって すごいくやしかった… あたしが話しかけてんのにあたしの顔見もしないで」
ハルタが「カンナは?」と聞く。

「もっと もっと早く 気づいていたら 何かは 変わっていたんだろうか」
「うざいな 男って虫みたいだよ いい人もいるけど 変なのが多いよ」
「なのに大事な人はなかなかいないよ」
「ハルタ ハルタのいない世界はなかなか変だよ」

ただの幼馴染だったら、「『離れられない運命だ』って言ってたのに一人でどこにいくの」なんて言わないよね。
大事な人はなかなかいないっていうのは、ハルタが大事な人だったってことだよね。

ハルタが死んでから、カンナはハルタが大事な人なんだって気づいたんだと思ってた。
そういう自分の気持ちに。

だから最終章で、「好きになってやれなかったから後悔しているんだろ」っていうのをカンナが
「知ってるのに 今初めて 自分の耳で 他人の声で きいた」って認めてるのが
カンナがハルタのことを好きじゃなかったってことなのかと思って混乱した。

 

 

最終章の中学時代の話。
ハルタの両親が離婚してハルタは母親についていかずに父親について残ったけど、普通一般的にもうわりと大きいとはいえ子供は母親についていくのが多い気がするけど、父親についたのは、カンナがいるから残りたかったのかなと思った。
中1(?)のクリスマスに顔が見えないけど団地の外で女の先輩を後ろに乗せて自転車をこいでるのはハルタなんだろうなと思う。全然関係ない人をカンナが眺めてる様子を描いてもしょうがないよね。
このエピソードを意味は何だろう?
親が離婚して再婚してっていう不安定な環境で、ハルタがちょっと荒れてて、年上の女の子と遊んだりしてるっていうことなのかな。

ハルタがイチエちゃんとじゃれているところをカンナが「なぁにやってんの〜ハルタ〜」と声をかけるシーンは、たぶん唯一カンナがハルタに嫉妬して他の女の子といるのを邪魔しているように思えるシーン。
表情には全く出ていないので、わかりにくいけど、自覚のない嫉妬なのかもしれない。

中3でハルタがカンナと一緒に部屋で勉強してる時の会話の感じとかいいな〜と思った。

そしてキヨとハルタが落とし穴の話をして、キヨが「落ちたら戻れない穴なんてないよ はいあがればいいだけのことじゃん」って言うのは、なんかそれなりにいいこと言ってる気がしたんだけど、それは実際にそういう状況を経験していない人だから言えることだったのかな。
後に大人になったキヨが「戻れ…ないっすよねえ」って自分の言ったことを否定しているけど、キヨはその後、女の子と付き合ったりを経験して、自分はうまくいったから「俺あ やっぱりシアワセな奴なんだと あとからほんとに そう思っ」たのかな。
戻れないっていうのは、やっぱりここは、告白してダメだったら友だちには戻れない、元の関係には戻れないってことを言ってるのかな。

そして合格記念で初めてのキス。
「そのキスを その想いを あたしは」
私はちゃんと受け止めてあげられなかった、わかってなかった、ということなんだろうか。

 

 

11巻で突発性難聴で入院しているカンナをロクが御見舞にくるシーンで、ロクが話しかけているのにカンナは無反応なシーン、私は本当にカンナは聞こえていないんだと思っていた。
でも、よくみると、その前に上司が御見舞に来た時は、耳が聞こえない右側からやってきた上司とベッドから少し離れた位置で会話している。右がやばいからと左側に座るようには言うけど、ちゃんと上司の言うことに答えていたので、その位置から聞こえないわけではなかった。
そしてロクが話しても大丈夫かと聞いてきた時に、さえぎって「ごめんなさい、よく聞こえないの」と言って会話を拒否してるんだなと思った。その前に会った時にロクに「好きになってやれなかったから後悔している」と言われて嫌い話したくないとか言ってた後の再会だから、ああこの時ってロクとあまり話したくなかったのか、それで聞こえないふりをしてたんだ、と思った。

でもカンナがその後、泣いたのは「大丈夫 君は悪くない」というロクの言葉でではないと思う。
ロクが持ってきた漫画を読んで、魔法使いの話で、
「まほうつかいなんだ この子 へぇ〜 いいなあ…」って、魔法で過去をやり直せたらいいな、言えなかった希望の言葉を言えたらいいな、って思って泣けたんじゃないだろうか。

カジマがカンナのことを「この子の時間は ゆっくりだな」って言うのは、すごいうまい言い方だなと思った。
カジマは言葉数少ないけど鋭い意見をスパッと言う人だなと思う。

 

 

そして11巻最後、「彼もあの花火をみただろうか」とロクの顔が描かれているんだけど、ロクがあの花火を見たってどういう意味なんだろうか。ここもピンとこないんだけど、まあいいや。


ああ、ハルタかっこいいな。ハルタ大好き。
ハルタとカンナの恋の話がみたかったな。
ハルタに生きててほしかった。そしたらこの話が始まらないのはわかってるけど。
最終話で、ハルタとカンナが夢の中で会って想いを伝え合うシーンを描いてほしかった。
もう完結しちゃってるけど、13巻の発売後に番外編が1つあるらしい。
ハルタの弟の話だそうで、もうハルタ、カンナはほとんど関係ない新しい話のようだけど。
番外編で、夢のシーンをやってくれないかな。

だめなら、ハルタに激似のキャラが出てくる新しい話を書いてほしいな。
これがハルタだと脳内補完して読みたい。

ほんとにほんとに私の中ではもやっとして苦しくて苦しくて、これだけ書いてやっと気持ちが落ち着いたような気がする。マジで精神的につらかった。
落ち着いてたパニック障害みたいな状態がまたぶり返しちゃったくらいですよ。

「いくえみ綾 WORKS」という本の表紙の絵が大人になったハルタなんだと知って、早速注文した。
(ごめんなさい、中古だけど)
絵だけでも大人になったハルタが見れてうれしい。
まだ届いてないから中身はわからないけど。

なんで潔く柔くはこんなに、はっきりわかりにくい描き方なんだろう。
いくえみ綾さんは、はっきりしない描き方をする漫画家さんらしいけど
この後、「トーチソングエコロジー」「私がいてもいなくても」を読んだけど、どっちもこんなに解釈に悩まなかった。それだけハルタに対する思い入れが深かったというのもあるだろうけど、それだけじゃないと思う。

 

【2021.8.23追記】

この作品は名作だと思いますが、私にとってはやはりハルタが死んでしまうのが切なくて悲しすぎて、精神的に辛くなってしまうので読み返せない作品になってしまっています。

だいぶ気持ちが明るくタフな時じゃないと、読めないなーと思います。

それだけ、ハルタが大好きで、ハルタとカンナが私の中で理想的なカップル(になるはずだった)だということなんだけど、その二人のハッピーエンドじゃない事が悲しいです。