小説「姫の華麗なる奴隷生活」著者:宇津田 晴 イラスト:高星麻子 感想


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15年前に行方不明になっていた王女アメリアが傭兵に育てられていて、現国王の兄と再会。
帝国への貢物の大使となって帝国に乗り込む。大使とは名ばかりの奴隷扱いをされる制度で、皇帝や皇子たちが気に入った大使を選ぶ。
残忍な死神皇子と呼ばれるウィリアムの大使となったアメリアは、ウィリアムが自分と同じ野望を持つことを知り、手を組んで、打倒帝国を目指す。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

最初に書いたあらすじが、ほぼ大部分のストーリー。
ピッコマで無料で読めるところまで、だいたい全体の4/5を読んでの感想です。
読書メーターの感想を見ると、結局、帝国を打倒するとか政権交代までは描かれていないらしいので、どうせ中途半端に終ってるなら、最後まで読まなくてもいいかなと思いました。

15年前、王国が帝国に攻め込まれた時に赤ん坊だったアメリアは、川に流して逃がされ、傭兵のタイガー達に拾われ、育てられた。アメリアは「金目の子虎」という二つ名がつくほどの立派な傭兵になっていて、戦闘能力は高いが、頭脳戦は苦手なちょっとおバカさん気味のかわいい女の子。

帝国の皇子ウィリアムは、冤罪で皇位継承権を奪われているけど、皇帝に殺されないため、皇位には興味がない、死神皇子と呼ばれる戦闘好きで残忍な性格というフリをして、皇帝を倒すことを狙っている。
戦闘能力が高く、頭もよく、美形でカッコいい。

 

というメインの二人のキャラは好みなんですが、設定とかに、結構ツッコミどころがあって、お話としては、ちょっとイマイチでした。
この二人の絡みのとこはおもしろかったですけど。

まず、帝国が、属国から大使という名で、見目麗しい姫や娘を貢物として差し出すように要求し、実際は大使じゃなく、首輪をつけられ、皇帝や皇子たちの身の回りの世話、夜の相手をさせられ、暴力も含めて彼らの好きなように扱われてしまう奴隷のような存在にされてしまう制度が、鬼畜すぎて引く。
しかも大使は数年で死んでしまうことが多いらしく、アメリアの母や姉二人も大使として送られ、既に亡くなっていて、遺体も戻ってきていないらしい。
大使を送っていない状態だと、その国に帝国が、いろんな嫌がらせをしてくるらしい。

王族の女性を奴隷扱いして、しかも数年で死ぬような目に遭わせるって、そんなバカなって感じの制度って、そんなことするくらいなら、属国じゃなくてもう併合されて帝国の一部になる方がマシじゃないの?って思ってしまったんだけど。周りの国々は結託して帝国を倒そうとしないのかな。
王族なんて、プライド高く育てられた女性が、国のためとはいえ、そんな屈辱的なことに耐えられるのかなぁ。
アメリアの姉の一人は、皇子の子を妊娠したことがわかって自殺したらしいけど。
その前にもう、王族として育てられたような人だったら、死んだ方がマシってなりそうなんだけど。

 

アメリアの養父のタイガーが、読んだ所まででは明らかになってないけど、実は元貴族なんじゃないかって感じの人で、ウィリアムと同じくらい強くて頭も良くてな人で、タイガーを含むアメリアのいた傭兵団の人たちも仲間になります。

タイガーたちも含めて、キャラはみんな結構いいキャラで、おもしろいので、彼らの絡みは面白いです。

でも、ウィリアムが、自分の母親を殺した罪をきせられ、皇位継承権を剥奪されていて、それを冤罪だと証明して、皇位継承権を取り戻そうとするんですが、皇位継承権を取り戻す必要あるの?って思っちゃったんですよね。

 

皇帝は大使制度を作ったような、性格のおかしい残忍な人なので、帝国を打倒するには、クーデターみたいな事でしか無理だと思います。皇位継承権を持ったとしたって、皇帝が生きているうちに位を譲るような人じゃないだろうから。
まさか皇帝が死ぬのを待って、皇位を継承するつもりなわけじゃないよね。
順当に待ったら、あと何十年かってことになるだろうし。

あの皇帝は殺さなきゃ無理だと思うので、そしたら皇位継承権を回復する必要なんてある?
皇位継承権を回復してできるようになることが何かあって、それを使って打倒皇帝の準備を進めるってことなのかな?
でも今までだって、皇位継承権がないおかげで生き延びてきて、今ある程度、軍部とかを掌握できたから、行動を起こしたってことっぽいけど、だったらもうそれでよくないか?
皇位継承権を回復したら、皇帝の警戒心をまた強めちゃうよね。
やりにくくなるんじゃ?

 

と、思うので、皇位継承権を回復する意義があると思えない。
どうせクーデターじゃないと政権交代なんて無理だろうから、必要ないんじゃないの?って思いました。
私が読んでない部分で、その必要な理由が書かれているかもしれませんが。

アメリアとウィリアムの恋の部分は、アメリアが初心で単純なかわいいやつなので、ウィリアムをだんだん好きになって、ドキドキしちゃって、みたいな感じです。
ウィリアムは賢いできる奴なので、落ち着いてて、アメリアを気に入っていくと、溺愛、独占欲って感じになっていくのが、いいです。
この二人の感じは好きですが、私が読んだ所まででは、はっきり恋人同士にはなりません。

2015年に書籍が出て、続きが出てないので、たぶんもう続きは出ないんじゃないかな。
キャラはいいけど、やっぱりストーリーというか設定がちょっとイマイチで続けられなかったんじゃ?と思ってしまいました。