中途入社した会社の上司が、高校生の頃の元彼だった。しかもトラウマになる別れかたをして、未だに引きずっている恋で・・・という、とても切ない気持ちになれるお話。
「liar」「perfect crime」と同じく、マンガを先に途中まで読んで、続きが知りたくて原作がエブリスタ(小説投稿サイト)にあるって知って読んだ作品。
気になっちゃうので先にネタバレの結末を調べてしまいました。
それでも私は十分切なくなって泣けました。
以下、ネタバレありなので、ご承知の上。
羽鳥&三浦菜乃花 編
10年前の高校生の頃と現在を行ったり来たりしながら語られますが、下記のストーリーは時系列順で書きます。
三浦菜乃花(ナノカ)は高校1年生の時、毎朝同じ電車でよく見かける他校生の3年生の男の子、羽島に恋をしていた。
友人に後押しされ、友達からのつもりで声をかけたが、テンパって「付き合ってください」と告白してしまう。
けれども予想に反して「別にいいけど」という返事をもらい、付き合うことになる。
ナノカは羽島に「好き」と何度も伝え感情表現豊かだったが、羽島はクールな態度で一度も好きと言ってくれたことはなかったし、学校の友人がいる時は話しかけないでと言われていたが、照れているんだと思っていた。
羽島は進学校の受験生で塾通いに忙しく、塾のない日の放課後に公園で会う程度の付き合いだったが、それでもナノカは幸せ気分いっぱいだった。
卒業式の日、ナノカは羽島の家に行き、初めてHをした。
羽島は卒業後のクラスの集まりがあるので、ナノカは夕方に羽島の家を出て、帰りの駅のホームで、羽島の友人達を見かける。
そこで友人達が、羽島は「彼女」と約束があって集まりには来ない、「彼女」は香澄で2年生からつきあってる、という話をしているのを聞いてしまい、羽島に確認しようと羽島の家に戻ったが、家の前にキレイな女の子がいて、家に入ろうとしているところを見てしまう。
羽鳥はその子を香澄と呼び、仲よさげに会話して中に招き入れた。
その子は羽島の部屋でみたツーショット写真に写っていた女の子で、羽島の「彼女」だと友人が言っていた香澄だった。
電車で話しかけないでと言われていたこと、ツーショットの写真、別れ際に言っていた「今日でおしまい」という言葉、好きだと言ってくれないこと、全てが腑に落ちてしまった。
ナノカは羽鳥に二股されていて自分とは本気じゃなかった、嘘をつかれて裏切られたと思い、涙があふれ、どうやって帰ったか覚えてないが、そのまま家に帰った。
この後ナノカは、羽鳥との連絡、接触を一切断ってしまい、二度と会わなかった。
ナノカは羽鳥が気に入っていた長い髪をバッサリ切った。
後に大人になってからわかるが、この後、羽鳥はナノカと会う約束をしていたナノカの誕生日の3/28にナノカの家に会いに来ていた。
ナノカはその日、友人のヤゴ(男)、カッチン(女)と会う予定になっていた。
ちょうど羽鳥が来た時にヤゴがナノカの家の前にいて、羽鳥に「自分が今付き合ってる、羽鳥に会いたくないと言ってる」と羽鳥を追い返してしまい、ナノカにそのことを黙っていたため、ナノカは知らない。
本当はヤゴとはつき合ってなくて、友人としてナノカを泣かせた男を追い返しただけ。
10年後の現在、ナノカは中途採用で入社した会社で、羽鳥に再会する。
羽鳥はナノカの上司で、ナノカは羽鳥を補佐する仕事だった。
マンガでは、ナノカはここで羽鳥の名前を聞いて気付きますが、小説の方ではあまりはっきりいつ気がついたってのは書いてなかったような?
羽鳥はナノカが、髪はベリーショート、性格はクールで無表情な感じになって、高校の時と見た目も中身もだいぶ変わっていたので、会ったことがあるような気がするとは思ったけど、しばらく気付きませんでした。
この再会時の羽鳥の態度があまりに最低でちょっとビックリします。
羽鳥にとって初対面のはずの相手に対して、顔を見てプッと笑って「サル」とつぶやくって、酷すぎないですか?
根は優しい仕事のできる人ってことなんだけど、営業職の仕事のできる人が、初対面の相手にそんな態度取るの?っていう、結構ビックリなくらいのひどい態度だなーと思いました。
そんなことする人いるんだってレベルで。
みんなに嫌われてるだめな人ならわかるけど、そういうキャラの人じゃないのに。
若いときだったらかなり傷つきますよ、こんな態度とられたら。
ナノカは羽鳥に、高校の時につきあってた元カノじゃないかと言われても、最初は勘違いじゃないかと否定します。
ナノカが羽鳥の部屋に忘れていった生徒手帳を羽鳥はまだ持っていて、そこに書いてある名前を見て確認したと言われて、やっとナノカも認めます。
羽鳥はナノカの名前を「カナ」だと思っていました。カナはナノカのあだ名で、ヤゴやカッチンがナノカのことをカナと呼んでいたので、それを聞いてカナだと思いこんでいました。
なので、生徒手帳で確認するまでは名前も違うし・・・と思っていたようです。
それに羽鳥がナノカをカナと呼んだのは最後に会った日のたった1回だけでした。
この「カナ」が名前じゃないことについては、羽鳥が言ってくれればよかったのに、と言うんですが、カナと呼ばれたからと言って、「あだ名で呼んでくれたんだ」と思って別に訂正はしないんじゃ?と思いました。
まあ普通はそこで、「あだ名知ってたんだ?」とかそういう話になって本名はナノカだって話にはなるかもね。
羽鳥の中ではいつもカナって呼んでたつもりになってたけど、実際は、最後に会った日に1回呼ばれただけだったので、そういう話をする機会がなかったのです。
数ヶ月?付き合ってて、本名知らなかったってのもどうかと思います。
しかも思いを残してて、彼女の忘れ物の生徒手帳があったら、じっくり見ちゃって、名前に気づくんじゃないかなぁと思う。
そして、再会後にもナノカは、街で羽鳥が香澄と一緒に歩いているところを見かけて、今もつきあってるんだと思います。
ナノカも羽鳥も高校の時の事は「過去の事」にしていたつもりでしたが、再会してお互いにまた惹かれ合ってしまいます。
ナノカは痛い過去の原因である羽鳥に心乱されたくないと思いつつも、心が揺れてしまい、結局、羽鳥のアプローチに負けて、付き合うことになります。
羽鳥に「俺は好きだよ」と言われますが、ナノカは羽鳥が香澄と付き合ってると思っているので、自分は2番目だと思っています。
そう思いつつ、羽鳥にひかれる気持ちに負けてなので、はっきり「つき合っている」というより、セフレに近い感覚で、心があまり伴っていない感じでした。
あまり心が動かされないよう努めているような。
なので、ナノカはクールな対応が多く、羽鳥は物足りなく感じています。
そして、ナノカは羽鳥とつき合ってからも、羽鳥にかかってきた同窓会の電話で「香澄と会うから」「香澄とは長いから」と言っているのを立ち聞きしてしまったり、ヤゴから羽鳥と香澄らしき女が歩いてるのを見たと聞いたり、お正月休みに羽鳥に家に呼ばれて行った時に、高校の時の再現のように、またもや羽鳥のマンションの前で香澄を見てしまい帰る等、香澄の存在を何度も感じてしまいます。
そして「最初から2番目だとわかって割り切ってるから大丈夫」と思ってきたけど、やっぱりつらくなって限界になり、もうお終いにしようと決め、羽鳥の部屋へ話をしに行きます。
そして羽鳥の部屋にいる時に、香澄から電話があり、羽鳥のスマホの画面に「香澄」の文字が出ているのをみて、ナノカの感情が堰を切ったように溢れ出て、泣きながら「なんで電車で話しちゃいけなかったの?」から始まって、ずっと心の中に抑えていたことを吐き出し、「嘘つき」と泣き叫びました。
しばらく大声で嗚咽しながら泣き、落ち着いた頃、また香澄から電話がかかってきて、羽鳥はナノカを抱きかかえたまま電話に出て、香澄と話し電話を終えると「兄貴の奥さんから」と言います。
ナノカの支離滅裂っぽかった泣きながらの言葉から事情を理解した羽鳥は、ナノカに「俺がずるかった」と謝り、香澄について説明します。
香澄は、幼なじみで、昔から羽鳥の兄のことが好きで、香澄が高1の時から付き合い始めましたが、羽鳥の兄は高校教師だったので、世間体の問題から、カモフラージュで羽鳥が香澄(同い年)とつき合っていることにしていました。
それが卒業式までの約束で「今日でおしまい」ということでした。
電車で話しちゃだめなのは、香澄が彼女ということになってたから。
羽鳥の部屋でチラッとみたツーショット写真は香澄と兄のツーショットで、後で兄達に渡そうとして置いてあっただけのもの。
(チラッとしかみていなかったから羽鳥の兄を羽鳥と勘違いしていた)
卒業式の日は、兄と香澄が家で会う約束をしていたから。
再会後に二人が一緒のところを見たのも、たまたま街で会ったり、家族で会った時の忘れ物を届けに来てくれた(マンションの前)時だったりした、とのこと。
そして羽鳥は、他校生のナノカに、香澄が彼女だという話を知られることはないだろうと思っていたし、言ったら良い気はしないだろうから、波風を立てたくなかった、面倒を避けようとしたため、香澄のことを言わなかったのでした。
つまり、香澄が彼女だというのはカモフラージュで、羽鳥の彼女はナノカだけだったんです。
ここでナノカの「自分は2番目だ」という誤解が解け、羽鳥は本当に「ちゃんと」自分のことが好きなんだというのを信じられたので、これでやっと二人は本当に付き合うことになりました。
感想
この二人は、ナノカがちゃんと羽鳥に問い詰めるなり、別れる理由を言っていれば、おそらくその時、誤解は解けてうまくいっていました。
羽鳥がちゃんと香澄のことを説明していれば、生じていなかった誤解でした。
当時、15才と18才(2学年違いだがナノカの誕生日が遅いので)だったから、正しい選択ができず、そうなってしまったのも仕方ない。
高校生のナノカが、香澄が家に入るのを見て自分は2番目だったんだと思った時、だから好きだと言ってもらえなかったんだ、と思ったのが、ものすごく悲しくて切ない。
そして、最後のナノカが自分の気持をぶつけて泣き叫ぶところも、切なくてすごく泣けました。
ただ、読み終わってみるとなんか物足りなかったんですよね。
泣けるのはその場面場面で泣けるので、「=全体としてよかった」とは限らない。
なんでだろう?と思ったけど、これだけナノカに切ない思いをさせといて、違ったってわかった後での、羽鳥の心情描写が物足りなかったのかなぁという気がしました。
最後に羽鳥視点で心情描写はありますが、ナノカに連絡を絶たれた後の、羽鳥の「もっとちゃんと言葉や態度で示しておけばよかった、ちゃんと好きって言っておけばよかった」の描写が足りない。
羽鳥は本当はナノカを可愛いと思っていたし、すごく好きになっていたけど、それを表現してないだけでした。
一応、ごめんって謝ってるけど、なんかなぁ。
再会後につき合っても物足りなさを感じさせられ、ナノカに好きって言ってもらえなくて、高校の時と逆な仕打ちを受けてはいたけど・・。
なんか羽鳥の言うことって、最初の信じられない「サル」発言に始まって、なーんかちょっと嫌な言い方だなぁって感じるのが多くて、会社での評価はいい、ということになってるけど、羽鳥があまり好きになれませんでした。
ナノカに冷たい態度をとられても、ちょっと一言嫌な感じで言い返すって感じで、なんか嫌だったんです。
だからかなんだかわからないけど、そこそこ泣いたけど、読了後は、「あれ?」なんか何も残らないなぁっていうか、物足りなさを感じました。
すごい切なかったです。泣けてデトックスにはいいかも。
やっぱり羽鳥が好きになれなかったのが大きいかもしれません。
あと、なんか二人ともいい大人で、それなりに恋愛経験もあるのに、ちょっとしたことで顔を赤らめたりするのが、「え?こんなことで?」って思ってしまって、なんだかチグハグな気がしてしまいました。
それとヤゴは実はナノカのことがずっと好きで、自分も長年思い続けてこじらせていると自分で言っていました。
でも最後までナノカには告白しませんでした。
最後までいい友人をつらぬいた彼はいいヤツだなーと思います。
マンガの方の見た目は、二人とも高校生の時の方が好きです。
大人になってからは、眼鏡が好きじゃないんで羽鳥カッコよくみえないし。
ナノカは、顔はいいんだけど、サルって言われちゃうのがわかるような、髪の短さがイマイチ似合ってない感がうまく出ているキャラだなと思いました。
作者さんもそう意図してたのかわかりませんが。
表紙にその雰囲気がよく出ている気がするけど、大人の二人はあまり見た目好きじゃないです。