漫画「純愛ラビリンス」なかじ有紀 感想


<↑コミックの試し読み> Renta!

主人公は女子高生、荻原羽美(ウミ)16才。3つ年上の兄、美斗(ハルト)は人気の若手俳優。
ウミはハルトのことが大好きで、ハルトのファン第一号としてハルトを応援しています。

コミカルな恋愛物語です。
わりと面白かったです。
マンガParkにて。全話無料で読めます。(無料コイン)
以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

祖母、両親、兄、妹の5人家族のうち、ハルトだけ実は血が繋がっていなくてハルトはそれを知っているというのが1巻の終わりでわかります。その前にもそれっぽいことは匂わされているので、わりとすぐ血が繋がってない兄妹なのかなって推測できるし、ハルトもウミもお互いを恋愛感情で好きなんだなっていうのもわりとすぐわかります。

ハルトは仕事でキスシーンをすることもあって、ウミがそれを見ちゃってショックを受けたり等、ハルトの仕事も絡んで、お互い、兄弟なのに好きな気持ちをどうしようみたいな、ヤキモキしたり、悩んだりがあります。
もう一人大きく絡んでくるのは、ウミと同じ年で、ハルトと人気を二分する人気俳優&歌手の桐島レイラ(男)。
レイラが萩原家のマンションの隣の部屋に越してきたことで接点が生まれて、絡みだします。

 

ハルトがカッコいい!と思って読んでました。
レイラもだいたい同じような顔なんだけど、レイラの方がちょっとかわいい感じです。
ただ、ハルトは後半、表紙絵では違ったけど、本編では目が丸っこくなった絵が多くて、丸くない方がかっこよかったので、ちょっと残念。

ハルトは仕事で女優さんとかモデルさんとキスはしてるけど、ウミとも、ウミには気付かれてないけど、ウミが寝てる時にキスしたりしてるんですよね。よく少女漫画ではファーストキスを重要視して、あれは私のファーストキスだったのにとか、ファーストキスは実は誰々としてるんだとか、言ったりすることが多いですが、この話ではファーストキスうんぬんは全く出てこないので、ハルトのファーストキスが仕事だったのかウミでちゃんと最初にキスしてたのかどうかはわかりません。

ウミもそこはハルトは仕事なんだからと、それに兄なんだからっていうのもあるけど、キスシーンを見てショックは受けちゃうけど、その後も、ハルトはキスシーンのある仕事をしてるし、ファーストキスにはこだわらないみたいです。

そして、ハルトとウミの恋愛模様がゴタゴタいろいろあるというより、普通にウミの学校の文化祭とかイベントがあったり、ハルトとレイラが共演したり、ハルトのマネージャーが入院してウミが代役のマネージャーをやったりと、いろんな出来事が描かれて、その中でハルトとウミがお互いを好きな様子とか、レイラがウミに近づくのをハルトが阻止したりとかがコミカルな感じで描かれます。

 

ウミの幼馴染で同い年の友人、ミオとトウタが前半はそこそこ出てきてたのに、後半ほとんど出てこなくなり、最後は出ないまま終わってしまいます。ミオはハルトのマネージャーに文化祭で出会って恋をしてて、マネージャーが入院した時にお見舞いに行ったというとこまでは話がありましたが、その後どうなったのか、何も描かれないままでした。

トウタもウミが好きなようでしたが、トウタがハルトをヤキモキさせることもなく、ただの幼馴染の友人で終わり、後半はミオ以上に出番なく終わってしまいました。トウタはウミが好きなんだろうなーって読んでて思うだけで、何もはっきりした行動はなかったです。トウタもレイラ系のイケメンだったんだけど。
二人共なんとなくフェードアウトなところがちょっと寂しかったかな。
後半は学校が絡むことが少なくなり、ハルト、レイラの仕事の話がメインになっちゃったので、出し用がなかったんでしょうね。

ハルトの実の両親に関してはちょっと複雑な事情があります。ハルトはウミの母の親友の子でした。ハルトの実母、ヨリコ(日本人)は、ハルトを生んで半年で病で亡くなり、ウミの両親が引き取って養子にしたのです。
なので養子とは言っても、血は繋がってないけど赤ん坊の時から萩原家の子として育てられています。

 

ハルトが自分の血が繋がってないのを知ってたのは、ウミが幼児の頃、猫を追いかけていったウミが車に轢かれそうになったのを助けたハルトが重症を負って輸血に必要な血液の話を医者と両親、祖母が話しているのを聞いてしまったからでした。

ハルトの実父は、超人気ミュージシャンのアレックス・ムーン(ルナ)でした。
アレックス・ムーンは、ハルトもレイラも大好きな憧れのミュージシャンです。
ハルトの母ヨリコは、当時無名だったルナとパリで知り合い、売れないルナを支えて、お互い愛し合っていましたが、ヨリコの両親が交通事故で亡くなり、ルナに事情を説明せずに急に帰国してしまいました。
ルナはヨリコが戻るのを待っていましたが、帰ってこないヨリコを探し、ヨリコの死を知りましたが、ヨリコがルナとの子供を生んだことは知らなかったのです。

ウミの両親はハルトの実父がアレックス・ムーンだと知っていましたが、ハルトを引き取る時に、アレックスのエージェントに何度も連絡したのに門前払いされてしまっていました。
ルナに伝わってなかったということが、ルナがハルトを見つけて会った時にわかりますが、そこに関して、ルナが当時のエージェントの野郎うんぬんみたいなお怒りの言葉はなく、さらっと流されます。まあもう20年くらい前だしとは思うけど、子供がいたのにエージェントのせいで知らされなかった事に関して何か文句を言うみたいなのを期待したのでちょっと物足りない感がありました。

 

中盤で、祖母がハルトは養子だと気付いてるかもしれないと思い、それを機に両親は、ハルト、ウミにハルトが養子だということを伝え、ハルトは知ってたというのも明らかになります。
ハルトもウミもお互い、家族として慕われていると思っているので、血の繋がりがなくなると拒絶されるのではと恐れ、特にウミは混乱してハルトを避けてしまいますが、友人ミオの「ハルトの方がつらい」という助言のおかげで気持ちの混乱が解消され、またハルトと今まで通りに仲良く接します。

ここから、ハルトの実母ヨリコの話も伝えられることになり、実父のアレックス・ムーンが来日公演で日本に来て偶然ウミと知り合った事から、ハルトとも会うことになり、アレックス・ムーンがハルトを見て「もしや」と調査して息子だとわかり会いに来て、アレックス・ムーンが実父だということもわかる、という、ハルトの出生の秘密絡みの話が続きます。

レイラもちょっとした事情があって、元はCOLORというバンドのメンバーの一人でしたが、COLORがデビューする時にレイラを外すことを条件に出され、他のメンバーはそれに従いました。レイラは裏切られたと思ってショックでもう歌を辞めようかと思った中2の時、河原で歌っているハルトを見かけて、その歌声に感動し、もう一度やる気を出すことができたのです。この時ハルトに声をかけて誘いますが断られ逃げられました。

 

という感じでレイラは単にハルトに並ぶ若手の人気芸能人ってだけじゃなく、ハルトは覚えてないけどハルトを知ってたんです。そしてハルトの歌声に惚れていました。
レイラは自分で作詞作曲した曲をハルトに渡して歌うように言い、それを聞いたハルトはレイラの曲に心動かされて、歌うことを決意し、ハルトの歌声に注目していたプロデューサーの元で、芸能人として既に有名な二人の名前を隠して、二人が出演するドラマの主題歌として使われることになりました。

レイラもウミに惚れる男の一人で、レイラはトウタと違って、ハルトをヤキモキさせ、宣戦布告もしましたが、ハルトとウミが両思いになると、レイラがウミを好きっていうところはなんとなーくフェードアウト。レイラがウミに告白するとか、ハルトとうまくいったのを知って諦めるとか、そういうはっきりした何かはないまま終わります。
両思いの後は夢に向かっての話になり、レイラもハルトの夢に絡んでくるので、そっちの話メインになって、ウミが好きって話はでてこなくなるんです。

 

終盤、ウミがレイラのPVに出演して、そのPVでウミがした表情を引き出したのがレイラなのかと思ってハルトは嫉妬してましたが、そのPVをハルトとウミで見ながら「こんな表情するんだな」とハルトが言うと、ウミがハルトを思い浮かべながらした表情だと説明し、あの表情は自分の事を想ってしてくれてたんだとわかったハルトは感極まってウミを抱きしめ、ウミに好きだ、ずっと好きだったと告白し、ウミもハルトに大好きと言って、両思いになります。

そしてここで終わりではなく、その後は、分量としては少ないですが、二人がそれぞれの夢に向かっていく姿が描かれます。

ウミは、レイラのPVに出演したのがきっかけで、学校のイベントの劇でオズの魔法使いのドロシーを演じて、演じることに目覚め、学校の演劇部に入り、女優になる道に進みます。

ハルトはルナにニューヨークに来るよう誘われ、最初はウミと離れたくないと断りますが、その話を聞いたウミに、夢を追うよう後押しされて、レイラと二人でニューヨークに行くことになります。
ハルトはレイラと共にルナの元で、レッスンと練習を重ね、2年後、二人組のユニットBLOOMとして、ニューヨークのドリームナイトというイベントに出場します。

 

ウミはハルト不在の間に、ハルトの芸能事務所(ウミの叔母が社長)に入ります。
ハルトとレイラのBLOOMがイベントに出場した後、ウミが初主演する舞台?か何かの楽屋にハルトが来て、再会。
その翌年に二人は結婚。(結婚式の衣装を着た二人の手が繋がれている部分だけの絵)
BLOOMはWミリオンを達成、ということでハッピーエンドで終わります。

最後の1話で、ハルトがニューヨークに行く事に決めたところから始まるので、最後の展開はかなり駆け足です。なので、ニューヨークに行ってる間、ハルトが一度も帰国してないのか等よくわかりませんが、ずっと会ってなくての再会なのかなという気はします。
でもそのわりに、抱きしめてキスして終わり、次のページは結婚、Wミリオンと、駆け足展開なせいで再会の余韻とかないので、この辺もなんか物足りない感じがします。
再会シーンはもうちょっと二人の会話とか描いてほしかったなぁ。

 

義理の血の繋がらない兄弟の恋愛話は、兄弟というのは倫理的にどうなんだってことで悩むことが多いですが、この話ではそこはそれほど深く悩みません。義理の兄弟だったらそんな悩まなくてもいいんじゃない?っていつも思ってるので、そこはよかったです。
親に付き合ってる事を言う等も、はっきり宣言はしないまま、祖母、母は察していて、父は二人のキスを見て知るんですが、そこで揉めることなくコミカルに描かれてました。

ハルトの実の両親の事情はちょっと複雑だけど、全体的に重くならず、明るくコミカルに描かれてるところがよかったです。ただ、だからというわけではないですが、すごく心に刺さる話ってわけでもなかったですが、楽しく面白く読めたなと思います。

元気で明るい素直な子のウミは大好きまでいかないけど、好感の持てるキャラでした。
これでガミガミうるさいタイプだったりするとあまり好きじゃないんですが。
各話の表紙に描かれるハルトの顔がすごく好きです。
表紙だと丸い目になってないのが多いので。
色気があるカッコよさで、よかったです。

 

以下、ちょっと気になった部分について。

ウミの母は外人さんだったんですが、絵的には普通にキレイな母って感じだったので、その説明が出てくるまで全くわかりませんでした。「えぇ?お母さん外人さんだったの?」って軽く驚きました。
普通、初登場時ぐらいで説明されると思うんですが数話進んでから外人さんって出てきた気がします。

そしてウミはハーフってことになるんですが、ウミは美形な兄ハルトに似てない=ウミは美形じゃないって子供の頃からよく言われていたとか、ウミは平凡な女の子っていう話しか出てこなくて、ウミがハーフって事には一切触れられていなかったのが、ハーフな子が出てきて何もそこを言われないってのは珍しい気がしました。

まあ少女漫画の絵柄なので、顔じゃ外人さんも日本人も区別がつかないような感じです。
最後に出てくるルナのバンドメンバー達はリアルな感じの絵柄で外人さんっぽさが出てましたが、ルナとは顔が全く違います。ルナは少女漫画顔です。

 

ウミもいわゆるハーフっぽさが全く無い顔ですが、美形ではないといっても、ちゃんとそれなりにかわいいですし。ウミの母がハーフな設定は、ハルトがハーフなので、ハルトの目の色が違うのとかをウミがおかしく思わないようにするためなのかな。それ以外に必要性は全く無い気がした。ハーフ話が出てこないから。

ルナが自分の息子がいることを知らなかった事に関して、ヨリコの事情があまり詳しく描かれてないので、突っ込んではいけないとこなのかもしれないけど、ヨリコは両親の死で日本に帰った後、自分が死ぬまでの間に、ヨリコ自身はルナに連絡をしなかったのかな?っていうのが気になりました。

 

ウミの両親がエージェントを通してしか連絡方法がわからず、そのためそこで連絡してもらえなかったって事になったのはわかります。でもヨリコはルナと一緒に暮らしてて、ルナはヨリコの帰りを待っていたってことは、同じところにずっと住んでたとかヨリコが連絡取れるようにしてたんでしょうから、ヨリコはルナの直接の連絡先を知ってたはず、と思うので、なぜヨリコはルナに連絡しなかったの?って思うんです。

子供が生まれたらルナの重荷になると思って身を引いたとか?よくある話だけど、ヨリコは明るい笑顔の人ってルナが言ってたヨリコの人物像には、そういうのがそぐわない気もして。
すごく愛し合ってた二人なら、特別な事情がなければ、子供ができたことを勝手に隠して身を引くなんてしない気がする。

ヨリコがルナに事情を話さずに帰国しちゃったのもちょっと疑問に思いますが、そこは急いでたのでってことにするとしても、その後、ルナに連絡をできない事情は描かれてないので、なぜ?って感じです。
そして親友のウミの母になら、実父がルナって教えてあったなら、連絡先も教えててもおかしくないとも思います。

 

それとヨリコはまだ売れてないルナと一緒にいたんですよね。
ヨリコが帰国して亡くなるまで、長くても1年半だと思うので(ハルトが生まれて亡くなるまでを考えると)、その間にルナは売れて、エージェントに連絡通してもらえないくらいになっちゃったの?
それとも、売れてない頃から一緒にいて、ヨリコと一緒にいる間に、ルナは既に売れてたのかな?
それとルナがヨリコの消息を調べた時に、息子を生んでることも一緒にわからなかったの?とも思います。

ルナがヨリコに似たハルトの存在を知って、素性調査を頼むと、萩原家の養子とか実母の名前がヨリコだとかまでわかっちゃうのは、なんか大スターだし金に糸目はつけず調査機関を使えるんだろうけど、戸籍見ないとわからなそうな事までわかっちゃうもんなのかなと、この時は詳しくわかっちゃって、その前はわからなかったのが疑問です。本人とか親族と偽って戸籍を取得したりしてるのかな。

 

あと、最後に出てくるルナのボイストレーナーが30年来お世話になってるってことなんだけど、ルナって今39才で、9才くらいからボイストレーナーにレッスン受けてたの?別におかしくはないのかもだけど。

ハルトの事情がちょっと複雑なわりに設定が雑だなと思いました。
あまり突っ込んで考えちゃダメなとこで、だから詳しく出てこなくてさらっとしか説明されないのかもしれませんが、読んでて「ん?」って気になっちゃったんです。

でもルナはヨリコとの事を生涯唯一度の恋だと思っていて、二人はとても愛し合っていたというところはすごく好きなので、そんな二人なのに離れることになってしまったヨリコの事情は、離れざるを得なかった事情をちゃんと考えておいてほしかったなと思いました。

それと最初にルナとハルトが会ったのは、ウミが日本を案内してあげてた「おじさん」がルナで、もう一度会いたいと連れてこられたウミと一緒に来たハルトの方に、初対面なのにハグしちゃって「ヨリコ」って言っちゃったという出会い方でした。
この時点で、ヨリコに似てると思ってハルトの方にハグしちゃったんだと思うけど、ここではハグはしたものの、そのままハルトについては何も追求しないまま。

 

後でウミがルナに送った写メに一緒に写っていたハルトの写真に反応して、この男の子の事を調べてと自分のエージェントに依頼します。
最初にハグした時に既に気付いてたっぽいのに、なぜこの時はハグだけで終わっちゃってるの?
なんで、写メの方に反応してるの?え?さっき直接会ったじゃん。その時はなぜ?って結構疑問でした。

最後に時がどんどん進んでその後が描かれるのって、その後が見れて嬉しい反面、駆け足にざっくりしか描かれないので、切なくなってしまうことが多いです。
ハルトと離れていた期間をざっくり飛ばしちゃうのはいいけど、再会後はもうちょっと描いてほしかったなぁ。

コミックの試し読みはコチラ 全7巻