漫画 アニメ「いぬやしき」奥浩哉 感想


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漫画 アニメ 奥浩哉「いぬやしき」感想

ネタバレありなので、ご承知の上。

2017年10月〜12月放送のアニメを最初に見て、それからコミックを読みました。

コミックは全10巻完結。

アニメ放送開始時点でコミックが完結していたので、細部は違うところもありますがほぼ原作通りのストーリーでした。

コミックは1コマが大きめで見開き絵も多く、絵が大きくて巻数が増えてる感じなので、アニメは全11話ですが、コミック10巻の内容をほぼそのままやってます。

 

ストーリーは、主人公の犬屋敷壱郎(いぬやしきいちろう)58才と獅子神皓(ししがみひろ)高校生、が、ある日の夜、散歩中に宇宙人の事故に巻き込まれ死亡してしまい、それを隠蔽しようとした宇宙人に機械の体に変えられてしまう。

突然、地球ではオーバーテクノロジーな機械の体(見た目は人間にしか見えない)にされてしまったことに戸惑うが、犬屋敷はその力を人助けに使い、獅子神は人を殺すことで、それぞれ生きていることを実感する。

 犬屋敷は機械の体になる前、健康診断で胃がんで余命3ヶ月であることを宣告されている。年よりもだいぶ老けて見えて、ヨボヨボのおじいちゃんにしか見えない。ローンではなくコツコツお金を貯めてやっと一軒家を購入したばかりのすごく真面目な人。

宇宙人は本人たちの意志など全く関係なく、とにかく何もなかったかのように装うために、彼らを機械の体に変えて去ってしまい、その後、ストーリーには全く出てこない。彼らを機械の体に変えたこと等も全く説明もしないので、それぞれが自分で気付くことになる。獅子神が気付くシーンは出てこず、機械の体になった後に獅子神が登場する時はある程度、機械の体の能力を使いこなしている。

彼らの体は兵器ユニットで星を滅ぼす力さえあるらしい。

おそらく地球上の兵器では太刀打ちできないような戦闘力があり、兵器だけでなく、インターネットにつなげて他の機器を操るなど、コンピューターの能力も高い。空も飛べる。食事は必要なくなり、水だけ必要で、激しい戦闘をした後などは大量に水を摂取したくなる。

 

犬屋敷は、まず公園で若者数人に襲われていたホームレス(これからやり直そうとしているところだった)を助ける。最初はやられっぱなしで意識を失ってしまう(体は頑丈にできているので傷つけられたりしない)が、意識を失った後の自動モードで若者達を撃退し、ネット上に彼らがホームレスを襲っている場面の動画や彼らの顔写真と個人情報をあげるという形で、報復している。

次はヤクザ。気に入った女性を拉致、監禁してドラッグを打ちレイプするような最低な人物。そいつに拉致された女性を助けるためにヤクザの幹部の会合場所に乗り込み、ここでも結局銃で撃ちまくられて意識を失い、自動モードでその場にいたヤクザ全員の両目と頚椎をつぶした(何も見えないし首から下を動かせない)。

どちらも警察ではすぐに対応できないような相手で、完全に悪な存在で、被害者は弱い立場の善人。そういう、見かけて警察に通報したからといって、どうにかできなさそうな相手を圧倒的な力で報復するのは、スカッとする痛快なエピソードだと思う。

 

一方の獅子神は何の罪もない人を無差別に殺していた。突然、知らない人の家に入っていき、会った人をどんどん殺していく。ここで一度、犬屋敷(助けを呼ぶ声を聞いて来ていた)と獅子神は会っているが、殺したはずなのに起き上がってきた犬屋敷に獅子神が驚いてすぐに飛んで逃げてしまったので、まともに会話していない。

獅子神は犬屋敷と違って自分の体の能力を使いこなしていて、指を銃の形にして口で「バン!」と言うだけで、銃を撃つのと同じような兵器を使える。

獅子神には安堂直行(あんどうなおゆき)という幼稚園の頃からの幼なじみがいる(獅子神は彼のことをチョッコーと呼んでいる)。

最近、同級生にリンチされ不登校になっていた安堂の家に行き、自分の体が機械になったことを打ち明け、自分が守るから学校に来るように言う。最初は手品かと思っていた安堂だが、街に出て盛大な交通事故を起こさせているのを見るに至って、本当なんだと信じるのと同時に、そんなことをした獅子神に不安を感じる。翌朝迎えに来た獅子神と一緒に安堂は登校する。早速、安堂をリンチした奴らが安堂に絡んできたが、相手の手首を強く握るだけで、安堂に謝らせる。リンチした奴らが放課後屋上に来いと言っていたので獅子神と安堂で屋上に行くが、彼らの姿はなく、女の子たちと一緒に帰宅途中の彼らを見つけ、獅子神が手銃で彼らを射殺した。

平気で人を殺すようなやつは無理だと言って、安堂は獅子神を拒絶する。

安堂が何故リンチされたのかはわからない。

 

獅子神は親が離婚していて母親と二人暮らし。父親は再婚して子供もいて別に家庭を持っているが、獅子神はその家に遊びに行くような交流がある。ある時、母親がガンで余命1ヶ月だとわかり、母親が亡くなった後は父親のところで暮らすように獅子神に言う。「嫌だ、死なせない絶対」「嫌だ、皓を一人にしたくない、死にたくない」と二人で抱き合って号泣し合う中、獅子神の能力で母親のガンを治す。母親と一緒に獅子神がやった無差別殺人のニュースをテレビを見て、母親が「本当に悪魔のような人間 どんな親に育てられたのかしら許せない 自分がしたことと同じ目にあって死ねばいい」と言うのを聞いて、もし俺だったらどうする?と獅子神が聞くと「一緒に死ぬかな 世間に顔向けできないよ」と言うのを聞いて、もう人を殺すのはやめようと決意する。

母親の病気を機に、これからは自分が母親を支えると決意し、能力を使ってATMから不法にお金を引き出し、一緒に美味しいものを食べに行ったり、海外旅行や今よりもっといい部屋への引越しを計画する。

もうすぐ引越しというところで、警察が獅子神を捕まえに来る。

大勢の警官に取り押さえられたのを振り払い飛んで逃げる獅子神。以前、獅子神に告白してきた同級生の女の子、渡辺しおんの家に匿われることになる。しおんの両親は既に他界していて祖母と二人暮らし。

全国に指名手配され、獅子神の事件がテレビのワイドショーで取り上げられたりネット上であれこれ騒がれる中、獅子神の母親が大勢のリポーターに囲まれて謝罪する姿をテレビで見て(実際のテレビではなく自分の能力を使って映像を見ている)、号泣する獅子神。その後、「獅子神の母親が自殺」というニュース速報を見て、空を飛び空中で叫びながら号泣する。

 そして今度は父親が報道陣に囲まれて謝罪しているところへ獅子神がやってきて、報道陣を手銃で撃ち殺していく。父親以外の全員を殺した後、父親に「皓 撃たないでくれ 頼む」と言われ、顔を歪めた表情で何も言わず飛び去る獅子神。ここで獅子神は最初から父親を撃つつもりはなかったと思う。母親を自殺に追い込んだ報道陣への復讐と報道陣から父親を守るためだったんだろうと思うので、むしろ助けに来たつもりなのに命乞いされたことに悲しい気持ちだったんじゃないだろうか。

そして次は獅子神の母親の個人情報をさらしたり嘲ったりしていた2チャンネラーを次々と殺していく。最初は獅子神の近所に住んでいてマスコミに住所等をメールした奴。獅子神がパソコン画面を乗取って画面に獅子神の顔が写っても、ちょっとビックリしただけで、獅子神に撃たれるまで横柄な態度を崩さず悪態をついてるところとか、そういう2chに書き込みしてる人っぽく、実際には相手が何も手を下せないとタカをくくってて、ほんとにクズだなーと思う。そしてやれるもんならやってみろなことを言ってる人たちを次からはアッサリと次々に撃って殺していく。

 

最初に無差別殺人をしていた頃は獅子神はサイコパスなのか?という感じで、全く気持ちがわからなかったが、母親が出てきたところから、私は獅子神にものすごく共感してしまった。似たような経験があるとかではないんだけど、なぜかものすごく共感した。

人を殺すのはよくないことではあるけど、母親を自殺に追い込んだマスコミやネットの書き込みをした人たちに復讐する気持ちはすごくよくわかる。自殺に追い込んだ一番の原因は獅子神の起こした殺人事件だと思うけど、そこを置いといて、自分の大切な人の死をあざ笑うのを許せない気持ちはわかる。

犬屋敷が報復した、ホームレスをリンチする若者やヤクザほどではないけど、無責任に言いたいことを言い放っているマスコミやネットに書き込んでる人のこういった行為も、社会の中の悪だと思う。

命まで奪うのは行き過ぎだけど、そういった悪に対する報復行為として、獅子神のやったことは横柄な態度の奴らをギャフンと言わせた(というか何も言えないうちにすぐ殺されちゃってるけど)スカッとする行動として描かれていると思う。

 

犬屋敷は治癒能力があるのに気付いてから、病院に行って重篤な患者を治癒して回っている。殺人を犯している獅子神を止める方法はないかと考えていた安堂が、人助けをする謎の人物のニュースから、獅子神と同等の能力を持つ人が他にもいるんじゃないかと思い、助けてーと叫ぶことで、犬屋敷をおびき寄せる。犬屋敷と出会った安堂は、年配者で機械やネット等に疎い犬屋敷が自分の能力を使いこなせるようになるように協力し、獅子神に対抗しようとする。

 

獅子神を匿っていたシオンは、学校の先生からの話もあったので獅子神が指名手配されていることは知っていたはずだが、冤罪だと思っていたようだった。なぜ獅子神くんがこんな目に、と言うシオンに、自分が犯人だと告白する獅子神。

そしてここで何故、無差別に人を殺していたのか、獅子神が告白する。

 

ごめん 俺 もう 人間じゃ ないんだ

あの公園 あの夜 俺は死んだ

あの夜 俺は 違うモノになってしまった

その頃からある考えが頭を離れなくなった

自分は機械 金属 心がない 生きていない 底なしの深い暗闇

怖かった ひたすら 怖かった

なんとか人間であった時の感覚を とり戻そうと思った

俺は下校中 駅のホームで飛び込み自殺を見た

ヤジウマが写真を撮ったり逃げたり叫んだりしてたけど

俺は 光を感じた 人の命が消えたことに

自分は生きている!! そんな感じがした

もう自分自身の手で人を殺すしかない

それしか俺には選択肢がなかった

完全に頭ん中そればっかで 取り憑かれたように

(略)

老人 赤ん坊 男 女 関係なく 全員殺した

相手が抵抗すればするほど 家族の死を悲しんだり守ったりするほど

俺は生きている人間だ!! そんな感じがした

 (コミック5巻から抜粋)

 

この獅子神の心情の吐露に対してシオンは理解を示さず、何を言ってるかわからないと言う。これを安堂に言っていたら、もっと理解してもらえていたかもしれない。

アニメでは飛び込み自殺を見たのは機械の体になる前になっている。なぜ変えたんだろう?それを見て何を感じるかは、その時の心情に左右されると思う。だから機械の体になった状態で飛び込み自殺を見たからこそ感じた感覚なんじゃないだろうか、と思うので、わざわざ過去の出来事を思い出したことに変えた事に疑問を感じる。

 

そして獅子神はシオンに自分の内部の機械を見せ、シオンを抱えて空を飛び、全世界が敵だ、もっと人を殺す、と言うが、シオンの「あたしとおばあちゃん おいてかないで うちにいてほしい 行っちゃやだ」という泣き叫びながらの懇願に獅子神は「お前怖くないの?今どういう状況かわかってる?」と聞いても変わらないシオンに「わかった ずっと一緒にいる ずっとお前の家にいてやるよ」と言う。

自首しないと言う獅子神に「だめじゃん いっぱい罪もない人殺してる その人達の未来なくしちゃったんだよ」

獅子神「お前は俺にどうしてもらいたいんだよ」

シオン「どうしようもないから ううう 悲しいのぉおお」

獅子神「じゃあこれから人の命を なくなりそうになっている命を 俺が殺した数だけ救っていくよ それで いいだろ」

ここのシオンの説得は、アホの子ならではといった感じだ。シオンは優しい子だと思うけどあまり賢くなさそうで、特に解決策を提案できるわけじゃないけど、とにかく自分の気持ちを言うという形で、獅子神の心を動かした。

獅子神は犬屋敷のように死期の迫った人の命を救っていくことになるが、やり方は犬屋敷とは違い、ネット上で希望者を募っている。

そして獅子神はシオンと一緒に人の病を治しながら、祖母と3人で穏やかな日々をおくるが、そこへまた突然警察が獅子神を捕まえに来て、穏やかな日々は終わりを告げる。

 

獅子神はこのストーリーの中で2度、更生しようとしたところへ警察が捕まえに来ることでブチ壊されるという展開が繰り返されている。

警察がどうやって捜査して獅子神を見つけたのか、といったところは描かれないが、そういう描写がなく突然、確信を持ってる感じで警察が捕まえに来るので、よく見つけたなーと思う。

警察が来なければ、獅子神はもう殺しはやめようとそれぞれのときで思っていたので、そのまま事件は収まったはずなのに、という状況だった。それだけ、そのままにすることが許されない程のことをその前にやってしまったということだし、最初の事件でも15人も殺しているので放っておいてくれるはずがないんだけど・・・でも、だ。

警察は獅子神がオーバーテクノロジーな能力を持ってるなんて知らないし、知ったとしても許してくれはしないだろうけど。

 

2回目は1回目の後、更に殺人を重ねているので武装した人たちがやってきて、シオンと祖母も有無を言わさず撃たれてしまった。大量の銃弾を浴びせられる中、シオンと祖母を抱えて空を飛んで逃げる獅子神。

獅子神はシオンと祖母を地上に降ろし、泣きながら「ごめん ごめん」と言って、二人を置いて飛び立つ。ここでは二人の生死は不明だが、二人は生きている。この時に二人の手を握っている描写があって、その時に治癒したのだと思う。

 

そして獅子神は警察署に乗り込み、署員たちを手銃で次々に射殺していく。外に出るとSATが待ち構えていて、獅子神に大量の銃弾を浴びせ、応戦するが獅子神は倒れて動かなくなる。すると犬屋敷の時と同様に、意識がなくなった状態で自動モードでの戦闘になり、宙に浮かんで光線を放ち、一撃で相手をやっつけていく。雨の中、車の上で横たわって停止していた獅子神を残った数人が囲んで銃を撃ち込むが返り討ちにされる。

獅子神が「警察がなくなるのを見届けてよ」と言って殺さなかった警官一人を除いて全員が殺された。

 

次に獅子神は「この国がある限り 僕は追われ続けます なので滅ぼすことにしました ハッキリ言います 僕と日本の戦争です 一人もいなくなるまで殺していきます」と街の中にある巨大テレビ(って言うのか名前がわからないけど)を電波ジャックして宣戦布告した。そして手始めに今日は100人殺すと言い、新宿で街を歩いている人が突然撃たれた様子で倒れ始める。 スマホを使っている人が撃たれていることに気付いた安堂が犬屋敷に連絡しスマホを捨てるよう呼びかけるが、それに気付いた獅子神が「スマホ捨てても無駄だから 続き始めまーす」と言って、今度は巨大テレビから撃つ。犬屋敷たちがそれに対応する前に100人に達して終了し、明日からは1日1000人殺すと宣言する。

獅子神はビルの屋上に横たわりながら、シオンとの会話を思い出している。シオンと祖母は新しく賃貸住宅の部屋を借りて住んでいる。恐らく獅子神がシオンに会いに行った時の会話を思い出しているシーンだと思うけど、獅子神の視点からの描写でシオンしか見えないので、獅子神が遠隔操作で何かに自分の映像を映して会話してるのか?とも思ったけど、その何かは道路上に浮いていることになってしまうので、たぶん違う。

シオンは獅子神が送ったお金を使ってないと言う。シオンは獅子神にもう人を殺すのはやめてと言うが、獅子神は俺がこの世にいるかぎり追ってくるから日本自体消すしかない、それしか俺達が平和に暮らす方法がない、日本を消したらハワイかフランスかどこかで3人で暮らそう、フランスで死んだ日本人の分 人を救うよ、と言うがシオンは返事をしない。

そして翌日、獅子神は都心に何機もの飛行機を落とす。安堂と連絡を取りながら犬屋敷は飛行機を遠隔操作し海上に着水させて残りの飛行機を救う。そこへ犬屋敷の娘の麻理から、都庁の展望台にいるが飛行機が下の階に突っ込んだので下に降りられなくなっているという助けを乞う電話が来る。

そこへ獅子神がやってきて、「おまえか 誰だ おまえ」と言い、「ばんっ」と撃っても倒れない犬屋敷を見て「俺と同じなのか」と、獅子神は初めて犬屋敷の存在に気付く。

「あの時 あの公園に 一緒にいたよ」

「なんで 俺の邪魔してんの? お前 俺と同じなんだろ?」

「僕は 人の命を救った時だけ 自分が人間だと 実感できるんだ」

という犬屋敷の言葉に獅子神は愕然として涙を流しながら

「俺が悪役で じじいがヒーロー か」

「きみは 人の命を奪うときだけ 自分が人間だと実感するの?」

「なんだよ 哀れんでんのかよ」

「なんてこと ああ」

「あんたと俺は同じだ 勘違いするな 自分のことしか考えてないんだよ 俺も おまえも」

「お願い 娘が死にそうなんだよ もう 人殺すの やめて」

「なんで俺が悪で こんなじじいが」

 

そして獅子神が犬屋敷に殴りかかり、そこから本格的な戦闘になっていって空中戦になる。麻理が死ぬ間際らしき言葉を伝えてくるが獅子神を振り切れず麻理を助けに行けない。両者とも自動モードでの戦闘になるが先に意識を失って自動モードになったのは獅子神で、結局、自動モードでの戦闘は犬屋敷が勝利する。獅子神は後頭部と両腕をもぎ取られた。今まで機械の体の機能を使いこなしていたのは獅子神で、獅子神に分があるように思えたが、なぜ犬屋敷が勝てたのか。麻理を助けたいという強い思い?

自動モードになっていても、犬屋敷は今まで自動モード中に相手を殺してはいないことを考えると本人の意向が影響しているようなので、意識はなくてもその時思ってた気持ちが勝敗を左右したのか?

獅子神が落ちていく時、以前獅子神が思い出していたシオンとの会話が今度はシオン視点で描かれる。やはり実際に会って会話していた。

「殺された人は世界に一人だけの人だったんだよ」

「俺にとっては どうでもいい奴らだよ」

「でもお前とおばあちゃんは違う 生きてて欲しい お前がガンになっても俺が治すから 待ってて 明後日 迎えに来るから」

この飛行機墜落事故を起こした翌日に迎えに行くつもりだったのかな。

いつ言ったのかハッキリとわからないけど、一日1000人殺していくと言っていたけど、飛行機を何機も墜落させているのは下にいた人たちも考えれば、1000人じゃすまないくらいの人を殺しているんだろうと思う。日本全部まではいかなくても一気に東京を壊滅させるくらいのことをして海外に逃げるつもりだったのかな。

 

やっと犬屋敷は麻理のところに行くが麻理は既に死んでいるように見える。機械の体の機能が働かなかったのか?諦めきれずに心臓マッサージを繰り返しているとなんとか麻理の蘇生に成功する。体の機能での治癒は対象に生命反応がないと機能しないのかな?前にヤクザの話の時に男性を蘇生した時もそんな感じだったし。

麻理を外に連れ出した後、一緒にいた麻理の友達を助け、麻理達は家に帰るように言い、犬屋敷は飛行機墜落事故で怪我をしている人たちを助けに行く。

犬屋敷は東京上空から街の様子を見て「今このときのため 僕は生まれてきた このときのため 僕は機械の体になった」と涙を流しながら思う。

翌朝、犬屋敷が家に帰ると、ケガ人を治す謎の老人としてテレビに犬屋敷が映っていて、家族みんなにバレてしまう。犬屋敷は体の内部の機械を見せて、公園に散歩に行った夜に機械の体になったことを告白する。妻と娘は犬屋敷を受け入れるが息子はすんなり受け入れられない。

 

安堂が家に帰ると、後頭部と両手を失った獅子神が安堂の部屋にいた。後頭部はフードで隠している。安堂は緊張するがジャンプ読む?と聞くと獅子神は前のように「読む読む読む」と言って足を使ってマンガ雑誌を読み出す。そして学校へ毎日行っているか、イジメられてないか、友達はできたかと安堂の様子を聞く。安堂はトイレに行くと言ってトイレで犬屋敷に電話し獅子神が部屋に来ていることを伝えると、犬屋敷はすぐに行くと言う。そして部屋に戻り、犬屋敷を呼んだことを獅子神に伝える。

「俺を殺してもあの人がお前を破壊するから」と安堂は獅子神に言うが、獅子神はチョッコーに会いにきただけ、前みたいにマンガ読んでダラダラしたいだけと言う。安堂はその言葉を信じられず「お前はもうヒロじゃない 殺人機械だ 心がない ニセモノの機械だ お前今まで何人殺した? 何人殺したんだ?」と言うと、獅子神は立ち上がり、顔を見ると悲しそうな表情で涙を流していた。犬屋敷が安堂の家に来るともう獅子神は去った後だった。安堂の表情は見えないが犬屋敷に「あれ?泣いてるの?」と言われている。

ここもすごく獅子神に共感した。獅子神は安堂に危害を加えるつもりは全く無くて、本当は今まで通り友達でいたいのに、相手にはわかってもらえない悲しさ。獅子神が人を殺さなければ、機械の体でも安堂は友達だっただろうに。そして正にもう一人の機械になった人間、犬屋敷と安堂が仲良くしていることへのやるせなさ。

街を歩いていると獅子神だ、と言われ、警官に撃たれて追われて逃げて、遠くからシオン達を見て涙する。

犬屋敷一家は家族団らんで平和な日々を過ごす。息子は学校でカツアゲされていて、父親が車に轢かれた人を助けるのを目の前で見て、自分も機械になりたいと言う。

それに対して犬屋敷は、

死ぬからこそ大切で愛おしいんだ、でも機械になってやっと最近自分のことを好きになれたかもしれない、僕と同時に機械になった少年は人を殺すことに体を使った、でも僕は人を救うことに使った、これは元来機械になる前の僕の生まれ持った性質なんだ、僕は弱かったし背も低いけど、別にそれでよかったんだ、ホビットでも自分が好きだよ

と言う。ホビットというのは序盤で同じような状況で息子と話をした時に息子が言った言葉。

 

そしてテレビでアメリカの大統領が3日後、巨大隕石が地球に衝突し、人類は助からないと言う放送があってから、人々は好き勝手なことをし始め、誰も会社や学校へは行かなくなる。なぜか素っ裸で暴走してる人が多い。

安堂くんと犬屋敷の会話。犬屋敷は最後までがんばってみると言う。水を大量に飲んで出かけようとすると娘のマリが気付いて玄関で待っていた。行かないでと言われるが、帰ってくると約束して空へ飛んでいく犬屋敷。

 

隕石に到着すると隕石の巨大さに圧倒される。安堂くんと連絡を取ってアドバイスを受けながら隕石を破壊しようとするがうまくいかない。そこへ獅子神がやってくる。隕石の軌道を変えようと思って来たと言う獅子神に犬屋敷がなぜと問うと

「俺にだって死んでほしくない人 しおんとチョッコーには死んでほしくないんだ」と獅子神は答える。そしてこの位置で自爆すれば軌道を変えられると言う。そして「あんたは帰っていいよ」と犬屋敷に言う。

そして手がなくて押せないから自爆の起動スイッチの目を押してくれと犬屋敷に頼む。

安堂から連絡があり、犬屋敷が今獅子神が目の前にいて、君のために自爆して地球を救うつもりだということを伝えると、安堂くんは号泣してベランダから「ごめん、ヒロ、ごめんよぉ」と叫ぶ。獅子神にはその言葉が聞こえた。頼む、と言われ犬屋敷は獅子神の目を押し、その場から飛び立つ。カウントダウンされ獅子神は自爆する。

獅子神の自爆後もかなり大きい隕石が残っていて、犬屋敷がシミュレーションするとまだ地球に衝突することがわかる。そして犬屋敷が全弾撃ちこんでもだめで、自爆でなら破壊できることがわかる。安堂くんには「獅子神くんのおかげで地球は無事だよ これから家に帰るよ」と言って電話を切る。

やっぱりこれが運命なんだ、約束守れなかった、ごめん、と言って目の自爆スイッチを押し、家族一人一人の顔を思い浮かべながら犬屋敷は自爆する。

強い光が見えて、犬屋敷が自爆したことに気付いて泣く安堂くん。

犬屋敷の家族もどうやってか気付いたようで空を見上げながら号泣している。

その後、息子はカツアゲされてる相手に殴りかかってやられながらも撃退し、鼻血を出して寝転びながら空を見て「見てた?父さん」と言う。

安堂くんはシオンに「ヒロが君と僕のために地球を救ってくれたんだ ただそれだけ伝えたくて ヒロ 犬屋敷さん」と言い、二人で涙を流す(アニメにはないシーン)。

麻理は応募したマンガが入選してたことがわかり「お母さーん」と叫びながら家に帰るところで終わる。

 

獅子神と麻理はこの作品中で一番の美形キャラだと思うけど、二人とも両親は全然美形じゃない。突然変異的な美形。でも美形さんがいた方が読んでて楽しいのでイイと思う。それに他のキャラたちは、マンガっぽくそこそこかわいかったりかっこよかったりせず、リアルっぽく?ブサイクさんが多いから美形さんがいないとつまらない。

体の中の機械は細部まで描かれているけど、能力の仕組みについては、その理屈は説明されない。例えば、獅子神がどうやって指、スマホやモニター画面から銃を撃っているのかはわからない。でもそれでいいと思う。辻褄の合うような理屈を考えるのは大変だし、中途半端に説明したら突っ込まれてしまうだろうから、何も説明しない方がいい。

 

獅子神は人が死ぬところを見ることで、自分が機械になってしまった恐怖から逃れ、自分が生きていると感じていた。そのために人を殺していた。社会悪な人間をとか相手を選ぶこともできたはずだけど、そんなことはせず、普通に平凡に暮らしている人たちを無差別に殺した。人を殺すことで、人の死を見ることで自分の生を感じるという感覚は私にはわからない。

犬屋敷も自分が機械になったことに不安は感じていたが、獅子神ほどの闇ではなかったように思う。そして犬屋敷は獅子神とは反対に人を助けることで自分の生を感じ、また自分が生まれてきた意味を感じていた。

その差はなぜ生じたのか。

1つには彼らの生来の性格が大きいだろうと思う。

犬屋敷のように自分に力があるなら人を助けたいという気持ちは理解しやすい。

けど、獅子神はなぜそうなったんだろう。

獅子神は昔から家族や大切な友人への愛情は深く、それ以外の人たちは死んでも構わないというくらい、その差が激しい考えを持っていた。ある程度は誰でもそう、という部分はあると思う。全く知らない他人の死を悲しいと感じなくてもおかしくない。けど、それが全く知らない他人を殺しても構わないになると違ってくる。

両親が離婚していてあまり裕福ではないとはいえ、見た目はいい方だし、母親は息子への愛情が普通にあるようだったし、ひねくれる要因は見当たらない。

 

もう1つは機械になった時の彼らの状況の違い。犬屋敷の場合は、機械の体にならなければガンであと少しで平凡な人生を終えてしまうところだった。

獅子神は機械の体にならなければ〜といった状況は特になかった。母親が余命短いことがわかったのは獅子神が機械の体になって殺人をしてしまった後だ。

そして年齢、人生経験の違い。まだまだこれからな獅子神と、人生の終盤で平凡とはいえそれなりにいろいろなことを経験してきているだろう犬屋敷とでは人の命の重みとか他人を思いやることとかに対する感じ方が違うだろう。

獅子神はこんな圧倒的な力を持たなければ、大切な人以外はどうなってもいいと思っていたとしても、人を殺そうとまでは思わなかっただろうと思う。そして機械の体になったことで感じた「底なしの深い暗闇」と言うほどの恐怖も感じることはなく、それを払拭する必要もないから殺人を犯すこともなかっただろう。そしてまだ高校生の獅子神はこの後、社会に出て、いろいろな経験をすることで他人を思いやる気持ちを持つようになったかもしれない。

そう考えると獅子神の場合は、機械の体になってしまったからこそ、殺人を犯してしまったのだと思う。機械の体にならなければ母親は救えなかったかもしれないが、父親のところでそれなりに普通の人生をおくれたんじゃないだろうか。安堂のことだって、圧倒的な腕力でねじ伏せることはできなかったかもしれないが、リンチした奴らに立ち向かってあげたんじゃないかと思う。機械の体になる前にどうして安堂の家に行って〜ということをしなかったのかとも少し思ったけど、ちょうどしばらく学校に来てないのがおかしいと思って行動を起こすタイミングだったのかもしれない。安堂がどのくらい不登校だったのか、はっきりわからないので、そこら辺はよくわからないが、この作品を通しての獅子神の安堂への行動を見ると、安堂は獅子神にとって特別に大切な人の一人だったと思うので、機械の体にならなかったとしても、安堂を助ける行動をとっただろうと思う。

犬屋敷と獅子神は対照的な存在として描かれていると思うけど、獅子神は悪人なわけじゃない。愛情も持っているが、それを示す対象がすごく限定されていて、愛情の対象になる人物とそれ以外の人たちの差が激しかった。それは若さゆえの部分もあると思う。

 

犬屋敷は機械になったおかげで死ぬ前に最後に一花咲かせられた。たくさんの人を救っていいことができたし、家族に見直してもらえたし、自分でも自分を肯定できた。このために生まれてきたんだと思うことができた。

それに対して獅子神は、機械になったせいで人生が狂ってしまった。彼がなぜ最初に夜の公園にいたのかはわからない。アニメではなぜあのとき公園にいたのか犬屋敷に問われるけど答えない。何か悩みがあったのかもしれないけど、おそらく機械になった後の暗闇ほどではなかっただろう。人を殺すことでそれから逃れ、そのためにその後いくら更生しようとしても、もう許されなかった。彼は機械にならなければ普通に人生をおくれていただろう(隕石の件はおいといて)。

獅子神がやり直そうとしても警察に邪魔され、自暴自棄になって警察を消そう、日本を消そうとすること、そういう気持ちは理解できた。最初に何人も人を殺してしまったのが許されないことなのだというのはわかる。それでもやり直そうとしているのに邪魔されるやるせなさ、邪魔してくる相手の方が正義だという、どうしようもない状況が悲しかった。

なぜだかとにかく、母親が出てきて以降の獅子神の言動にとても共感してしまって、何度も涙が流れた。最後も、人をたくさん殺してしまったけど、それでもやっぱりチョッコーと友達でいたかったんだって思うとすごく悲しかった。お前は何がしたいんだ、って言われてたけど、獅子神は平和に普通に暮らしたかっただけだった。それを邪魔するものを排除してただけだった。自分の愛する存在以外はどうなってもかまわなかった。とても狭い範囲の愛情だけど、彼は愛するものと一緒に幸せに暮らしたかっただけだったんだなと思う。

 

この作品は、背景の細かさ、写真みたいですごいと思ったけど、そういうところに力を入れていて、CGを導入したりしてるんだ、というのを知って、ああそうなんだ、すごいなと思った。だから、というか、見開きの1枚絵とか1コマが大きい絵が多くて、10巻の巻数のわりには他のマンガに比べてストーリーの量はそんなにないと思う。だからアニメも多少省いてるとこはあっても全部の内容を11話でできちゃったんだと思う。

 

それから、アニメのエンディングの歌が切ない感じの曲調で、この作品に合っててすごくよかったです。

 

<↓コミックの試し読み>

 

 <エンディング曲>

愛を教えてくれた君へ

愛を教えてくれた君へ