漫画 イタバシマサヒロ/玉越博幸「A GIRLS」感想

漫画 イタバシマサヒロ/玉越博幸「A GIRLS」感想

ネタバレありなので、ご承知の上。

 

作者あとがきによると「SFジュブナイル」。

瀬戸内海にある未来島という孤島で、親のいない幼稚園から高校生までの子どもたち72人と先生たち大人34人で暮らしていた。子どもたちは島の外に行ったことがない。

主人公、風夫は高校一年生。島には好きな女の子、泳子がいたが、突然、両親が見つかったと言われ、風夫は島を出て両親と暮らすことになる。

そこでユウという同級生の女の子になにかとおせっかいをやかれながら、街で生活をしていく。ある時、泳子にそっくりな女の子を見かけるが彼女は風夫のことがわからず・・・。

最初の方を読んで面白そう、と思ったんですが、それほどではありませんでした。

 

あらすじをちゃんと書いていくのが面倒なので、かなりざっくり。

風夫は街でみかけた泳子に会おうとするが、ユウとその父親の探偵に邪魔される。

実はユウと父は依頼されて風夫を監視していた。バレてからユウと父は風夫に協力してくれるようになる。街の泳子は島の泳子とは別人だとわかり、風夫も、もう一人の風夫がいて、もう一人の風夫の彼女だった女の子に会い、もう一人の風夫は亡くなっていて、その代わりに自分が呼ばれたのだとわかる。

真実を知るため、ユウと父に協力してもらい、街の泳子と共に島に戻る。

所長は戻ってきた風夫と街の泳子を見て、みんなに真実を話すことにする。

 

島にいた所長は、クローンとか遺伝子の研究をしていた研究者だった。

風夫や泳子たち島のこどもたちは、みんな人工的に作られた双子の片割れで、双子の片方は島で、もう片方は両親のもとで(街で?)育てて成長差を観察する大規模な実験の被験者だった。

が、なんのために?と聞かれて、所長は軍事目的か新薬か、何の目的で誰が資金を出しているのか知らないという。そして、何を知りたかったのかと聞かれ、「さあ、ただ自分の子供がほしかっただけかもしれない」と答えている。

ええええぇー。研究目的ぼやかしすぎじゃないの?

最終的に何に利用するつもりだったか(軍事か薬か等)は知らないにしても、もうちょっと何を調べてた、実験してたっていうのはあるでしょう。途中、シンクロニシティがどうのといって、2人の泳子を機械の中に入れてなんかやってたりとかしてたよね。そこの説明は?

なぜかそこら辺は説明したくなかったのか、子供がほしかっただけかもなんていう、所長にとっては彼らを子供と感じてた部分はあるにしても、今聞きたいのはそういうことじゃないだろっていう、なんだか子供だましみたいな回答ですませている。

 

その後、島の子供たちは島に残っても両親のもとに行っても、自分で好きな方を選んでいい、なんていうゆるい解決になっているけど、黒幕を明かしたりして、そこら辺を面倒くさい後処理にしたくなくて、ぼかして終わりにしたのかな、と思った。(物語的に、作者が)

両親のところに帰るっていっても、戸籍とかあるの?、この子たち。

倫理的には許されない実験だと思うけど、そこら辺うまくごまかせるの?とか、真面目に考えるとそう簡単にいかない気がするんですが。

 

そして最後は、二人の泳子が全く同じ服を着て、お互いにさようならを言って、片方だけが風夫と一緒に手をつないでいくのだけど、島の泳子か街の泳子か、わからない終わり方になっている。私は今までの長い片想いを考えれば、絶対島の泳子だと思うけど、なんでどっちかわからないような終わり方にしたのかなーと思う。

作者が明確な答えを出さず、読者の受け取り方で考えてください、な終わり方は好きじゃないし、この物語の場合、どっちだろうと悩むような内容ではなかった気がするし、そうする意味がよくわからん。

 

最初、もう一人の泳子、もう一人の自分がいるっていうのがわかった時点で、おもしろそうと思ったんだけど、期待したほどではなかった。SFな部分の設定も面白いと思うほど深い設定はないし(ただ双子を別々に育てて比べてたらしいだけで、シンクロニシティというのは出てきたけどそこの説明が結局なかった)、風夫と泳子の恋愛物語としても、二人はほぼずっと離れたままで、離れている間も再会してからも、ぐっとくるような何かがなかった。

 

 風夫の両親は年配気味な見た目。なのはいいとして、父親は風夫に優しくない態度をとる。風夫の帰りが遅いことに小言を言い、それを母親がとりなす。「食事は?」「いらない」という風夫に「何か不満があるのか」と怒る父親。それに対し「何かが変なんだ」と風夫に言われると困ったような表情で何も言えなくなる両親。

次に帰りが遅い時には父親は「夜遊びさせるために島から帰したんじゃない」とまで言う。だったら、島に帰してあげなよ、と思った。元々、風夫は会ったことのない両親のところに行くより泳子のいる島に残りたいと思っていたんだし、ここで風夫が「じゃあ島に帰してよ」と言えば、胸がスッとするのになぁと思った。自分たちの都合で島から連れてきたくせになんであんな態度?亡くなった息子とは別人なのはわかってるだろうけど、見た目はそっくりな子がきて、両親は風夫にどんなことを感じていたのか。

亡くなった息子と別人なのにそっくりな子を見るのは辛いのかうれしいのか。

父親は元々、亡くなった風夫ともそれほど仲良くなくてあんな感じだったのか。

風夫がぎこちなくなってしまうのは仕方ないのだから、事情がわかってる両親の方がもっと風夫に気を使うべきだし、亡くなった子の代わりに呼び寄せたんだから、もっと風夫に気を使った態度をとるもんなんじゃないの。父親ができないなら母親がもっと踏み込んで接触していかないの?帰ってきた時に作り笑いで食事は?ってきくだけなのかよ。

結局、風夫は全く両親となじまなかったし、両親も風夫をどう思ってるかよくわからないまま、ほとんど帰宅時の小言と食事は?という会話だけの浅い接触だけで終わってしまった。

 

ユウは最初の方から風夫のことが好きなんだろうなぁという感じだった。

いい子なんだろうけど、ユウみたいなタイプの子、好きじゃないんだよなぁ。

最初から風夫は泳子と結ばれてほしいと思っていたから、ユウがグイグイくるタイプの押しの強い子で逆に風夫は流されやすそうなので、流されてユウとになっちゃったら嫌だなぁと思いながら見ていた。この物語の中では風夫は泳子たちよりもユウと一緒にいる時間が多かったと思う。それも嫌だった。結局結ばれはしないけど、キスされちゃうし・・・。風夫が島に戻る時のユウとの別れのシーンで、おそらくいい顔を描いたんだろうと思うけど、唇ぼってりの目がうるうるのあのユウの顔は普段よりブサイクに見えた・・・。

 

そしてパンチラとかが全体的に多いんだけど、これって男性向けのマンガなの?

エロは嫌いじゃないけど、ああいうのは嫌いなんだよね。たぶんああいうのって男性向けだよね。

 

街の泳子とは島に戻る時の道中でわりと一緒の時間をすごすことになる。

一緒にホテルに泊まることにもなって、素っ裸で迫られたりしたけど、風夫は何もしなかった。えらいぞ風夫。でも島に着いた時に勇気をちょうだいと言われキスはされちゃいました・・・。

だってやっぱり、風夫が好きになったのは島の泳子で、街の泳子は見た目がそっくりだから仲良くしているだけなんですよ。

 

本物か偽物かっていう話があったけど、私は最初からそこは、どっちも本物でしょって思ってた。だってそっくりなだけで、別々の環境で育った別の人間なんだもの。

そういう状況で、本物か偽物かってあんまり思わなかったなぁ。むしろ本物か偽物かって話がでたことにちょっと驚いた。

 

そして結局、クローンじゃなくて、人工的に作られたのではあるけど、双子だったしね。

二人の泳子が会うのは危険とか、壊れるとか、会った時にお互いどんな影響があるか、とか言って、なんだかタイムトラベルでもう一人の自分に会うとダメみたいな雰囲気だったけど、結局、ただの双子だよね?双子が会って何か危険とか影響とかあるの?

ただ島の泳子は事情を知らないからいきなりだとビックリしちゃうっていうだけだよね?なんか2人が一緒にいたらマズイ何かがあるのかと思ったら、ただの双子かよっていう感じでした。

 

なんかいろいろ描かれ方が浅いんだよなぁと思った。

私は風夫が最後に選んだのは島の泳子だと思うけど、島の泳子と風夫が一緒にいたのって、この物語の中では最初と最後だけで、しかも再会しても大した感激もなくて、風夫と泳子の相手を思う気持ちの描かれ方も少なかったな。離れてる時に、それぞれがお互いを思うっていうのはあったけど。

SFは好きなので、そういう部分が絡んだ恋愛物語に期待したけど、特に何と感じるものなく終わってしまった。

なのに、不満点をいろいろ書くのに時間をかけてしまった。