漫画「高台家の人々」森本梢子 感想


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妄想癖をもつ地味でさえない女性とテレパスのエリートイケメン男性+その家族の物語。
人の考えていることがわかってしまうテレパスの苦悩も描かれつつ、そんなテレパス達がくだらないバカバカしいおかしな妄想で癒やされたりする、全体としては楽しくて、どちらかというとほのぼのしたお話。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

妄想癖をもつ地味でさえないOLの平野木絵(ひらのきえ)が主人公。
ある日、ニューヨークから転勤してきたエリート社員で超イケメンの高台光正(こうだいみつまさ)に出会い、何故か突然食事に誘われ、お付き合いをすることに。
実は光正はテレパスで他人の考えていることがわかってしまう能力を持っていて、あまり人と深く関わらないようにして生きてきたが、木絵のアホくさい妄想が光正のツボにはまって気になる存在になり、彼女の人柄の良さも気に入って、ずっと一緒にいたいと思うようになったのだ。

 

そして光正には妹(茂子)、弟(和正)がいて、妹と弟もテレパス。
祖母がイギリス人でテレパスで、彼らは祖母からその能力を受け継いだ。
祖父は日本人、父がその息子でハーフ、母は日本人で、彼らはクォーター。
光正、3兄弟と祖母以外はテレパスではなく、祖父以外はテレパス能力のことは知らない。
そして祖母も祖父もそれぞれお金持ちの名家の出身で、光正達の住んでいる家はものすごく大きなお屋敷。
そしてみんな美形。(祖父はまあまあ?)

特にこの光正3兄弟と木絵を中心としたお話。
光正と木絵の恋愛模様はあっさり進んでいく。
最初に光正が木絵を食事に誘い、次はその食事の時の話かと思いきや、次の場面ではもう何度かデートしてお付き合いしていることになっている。それを会社の人たちが何故平野さんなの?と噂している場面。
そして次の話では、光正の妹、茂子の視点での話になり、去年のクリスマスに光正が木絵を家に連れてきて、自分と弟に会わせた話になる。

茂子、和正も、木絵の妄想を面白がり、木絵の人柄もいいので、木絵のことをとても気に入り、木絵の妄想や心の声(木絵は口べたなので思っていることをあまり伝えられない)に癒やされたり助けられたりしていく。

 

私は木絵の妄想自体はそれほど面白いとは思っていない。それ単体だったら、くだらないバカバカしいものなので、ふーんって感じにしか思わない。光正のように思わず吹き出しちゃうとかはない。
でもその木絵の妄想を見て、突っ込んだり、面白がったり、癒やされたりしている、光正、茂子、和正たちを含めて、全体でその様子を見るのが楽しい。

光正と木絵の話だけじゃなく、茂子、和正の恋愛事情もそれぞれ結構描かれるし、祖母のアン&祖父の茂正夫婦、父の茂正ジュニア(マサオ)&母の由布子夫婦それぞれの出会いから結ばれるまでの話も結構描かれる。
3兄弟の子供の頃の話もあり、正に高台家の人々というタイトル通り、高台家の人々のお話なのだ。

母、由布子は最初、光正と木絵の結婚に反対して、家柄がどうのとか言い出して、嫌な人って感じだったけど、若い頃(大学生の頃)は、気が強くてハッキリ物を言うところは同じでも、なんだかもっと素朴な感じの人だったんだなと思った。見た目もそんなに気を使ってなくて、家柄とかお茶お花のたしなみがどうのとか言いそうじゃないのにね。そこからなんであんな感じになったのかなーと、由布子が出てくると毎回思った。
でも根は悪い人じゃないということで、結局徐々に木絵を気に入って結婚OKになるし、木絵に対する態度もそれほどじゃなくなっていって、花嫁修業の頃には傍目に面白い感じになっちゃったりするんだけど。

 

父はアンが茂正大好きすぎて同じ名前の茂正ってつけちゃったんだけど、紛らわしいからってことで、マサオという呼び名になっている。マサオはテレパスじゃないし、空気の読めない、鈍感で明るく能天気でいつもニコニコしている人。アンにはいつも心のなかで「マサオ・・・」と突っ込まれている。
由布子のイライラピリピリをちょうどよく緩和してくれる癒やしキャラのマサオだけど、高台家の人々の中では、もう亡くなっている祖父についで、出番の少ない人で、祖母に似て金髪の超美形だけど、過去編も含めて一番存在感が薄かったかもしれない。何度かその癒やしキャラを発揮してくれただけだった。

茂子、和正は最初は自分の恋心に気付いていなかったけど、それぞれに長年の付き合いの想い人がいる。
光正もだけど、みんなテレパスなだけに相手の考えが読めてしまうから、なかなか本気の恋愛ができず、恋愛&結婚をほぼあきらめていた。
そんな彼らが、この人ならずっと一緒にいられると思う相手は貴重な存在。

 

茂子は岸本浩平と大学からの友人だったけど、浩平に告白した女の子の存在がきっかけでお互いに恋心を自覚し、付き合うことになる。浩平はかわいいめのかっこいい人だと思う。
茂子は兄弟の中では一番テレパス能力に罪悪感を持っていて、悩んだ末に浩平にテレパス能力のことを告白するけど、非科学的なものを信じない浩平は冗談に受け取って信じなかった。そして、もし本当にテレパスだったとしたら、忘れられず近づけないけど離れられないということになってしまうだろうという話を聞いて、それ以上、能力のことを信じさせようとするのはやめてしまう。
そして浩平との関係に悩むけど、祖母アンから祖父の茂正も同じように何度も告白しても非科学的なことだから信じなかったけど隠してるわけじゃない何度も言ったんだからいいやと思って結婚し、その後、アンと暮らすうちに徐々に能力のことを本当だったんだと気付き受け入れていった、アンも自分の気持をきちんと言葉で伝える等の努力をしたという話を聞いたり、木絵流の変な妄想(変な浩平を想像して浩平があんなのじゃなくてよかったと思う)を真似して心配な気分を乗り越えるとか、していた。
茂子と浩平の話はここまでで、結婚はしていない。でも彼らの場合は、アン&茂正パターンでうまくいくんじゃないかという気がする。

 

和正は、茂子の高校の同級生で、光正に10年片思いし続けていた獣医の斉藤純に会うたびにからかったりちょっかいを出してきたが、木絵のおかげ?で純に恋心を抱いていたことに気付く。
そして純が光正だけを見ているからやきもち焼いてたみたいだと純に言ったものの、好きとか付き合うとかは言わず、純を誘って食事をしたり映画を見たりデートっぽいことをするだけなので、純の方も「やきもち」の言葉で和正を意識するようになったものの付き合う等言ってこないので和正が純のことをどう思っているのかわからず戸惑っている。和正は光正や茂子がテレパス能力のことを恋人に話すかどうか悩んでいた時に自分は絶対話さないと言っていたし、一生結婚はしないとも言っていた。
和正自身も純とデートしつつ、純との関係をどうしたらいいかわからずにいたようだけど、純が和正が今は一番になっているという心の声を聞いて、今までテレパス能力に罪悪感はなかったけど、つらくなってきた、らしい。

 

そして純はテレパス能力のことを告白したら逃げるだろうし、そうなったら光正や茂子にも能力があることに気付いて、彼らとの関係もダメになってしまうだろうと思い、仕事で海外に行って純から離れることにした。
つまり言わないまま一緒にいることに罪悪感を感じるようになったし、告白しても彼女は受け入れない人だろうと思ったので諦めて離れることにしたのだ。
でも私は純は3兄弟の相手の中では一番役不足な気がしていたので、これはこれでいーんじゃないかと思った。
他2人に比べて、和正が判断したように能力を受け入れる度量がなさそうだったし、彼女自身に魅力を感じなかった。だから和正はまだまだ若いんだし、今後の出会いがあればいいなと思う。
和正は最初の頃は、光正と髪型が違うだけでほとんど同じ顔って感じだったけど、段々、2巻ぐらいから?ちょっとタレ目気味で髪のカール具合が激しくなった。

光正と木絵は、光正母の由布子に反対されたり、光正の会社の後輩や上司やお見合い話に木絵が嫉妬&心配するエピソードはあるものの、光正の気持ちは全くぶれないし、木絵も他の人に気持ちが揺らいだりすることはないので、わりとすぐに解決して順調に結婚まで進んでいく。悩んだ末に告白した光正のテレパス能力も、その場ですぐにではなかったけど、3日で木絵に開き直って受け入れてもらえた。
結婚後、高台家での暮らしのエピソードもあり、最後は木絵のご懐妊で終わった。

 

木絵の妄想の内容を知るにはテレパスじゃないと無理なわけで、普通共有できないものを、木絵は3兄弟と共有している。彼女からしたら見せてあげようと思ってたわけじゃなく、勝手に見られていて、それがわかった時は死ぬほど恥ずかしいことだったわけだけど。
でもそのおかげで、他人の思考や感情をよんでしまい人間不信になりそうになってしまうテレパスの彼らには、彼女の妄想を含めた内面が癒やしになったわけで、おもしろい関係性だ。

木絵の妄想が光正に見られていたというのがわかったときに、妄想の内容について挙げた時に、Hなこととか、と言っていたけど、実際に見られる妄想や思考でHなことはほぼ出てこない。
結婚後に若奥様と言われ、若奥様といえば裸エプロンと連想して、自分の裸エプロン姿を妄想したのくらいじゃなかろうか。光正と木絵は早々に付き合っているにもかかわらず、キスシーンさえ出てこない。
おそらくしてるんだろうけど見れるのはハグまで。
そしてこのあとおそらくHしたんだなという時はあったけど、木絵がそのことを思い出して赤くなるとかくらいの描写で、ベッドで2人で寝てるなんていうのもなく、キス以上の描写は皆無なのだ。

 

木絵はいい子だけど、その容姿と性格からして、光正がテレパスじゃなければ光正が彼女を好きになることはなかっただろう。木絵からすると光正は何故自分を選んだのかと思ってしまうような容姿も中身も完璧な人なのだけど、光正はテレパス能力のせいで他人の嫌な思考を知りたくなくても知ってしまうので精神的に疲れていて、光正にとって木絵は暗闇の中の暖かく明るい光で、彼女のおかげで笑顔が増える。光正にとってはかけがえのない運命の人なのだ。そして同じくテレパスのつらさを味わってきている茂子、和正にとっても木絵は癒やしの存在。
茂子は自分がブルーな時に木絵を呼び出して2人で買い物や飲みに出かけたりして木絵を癒やしとして使ってたくらいだ。
木絵と高台家3兄弟が一緒にいて、木絵の妄想を3人であれこれ言ってるシーンが好きだ。

まだまだもっと続いてもよかったのにと思う。
特にストーリーがどうなるかというタイプの物語ではなく、妄想娘&テレパスたち、高台家の人々の日常が描かれている物語だと思うので、長々と続けられたはずだ。
木絵の妄想を突っ込み合う3兄弟の図をニマニマながめるのが楽しいマンガだった。
そして高台家の人たちが美形揃いなのもよかった。
特に光正が超美形で、かっこよくてかっこよくて、すっごくよかった。

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