小説「意地悪な彼ととろ甘オフィス」作者:pinori 感想


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幼馴染の男女のこじれた恋愛模様。
完結。ピッコマの話数で全20話。
無料で読める番外編以外を読んでの感想。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

主人公は、大手自動車メーカーに入社3年目の日向明日香25歳。同じ会社で女子社員にも大人気のイケメン成瀬響哉は、明日香の家のお隣さんで幼稚園の頃からの幼馴染で子供の頃は仲が良かったが、中学の頃から疎遠になり、響哉はいつも明日香に冷たい態度をとったり嫌味なことを言ってくる。

明日香と響哉は同じ年で、幼稚園から大学までずっと一緒、会社も同じで、響哉は本社勤務、明日香は支社勤務だったが、半年の期限付きで、営業支援のために出向してきている。
女性社員からの誘いの飲み会にはなかなか出席しないらしい響哉が、明日香のいる総務部の先輩が声をかけた親睦会と言う名の合コンに参加するから明日香も参加するように言われる。

 

明日香は響哉と一緒の飲み会に参加するのは気まずかったので、仕事を理由に断るが、参加できるようにと先輩が手伝ってくれてしまったので、やむを得ず参加することになる。

中学の頃、体育祭で注目を浴びた響哉が女子にもてるようになり、仲がいい明日香が響哉との関係を問われる呼び出しを何度もくらうようになったため、明日香は響哉に自分たちはただの幼馴染だと響哉からも言ってほしいと頼む。
それで呼び出しはなくなったものの、それ以降、響哉は明日香にそっけなくなり無視したりするようになって響哉の態度が急変し、話もしなくなってしまったのが中3の春。
響哉が明日香に冷たくなって1年近く経った頃に明日香は響哉への恋心を自覚し、バレンタインデーにチョコを渡して告白することを決意する。

学校の先生がみんなに配ったチョコを響哉が都合悪く受け取れなかったため、響哉の分のチョコを明日香は預かっており、先生のチョコと自分のチョコを持って、まず先生のチョコの説明をして自分のチョコを渡そうとしたところ、「いらない」と受取拒否される。
「なんで?」と聞くと「そんなの自分で考えろよ、最悪」と言われる。

明日香は自分のチョコだけでなく、先生のチョコさえも私からは受け取りたくないのか、それほど私のことが嫌いなのかと、酷くショックを受け、「最悪」などという酷い言葉で振られた思い出になる。
その後も、たびたび響哉からは冷たいことを言われ、明日香は傷つき続けてきたが、それでも明日香は今でも響哉の事が好きだった。

 

合コンの後、明日香は2次会には参加せず帰ろうとして、合コンで隣に座った山下に送ると言われたが、いつのまにかすぐ近くにいた響哉が割って入って、響哉が隣の家だから送ると申し出て山下を遮る。
響哉は明日香が会社の飲み会で一緒になるといつも同じように、他の男性が送ろうとする時に割って入ってきていた。以前、「あいつに日向さんは全然似合ってない」と言われ、明日香は響哉が自分の恋路を邪魔する嫌がらせをしているんだと理解していた。

特に会話もなく家まで送られ、振り返ると響哉は自分の家に入らず来た道を戻っていく。飲み会に戻るのかと思い、それなら送らなくてもよかったのにと明日香は思うが、家に入ってしばらく経って自分の部屋から外を見ると、きれいな女性と一緒に帰ってきた響哉を見かける。
響哉が家に入った後、その女性に手招きされ、恐る恐る降りていくと、その女性は身体は男、心は女のオネエの寧々で、響哉が飲みに行っていたバーのマスターとのこと。そしていつも響哉が明日香の事で、つぶれるほど飲んで悪酔いするので、気になって呼んだという。

 

明日香は響哉に中3のバレンタインに振られているし、ずっと冷たい態度をとられているので、響哉が自分の事で悩んでいるはずがないと言うが、寧々は、二人がすれ違ってこじれてる気がすると言い、今度店に遊びに来てと名刺を渡される。

この後、会社で、響哉にアプローチをかけてる総務部の女性との出来事等を挟み、明日香が寧々の店に行き、カクテル2杯で酔っ払って、響哉への気持ちの本心を語っているのを、おそらく寧々に呼び出された響哉が聞いていて、バレンタインの明日香の告白は響哉には伝わっていなかった事がわかる。
響哉は明日香が先生のチョコを渡そうとした事しか気付いていなかった。

酔っ払った明日香を響哉が家まで送っていき、親が留守の明日香の家で、響哉は明日香のことがずっと好きだったという自分の気持を告白する。
響哉は明日香が自覚するよりずっと前の、たぶん物心がつく前から明日香のことが好きで、両思いだと思っていたのに、明日香に中学の時にただの幼馴染と言われたのがショックで、どう接していいかわからなくなり、距離ができてしまったらしい。

誤解が解け、お互い両思いだということがわかって、二人は付き合うことになる。
その後、バレンタインに、寧々には洋酒入りの高いチョコを、響哉には中3の時に渡そうとした手作りチョコを作って渡すが、響哉が寧々にやきもちをやくエピソードが入りつつ、本編はここでハッピーエンド。

 


響哉が本当は明日香のことが好きなんだろうなーというのは、最初の方からだいたい察せられます。
それっぽい態度はあまりとってないけど。
でもその割に、言うことがキツかったりするのが、もういい大人の25歳なわりに、酷いなぁと思いました。
長い片思いをこじらせちゃったってことみたいだけど、響哉の方からは、中2で明日香の幼馴染発言にショックを受けた後、自分は恋愛感情を持ってるんだってことをちっとも明日香に伝えずに意地悪な事を言ったりするだけなのが、ヘタレすぎるなと思いました。

中学の頃はまだしょうがないとしよう。
両思いじゃなかった事にショックを受けて、離れてしまうのも仕方ないだろう。
でも、その後ずーっと同じ学校で、会社も一緒で、さりげなく気付いた時は明日香を助けたり恋の邪魔をしたりしていたらしいので、ずっとそれなりに近くにいたんなら、告白のチャンスはいくらでもあったはず。

 

中学の頃は動揺して変な態度になってしまっても、その後、他の子と好きじゃなくても付き合った経験はあるようだし、それくらいなら、自分の気持を明日香に伝えてない事や、明日香にあの時は幼馴染と言われたけど、なんといってもまだ中学生だし、気持ちが変わって恋愛感情を持つかもということに気付いてもおかしくないはず。

響哉は明日香に冷たい態度をとっていたけど、明日香は違ってたようだし、明日香の告白は気付かなかったにしても、明日香が響哉を嫌ってるわけじゃないっていうのを明日香の態度から感じられなかったんだろうか。
はっきりした言葉が中学の時の幼馴染発言だけで、それだけで、全く自分からアプローチしないで、逆に冷たい態度になってるだけの響哉が、よくわからない。

明日香は響哉に助けられたり家まで送られたり等のたまに見せる優しさに、もしかして自分のことを好きになってくれたのかもと何度も期待している。それと同じように響哉が感じることはなかったんだろうか?
響哉は冷たい態度をとってたから、明日香は何度も期待して諦めるを繰り返す事になってしまったけど、明日香は冷たい態度をとってたわけじゃないから、明日香は響哉を好きになったのかもと思わなかったんだろうか?

中学生の頃の幼馴染発言だけで、ずっと近くにいるくせに自分の気持を伝えもしない響哉がヘタレすぎる。

 

そして、もっと響哉はどう思っていたのか、っていうのを描いてほしかった。
幼馴染発言にショックを受けたからって、なぜそんなに嫌味ばかり言うようになってしまったままなのかってところとか。先生のチョコを明日香が渡すことを怒って最悪っていうのも、なんで怒るのかいまいちわからない。
友達から預かった響哉へのチョコを代わりに渡されたっていうなら怒るのはわかる。
でも、学校の先生がみんなに配ったチョコだよ。
それでも女友達からのと同じ理由で怒ったってこと?

それと、響哉も明日香も、他の人とお付き合い経験があるらしいのも、「ふーん、そうなんだ・・・」って感じで、なんかなぁと思ってしまった。
明日香の方は、忘れられないとはいえ、一度ハッキリ振られている、と思っているから、他の人と、って考えるのはわかる。
でも響哉の方は、ずっと明日香の近くにいて冷たい態度をとりつつも、明日香を助けたり恋の邪魔をしたり、ずーっと明日香の動向を見ていたようなのに、それで、他の人と付き合ったりするの?って思った。

 

響哉の気持ちの描写があまりないまま終わってしまったのが、結構物足りなさを感じました。

こういう、好きなのにつれなくされる話が嫌だけど、気になって読んでしまう事が多く、嫌だけど好きなのかなと自分で思ったりしてます。ただそれは実はこう思ってたんだ、っていう種明かしとか和解がしっかりないと消化不良で終わってしまって、物足りなさを感じてしまいます。

響哉は明日香の告白(チョコ)に気付いてなかったっていう、それだけなの?って思いました。
冷たい態度で傷つけた自覚はあるって言ってるだけで、そんなにひどい態度をとり続けた理由の説明がないのが、残念。
全体の分量も他の似た感じの小説に比べて少なめなんですけど、響哉の説明ほしかったなぁ。
番外編にあるのかなぁ・・?
「甘く意地悪に」というタイトルなので、番外編は両思いになった二人の甘々なエピソードなのかなと思いますが。

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