漫画「彼方から」ひかわきょうこ 感想


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漫画「彼方から」ひかわきょうこ 感想
ネタバレありなので、ご承知の上。

ピッコマにて。完結してます。文庫版で7冊。
ピッコマでは最後の1冊分は有料。
女子高生が突然異世界に飛ばされてしまうファンタジーSF。
絵柄は昔の少女漫画っぽい絵柄で好みじゃないんですが、なんとなく読んでみたら続きが気になって面白くて最後まで読みました。
ちょうど読み終わった頃、マンガParkでも配信が始まりました。しかも最後まで無料!(フリーコイン)
タイミングが・・・。マンガParkの方が1日に最大8話読めるし、1作品をどんどん読み進めたいならこっちをオススメします。

全く普通の、特技が何かあるわけでもなく力が強いわけでもない女の子、ノリコが学校の帰り道、突然異世界に飛ばされてしまう。化け物のような生物に襲われたところをイザークという青年に助けられ、言葉も通じないこの世界で何もできない、わからないノリコはイザークについていく。

実はイザークはこの世界に闇をもたらすと言われている天上鬼と呼ばれる存在で、常人にない力を持つが、自分が天上鬼だということは隠している。その天上鬼を目覚めさせる存在が「目覚め」と呼ばれ、目覚めが出現すると予言された場所に現れたのがノリコだった。
天上鬼の力を手に入れるために目覚めを手に入れようと予言の場所に各国から人が送られるが、樹海の中、花虫と呼ばれる化け物のような生物が生息する場所なので容易に近づけず、一足先に来て待ち構えて様子をうかがっていたイザークに先を越される。
イザークは生まれる前から天上鬼になると予言されていて、闇の存在と、天上鬼になるまでイザークを育てれば富や繁栄をもたらすという契約で両親はイザークを育てていたため、イザークは愛情のない、母から虐待される環境で育った。どこかから連れてこられて育てるように言われて契約したってことで本当の両親じゃないのかも?という感じだったけど、よくわからない。
イザークは自分が天上鬼になる運命を呪っていて、自分を天上鬼にする目覚めを殺そうと思って予言の場所に目覚めを探しに来ていた。が、現れた目覚めが、か弱い普通の女の子だったので戸惑い、彼女を助けながら旅をすることになる。
ノリコは言葉がわかれば少しは役に立つことができるかもしれないと思い、イザークとともに過ごしながら徐々に言葉を覚えていく。イザークは家を出て渡りの剣士として孤独に過ごしてきたため、普通の女の子ノリコの優しさや笑顔、ほんわかした魅力に癒やされていく。
イザークはノリコに自分が天上鬼でノリコが目覚めだということを教えておらず、ノリコが最初に現れた場所のことは誰にも話すなと言ってある。

イザークはノリコにひかれていきますが、ちゃんと自覚していないのと、自分と一緒にいたら危険だからという気持ちもあり、葛藤の末、ノリコが言葉を覚えてこの世界に慣れたと思った頃に、知り合いの商店主ガーヤ(元女剣士)の元に預けてノリコと別れる。
ノリコの方はなんの役にも立たない自分がいつまでもイザークに頼っていてはいけない、自分はイザークのお荷物だと思ったので、ガーヤのところに預けられるのを受け入れる。
が、すぐにガーヤのいるザーゴ国の政変に巻き込まれ、追われている政府要人をかくまったガーヤの家が襲われてしまう。ノリコは倉庫に隠されて助かるが、一人残ってしまいどうしたらいいかと途方に暮れ、イザークの後を追おうとするが、街のチンピラに声をかけられて追いかけられてるところをアゴルに助けられ、アゴルとジーナ親子に出会う。
細かいストーリーは忘れてしまいましたが、ノリコとイザークは再会し、ザーゴ国の追われていた政府要人のジェイダ大臣を助け出し、ジェイダ大臣と共にガーヤも逃げる必要があったので、イザーク&ノリコも一緒についていきます。

この世界には能力者と呼ばれる人がいて、カメハメ波のようなのを出せたり、予知ができたりする人たちがいますが、イザークはこの世界の能力者と比べても桁違いに強い身体能力を持っています。
ノリコを抱えたまま高いところへ(から)ジャンプできたり、屋根の上にひょいと飛び乗ってしまったりするし、傷を負ってもすぐに治ってしまいます。そんなイザークが戦うシーンはほとんどの場合、圧倒的な力の差でやっつけてしまうので、カッコいいです。
けれども、精神的には弱さを持っていて、天上鬼という運命や自分の力の大きさに悩んだり、戦闘で酷いケガを負うとイザークの中の天上鬼が顔を出してきて体も変化し心も負の感情(相手が憎い等)に飲まれそうになったりします。それを止めて元に戻してあげるのがノリコです。
ノリコはイザークと違って力もなく何もできない自分を役立たずだと思って悩みます。けれども、そのままの自分でいい、そのままの自分でできることがある、それをやっていけばいいと言われて、その時々の自分にできることをやろうと前向きにがんばります。そしてイザークを真っ直ぐに想う気持ちの強さと純粋さに感動します。
イザークもそんなノリコの気持ちに何度も救われます。

ノリコは最初は自分が目覚めでイザークが天上鬼だとしりませんが、ある時に知ってしまい、今までのいろんなことが腑に落ちます。そしてイザークを天上鬼に変えてしまう目覚めという存在の自分をイザークが嫌っていると疎ましく思っていると思いイザークの元を去ろうとしたり(結局は去りませんがどういう経緯か忘れました)、最初の方はイザークもノリコも相手を想うがゆえの気持ちのすれ違いがあります。
平常時はそういうちょっとしたすれ違いとか、本当の気持ちが素直に言えなかったりしますが、非常時は(イザークやノリコがそれぞれ危険な目に遭った時)お互いストレートな気持ちをぶつけ合って、気持ちが通じ合います。お互いが相手を想う気持ちの純粋さがいいです。
イザークが天上鬼だとわかってもノリコはそれでイザークを恐れたりしないし、イザークが天上鬼の姿に変化してしまっても、その姿のイザークに抱きついていって、ノリコの純粋な気持ちがイザークを元に戻します。
強大な力を持っていて暴走するかもしれない自分、そんな自分の姿を知ったら嫌われてしまうんじゃないかと恐れているイザークと、そんなこと全然気にしないで真っ直ぐイザークを想ってイザークを癒やしてしまうノリコのこの二人の純愛が好きです。

ただ天上鬼と目覚めが出会ってのストーリーだけじゃなく、イザークとノリコを含めて他の人達も内面が描かれるシーンが多くて、そういうところもいいなぁと思いました。
イザーク達のだけじゃなく現実世界も含めての世界の真理みたいなものを描いてるのもいいです。

世の中は広い、色んな人が様々な思いを抱いて生きている、我々はその一部なのだ
この服も道具も色んな人が作ったもので植物や動物や土にも水にも光にも助けられて 見えないところでいっぱいつながっている等々。

この世界では闇の力の方が強くなり、いろいろな国でいい政治家が失脚し悪い政治家が台頭していきます。
イザークとノリコはいろいろな人達に出会い、助けたり助けられたりしながら、イザークが天上鬼にならない道はないかと探します。
そしてクレアジータの、天上鬼さえ光と変わるかもしれないという考えにふれ、光の世界への道をみつけようと思います。

力は力 それ以外の何ものでもありません
それがどの色を帯びるかはその人物の内面「心」がどちらの世界に向かって開いているかによります。
接点は各々が持つ心。
人が闇の世界に心を合わせれば闇の波動が 光の世界へ心を合わせれば光の波動が拡がり それぞれの世界に様々な現象として現れます。光の世界への道をつくり光の力をこの世へ放ちさえすれば あの破壊の化け物と言われている天上鬼さえ光と変わるかもしれません。
光の世界は我々の存在の根元にあります。

そしてノリコは今まで経験してきたいろいろなこと、そこから感じたことを思い浮かべ、考え、光の世界への道をみつけます。
「この世のすべてが奥底で一つになっている世界 そこからイザークを見つけてやってきたの」
そしてノリコは光の世界を通してイザークと一つにつながり、イザークの力を使って街の周りにいた闇の敵をやっつけ、それが終わるとノリコは思念体でイザークのところへ行き、イザークに寄り添いながら闇の元凶の力とラチェフをやっつけます。正確には元凶の力の巨大な増幅器になっていた大量の月貴石を破壊して元凶の力を消滅させ、その洞と同化していたラチェフは月貴石がなくなって身を保てなくなって崩れ去りました。

最初の方から出ていて最後まで、イザークとノリコたちの敵だったのは、ケイモスとラチェフ。
ケイモスはカメハメ波みたいなのがうてる能力者の傭兵で、今まで敵なしの強さを持っていましたが、イザークと戦って初めて負けます。危ない所をラチェフに助けられ、そこからずーっとラチェフの補助を受けて闇の力を得て力を強くしていき、打倒イザークに燃えます。
物語の中で何度か戦い、最後は闇の力を急に吸収して体が崩れてきてもなおイザークに執着するケイモスに、なぜ自分に執着するのか気付いたイザークが「おまえはおれの最大の敵だった おそらくこの先 おまえほどの敵には会わないだろう」とケイモスを認めてやる言葉をかけて体を突き破ると、ケイモスは最後に笑みを浮かべて消滅しました。
イザークの言う通り、ケイモスは戦闘では物語中最大の敵でした。
ケイモスは戦闘のみで、ラチェフのように暗躍することはなく、ただただラチェフの元で力を強めて、イザークと戦いたいと言ってるだけの人でした。イケメンだったんだけど・・・、かわいそうな人でした。

ラチェフはずっと闇に心が囚われていて、イザークと同じように子供の頃、母親に否定されてきた人でした。
そして闇の元凶の力に目をつけられ、誰もが自分を肯定する世界を作ろうと上にのぼってきた(地位とか権力)が、何かが足りない、満たされない感じがずっと消えず、すべてを手に入れようとします。ノリコの力(イザークの力になっているイザークへの気持ち)も手に入れようとしますが、ノリコがそれはラチェフにはあげられないものなのだと説明しても話が通じません。
ラチェフはこの元凶の力のある洞がやっとみつけた自分の居場所で元凶の力と共に世界を手に入れてすべてを思いのままにできればこの渇きから解放される、心の平安を手に入れることができると思っていますが、ラチェフが必死にすがりついているこの地こそがその渇きを止める最大の邪魔をしているものなのだと気付いていないのだとノリコは思います。
そして二人は体が崩れる前にラチェフに光の世界を見せ、ここに目を向けて本来の己を見つけ出せ、おまえはいつでも愛されていたんだ、と教えます。二人にできるのはここまでで、後は自分の力で自分の意志で再び光のもとへはいあがってくるように祈ります。
そして闇の世界で目覚め、ゴーリヤとともに光のほうへ向かって歩いていくラチェフが描かれます。(おそらく思念体)

光の世界を通じてノリコの元の世界へもつながっているのだということを、ノリコもイザークも気が付きます。イザークはチモ(瞬間移動能力のある動物)の力を借りれば、ノリコを元の世界へ送ることができる、今の自分にはその力がある、けれども一方通行で、元の世界からこちらに戻すことは出来ないけれど、ノリコのために、ノリコが望むなら帰してあげようと思います。
けれども、ノリコは帰りたいけどイザークに会えなくなるのはもっと嫌だから嫌だと言って拒否します。

そして家族に自分が無事だと知らせるために、こちらの世界で書いていた日記を送ってもらいます。
ノリコの父親は小説家で、ノリコの日記を元に小説を書き出版され、ノリコの友人たちがその本を手に取る様子が描かれます。
そしてその本の一番最初にはこんな一文が載っています。
「はるか彼方から 皆さんへ この物語を送ります 立木典子」

エピローグでその後のイザークとノリコ、今まで出会った人たちの様子が描かれます。
ザーゴ国、グゼナ国で政治を牛耳っていた悪人が排除され善人が復権していきます。
イザークとノリコはパラゴ、アゴル、ジーナと行動を共にし、いろいろな国を回って、国をよい方に変えようという人達の手助けをし、世界に光の力を配る役目をはたしていくようです。

このお話の素晴らしいところは、単にSFファンタジーなストーリーが描かれているだけでなく、心のことが描かれていることです。主役のイザーク、ノリコの心の葛藤はもちろんですが、適役の人物たちも、彼らの心の闇だったり、何人かは改心する様子が描かれたりします。全員が改心するわけではなく、そのまま闇に飲まれて自滅する人もいます。

世界はいろんな人がいて、自分もその一部で、まわりにある物も含めてみんなつながっているんだ、関係性があるんだ、っていうような悟りのような考え方が出てきたり、現実世界に通じる普遍的な物の考え方が出てきます。
そして、ものすごく普通な女の子のノリコが、イザークのように超人になったり、すごい能力を得ていくわけでもなく、そんな普通のノリコがそのままの自分で役に立つんだということを気付いていくところ、体や能力は超人的だけど、それが故の闇を抱えているイザークを癒やしていくところ、そういうなんだか、あったかいものを感じる話なところがいいなと思います。

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