漫画「スキップ・ビート!」仲村佳樹 感想
主人公、最上キョーコが幼馴染の彼と一緒に上京、ミュージシャンを目指す彼を働いて支えていたのに、売れてきたら捨てられ、その復習のために芸能界に入って、スターになろうとがんばっていくお話です。
今も連載中で20年以上続いているようです。
マンガParkでコミック50巻まで配信されてます。
(50巻は有料)
マンガParkの話数で数百話なので、うわー長〜いと思ったけど、絵柄は好みじゃないのに結構おもしろくて読んでしまいました。
オーディションのエピソードだけで2巻使ってたりするくらい、全体的にお話の時が進むのが遅く、実時間で20年以上かかってるけど、お話の中では1年位な感じです。
だいぶ前に読んだのではっきり覚えてませんがたぶん40巻くらいまで読んだのかな。
当然?絵柄も結構変わっていて、主人公の女の子はそれほどではないけど、準主役の男2人は最初の頃と最新話でだいぶ違います。
男性キャラの顔の尖り具合が、顎が尖りすぎ、顔が細すぎ、逆三角すぎで、好みじゃないです。
ちょっとかわいく丸く描かれてる時の絵柄の方が、顔の配置のバランスもいいし、カッコいい、絵が上手いって思います。
作者さん的には、シリアス顔の輪郭と顔の中身のバランスが悪いとは思ってないのかなぁ。
以下、ネタバレありなので、ご承知の上。
主人公、最上キョーコが幼馴染の不破尚(ふわしょう、芸名)に誘われて家出のような感じで中学卒業後に上京、高校にも行かずに働いて、尚がミュージシャンとして成功する夢を実現するために生活面で支えてきたのに、芸能界で売れてきた尚はキョーコを捨てて一緒に住んでいた部屋を出て、マネージャー兼恋人のところへ行ってしまいます。
キョーコは小さい頃から尚のことが好きで、将来は尚のお嫁さんになるのが夢と語っていたが、一緒に住んでいても恋人関係ではありませんでした。
そして尚が、キョーコを家政婦代わりに連れてきたとマネージャーと話しているのを聞いてしまい、怒りに震えて自分の中のパンドラの箱が開き、尚への復讐を誓い、尚より売れて尚を見返してやると宣言、尚への復讐のために芸能界に入ることになります。
キョーコが芸能事務所に入るのもすんなりいくわけではなく、断られても執念で食らいついて相手の心をつかんでいきます。
根性といえば根性だけど、努力と根性って感じではなく、ギャグなところもありの執念?とか、いろいろ激しい感じがおもしろいです。
尚に対抗するため、尚の芸能事務所と同じくらいの大手ライバル芸能事務所にキョーコは入りますが、そこでもう一人の主人公とも言える敦賀蓮(つるがれん)に出会います。
蓮はモデルもこなす俳優で、既に有名人、人気者のスーパースターです。
最初はキョーコの尚への復讐のためという動機を、俳優を真剣にやっている蓮に不快に思われ、嫌われて冷たい態度をとられたりしたので、蓮は尚に次ぐ憎い相手になるんですが(女優になって蓮を見返してやろうと思う)、徐々に恐ろしくも尊敬する先輩になっていきます。
蓮もキョーコの動機は不快に思いましたが、キョーコが演技に真剣に取り組む姿を見て徐々に見直していき、キョーコのことを好きになっていきます。
キョーコは尚に捨てられた後、二度と恋はしないと思っていましたが、蓮のことを好きになりそうな自分に気付き、度々そうならないよう自分を戒めていました。
が、結局好きになってしまったのをなくすことはできず、決して気付かれないようにして密かに好きでいようと思うことにしました。
キョーコを家政婦扱いでいいように利用して捨てた尚は、私も絶対に許せん!と思ってましたが、キョーコが天使役で尚のPVに出演したくらいから、尚はキョーコのことを気にしだします。
キョーコを捨てた時の完全にキョーコのことはなんとも思ってない感じとは違って、キョーコを心配したりキョーコに対する独占欲を見せたるようにもなり、ながーい物語を経て、最新話あたりではもう「尚、許すまじ!」という気は削がれてきました。
キョーコも前のような気持ちになることはなさそうですが、尚は自分を気にかけてくれる幼馴染という感じで認めてきている気がします。
尚が、昔の「自分がないキョーコ」に興味が持てなかったっていうのもわかる気がします。
尚ちゃん大好きだった昔のキョーコよりも、尚とケンカップルみたいな言い合いをしている今のキョーコの方がおもしろいし、役者として七変化しちゃうキョーコはすごいし、そういう個性のある中身のある人のほうが好きっていうのはわかる気がします。
尚はキョーコのことが好きだなんて言いはしませんが、尚の行動をみてると、今は尚の方はキョーコが好きなんだろうなって感じです。
おそらく恋人関係でもあるマネージャーさんとは一緒に暮らしてはいるものの、マネージャーさんの方も、尚の世話をやいているお姉さんという感じの方が強くなっているようです。
「キョーコちゃんとくっついてくれれば」とか思っちゃうくらいで、全く嫉妬とかそういう次元ではなくなっているようです。
蓮は、実はキョーコが小さい頃に森で出会って一時期一緒に過ごしたコーンという少年(キョーコは妖精だと思っている)で、本名はクオン・ヒズリという金髪碧眼(正確な目の色は忘れた)のアメリカ人でした。
(クオンを子供のキョーコがちゃんと発音できずにコーンになった)
ハーフかクォーターで、父親は日本でも活躍したハリウッドスターです。
普通の子供では有り得ないようなつらい経験をして負の感情を溜め込んで荒れた過去があり、一から出直すために、名前と容姿を変え別人として日本で俳優をはじめました。
事務所社長が父の知り合いで蓮の事情をすべて知っています。
蓮のこのトラウマな過去の事情というのが、まだちゃんとはっきり出てきていません。
未だにつらい子供時代ということなので、親の愛情を受けなかったのかと思っていたら、蓮の父親が登場した時に、両親からものすごく愛されているらしいことがわかって、余計に謎が深まりました。
どうやらおそらく断片的に出てくるイメージからの推測ですが、蓮がアメリカで子役で演劇をしていて、日本人の血が入っているから等の理由で暴力も含めた酷い差別を受けたようなことと、荒れていた蓮を諌めてくれていた親友が蓮のせいで亡くなってしまったらしいこと、がなんとなくわかります。
ただはっきりは描かれていないので、あれだけ両親に愛されていて、そんなものすごい酷い子供時代って一体どんな状況なの?ってすごく謎に思います。
キョーコの方も子供時代、父親はおらず、母親に愛されず、尚の家に預けられて育てられたという過去を持ちます。
キョーコの両親の事情も長らく詳しいことがわからなかったんですが、38巻あたりでやっと母親が登場し、なぜ母親はキョーコに愛情を持てないのかといった事情がわかります。
キョーコの母親は弁護士で、一流大学を主席で入学卒業したような真面目で堅物な秀才でした。
そういう人にありがちな、感情面に疎くコミュニケーション能力の低い人。
男性とも付き合ったことのない28才でしたが、そういう初で堅物なところを狙われて、付き合っていた男性が実はキョーコの母の担当していた裁判の資料を盗むために近づいてきた産業スパイで、資料を盗まれて姿を消されてしまいます。
そのせいで大事な大きな裁判で負け、職場の上司はクビになります。
そしてその産業スパイの男性の子を意図せず妊娠してしまい生まれたのがキョーコでした。
キョーコはその母親の苦くつらい失敗の象徴のような存在だったため、愛情を持つことができなかったのです。
妊娠中に自殺未遂もあったし、生まれた後も虐待しそうだったので尚の家に預けられたらしいですが、小学生くらいの頃、成績のことで母親に叱られている回想シーンがあるので、生まれてすぐ預けられたわけじゃなさそうで、いつから預けられてたのか、預けられた後も時々会ってたのか等はよくわかりません。
子供に全く優しい言葉をかけることもなく、つかんだ手を振り払うくらいのことを毎回するくらいなら、中途半端に接触しないで預けた後は会わないとか、会っても顔を見る程度とか、産んですぐに養子に出すとか、すればよかったのにと思います。
子供を傷つけ続けてただけ。
キョーコはそのつらい経験を今は演技の糧にしているわけだけど、そこまでの否定は相当なトラウマを負わせる行為だったと思います。
そしてキョーコの父親はいつか出てくるのかなぁ。
ほんとにいつか、出るとしてもいつになることかって感じだけど。
本名もわからない人だからキョーコ達の側から探すのは無理だろうけど、父親の方が気になってキョーコの母親の様子を探ろうとすればできるだろうし、偶然とかマンガなのでなんとでもできる。
キョーコが昔会っていたコーンが蓮だということは、蓮の方は気付いているけど、キョーコは気付いていません。
蓮がどうしてキョーコを好きになったのかは、ちょっと疑問に思いました。
キョーコの明るさ、くじけないところ、強さとかにひかれたってことなのかな。
昔会ったあの女の子っていう要素もプラスされてるんだろうけど。
ただ、その前に結構冷たい態度をとってたので、そこから転じたのが、ちょっと謎というか、そこの変化はいまひとつ、しっくりこなくて、納得いく感じがしませんでした。
蓮がキョーコを好きなのが、全然キョーコに伝わらないのが、おもしろいです。
最近は「もしかして・・・」とキョーコが思ったりすることもあるけど、最初の頃の冷たい態度のせいで、蓮は恐れられていて、蓮の好意的な態度も、キョーコには普通に優しい先輩という以上の意味では全く伝わってませんでした。
キョーコが事務所に入った最初の方で、既に決まっている女優と役を張り合うことになるエピソードがあり、そこでキョーコの演技やガッツがそれなりに認められるものの、結局やっぱり元々決まってた女優さんにとってかわることはありませんでした
その後も、それでいきなり認められてガーッとどんどん次の仕事が決まっていく、みたいなことはなく、最初の方は下積みっぽい仕事をさせられて、うまくいきすぎないのがいいなと思いました。
キョーコの同僚の琴南奏江(ことなみかなえ)とも、一緒に仕事してすぐに仲良くなるんじゃなく、しばらく嫌われてる期間を経て、奏江が心を開いてくれるようになるし。
というのと同時に、こういうストーリー展開は最初から長期連載を見越してのものなんだなぁとも思いました。
あと最近読んだWジュリエットと同じように古いマンガだけど(といっても調べてみるとWジュリエットの方が5年古かった)Wジュリエットで感じたしっくりこない感じをスキップビートでは感じなくて、いろいろコミカルな部分とかがしっくりきて素直におもしろいと感じました。
感覚が合ったってことなのかな。
なので、全体的にぶっとんでる感じのマンガだと思うけど、それを素直に受け入れて、おもしろく読めたんですが、多少ツッコミをいれたいと思ったところもあります。
本当の役者さんたちがどうなのか知りませんが、役を自分で理解して、役になりきってセリフも動きも自分で考えて役を演じてみるという部分が多すぎる気がしました。
演技の勉強をしているキョーコには必要なのかもしれないし、それだけ真剣に挑んでいるということなんだろうとも思うけど、「しまった、◯◯(役名)だったらこんなこと言わない、しない」とかものすごい失敗って感じで思っているのが、そこまでしなくてもって毎回思っちゃったんですよね。
というのと、なんかみてて気恥ずかしい感じがしてました・・・。このマンガで描かれてる演技シーンは台本のセリフを言ってるのより、自分で考えての部分が描かれてる方が多いような気がします。そして長い。
蓮がドラマの嘉月役でやったアドリブ演技シーンは、すんごい長かった。
蓮がドラマの嘉月を演った時に、少ない練習期間で、難しい曲を弾けるようになっちゃうんですが、プロ級の演奏とまでいかないまでも譜面どおりに弾いただけでも、それはいくらなんでも無理だろー!と思いました。
確か一日2時間ぐらいで2週間とかだったような。
曲名忘れたけど、あの曲はクラシックのピアノ曲の中でも難しいと言われている曲だったと思うので、ピアノ習ってた人でもすぐ弾けるとは言えない曲なんだから。
子供の頃習ってたならまだわかるけど、全くの初心者だったら、いくら天才的になんでもできちゃう人でも無理だと思います。
ピアノはいくら天才でも練習量が必要だよ。
いくらなんでも無理すぎる。
キョーコが蓮の妹役をやった時に、外国人の兄弟という設定だったので日常会話を英語でこなし、監督等の説明を通訳することまでしてたんですが、キョーコはなぜそんなに英語ができるんだ?と思ってしまいました。
尚の実家の旅館でお客さん向けの英語が必要で習ったとのことでしたが、それだけで日常会話できる?
自分が思ったことを英語でスラスラ言えるようになるの?
しかも通訳しちゃうって相当じゃないですか?
まあ間違ってても蓮が本当は英語できるので問題ないんですけど、他の人達にバレないためには母国語が英語な人の発音が必要だよね。
しかも英語でしゃべってて、この妹役ではこんな言い方はしないかもとか、また考えてるんですけど、英語での言い方まで考えるほど英語できちゃうの?とか、かなりハードル高いと思う英語力に、そこまでなぜできる?という疑問がわきました。
蓮(外国人俳優としての扮装)と妹役のキョーコが二人で外を歩いた時に、キョーコがタチの悪い奴らにナンパされ、役に入り込んで挑発するようなことを言っちゃって、蓮まで絡まれて、暴力沙汰になる場面があります。
ここで蓮が実は強かったからよかったものの、普通の人だったら暴行をうけて大変なことになってたよなぁと思いました。
キョーコもそこは反省してたし失敗したってことではあるけども。
それと最近は出てきてなくてまた出番があるのかわからないけど、尚を真似っ子して売れて尚を脅かしていたバンドのレイノが、なかなかいいキャラクターでわりと好きだなと思いました。
いい人ではない。
でもいいキャラ、面白味のあるキャラです。
霊能力があって、キョーコの怨念たちも見えちゃいます。
バンドのボーカルをやってますが、そのバンドのメンバーである友人に誘われてやっているだけで音楽には興味なしだったりします。
なかなかおもしろかったので、また機会があれば続きを読みたいと思ってましたが、絵柄があまり好みじゃないので、間が空いちゃうとなかなか読もうという気にならず、続きが出てもそのままになってます。

