漫画「不能犯」原作:宮月新 作画:神崎裕也 感想


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殺人依頼を請け負っているが、自分で直接手は下さず、「思い込み」でターゲットを死に追いやる殺し屋の話。
1〜2話で1つのエピソードは終わる連載形式。

ピッコマにて。グランドジャンプで連載中。
以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

殺しの依頼を請け負い、「思い込み」でターゲットを死に追いやる殺し屋の宇相吹正(うそぶき ただし)が主人公。彼にいろいろな人が殺人依頼をするという形で、エピソード毎にいろいろな人間模様が描かれます。

12話まで読んでの感想です。
最初の話で出てきた女刑事がずっと宇相吹を追いかけるのか、と思ったら違ってあっさり死んでしまいました。
最初の話は、女刑事は自分が正しいと思ってきたエリートだったけど、冤罪で逮捕した少年を自殺に追い込んでしまった過去があり、その少年の父親が部下の刑事で、もうそのことを恨んではいないと見せかけて、実は宇相吹に女刑事の殺害を依頼していたって話でした。
父親の刑事も女刑事の死後、宇相吹と会話していると思い込んでたら実は警察署で自分が依頼したって話をしてしまっていて、刑事たちの前で自供しちゃってた、というオチです。

今のところこの最初のエピソードに出てきた女刑事の部下だった若手の男刑事が、宇相吹を追いかける刑事として、ずっと出てきてますが、ただ宇相吹に思い込まされて殺人を犯してしまった人などの話を聞いて「宇相吹の仕業だー!」と言ってるだけで、証拠がないので全く捕まえられないし、宇相吹の正体も何も掴んでなくて、ただただ宇相吹の仕業だと思っているだけの人です。

宇相吹は、話術で思い込ませるわけではなく、何か不思議な力を持っていて、彼に言われると幻覚のようにそう見えてしまったりするのです。彼がどうしてそんな能力を持っているのか、彼がどうしていつも裏事情もわかっているのか、どうやって調べているのか等、多くの部分が謎のままです。
彼の目的は、「人間は脆い」と証明するため、だそうで、最後に「愚かだね人間は」と言うだけです。
あとは猫が好きなのか、猫の世話をしていて、よく猫に囲まれています。

この作品の中で、宇相吹だけが妙に魅力的だなぁと思いました。
見た目の点でも、やけに色っぽくて、かっこいいです。

が、各エピソードの内容は、あんまりおもしろく感じなかったです。
似たような人間の闇とか汚い部分を描く、殺人依頼の話で、今まで私が読んだマンガでは、「呪いの招待状」(曽祢まさこ)があります。古い感じの絵柄の少女漫画ですが、「呪いの招待状」の方が各エピソードは面白かったです。

宇相吹が1話目でだけ女刑事とHするシーンがありますが、1話目だけ特別だったのか、その後は個人的にそんなに絡む話は出てきません。色仕掛け?ってわけでもなく、あのHシーンに何か意味があったのかもわかりません。別に女刑事を殺すためには必要なかった気がします。

 

この作品に出てくる人物は、悪人ばかりだけど、その悪人の人物像に深みがないというか。
殺人依頼をしていた相手が実は自分の事を想ってくれていて勘違いだったというのがわかったりしても、それを反省したかもしれないけど、そういう時の表情が、悪人っぽい感じのままで、いい感情と悪い感情の葛藤があまり感じられないのがイマイチ。
たぶん、そういう時の人物の表情の描き方のせい、なのかなぁ。
なんか悪人顔のまま、引きつった顔だったりで、一旦悪に転じるとそのまま悪人顔、汚い表情のままなのが、ただの悪人って感じになっちゃって、深みを感じないのかなぁ、と思います。

それと宇相吹とそれ以外のキャラの顔にだいぶ差があるなとも思います。
宇相吹だけやたら魅力的なんだけど、他のキャラは、なんか目が大きすぎるのか、子供顔の大人って感じで、絵が下手って感じがしてしまいます。宇相吹だけ別格な感じ。

私が何話か読み続けたのも、ほんとにただ宇相吹だけの魅力で、なにか宇相吹のことがわかってきたりしないかなと思ったりしたんですが、12話まででは何もわからず。
あとエピソードが1〜2話で終わるので、読みやすいからなんとなく暇な時に読むにはいいかもですね。

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