漫画「ひばりの朝」ヤマシタトモコ 感想


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中学2年生にしては色気のある肉感的な体つきをしている手島日波里(てしまひばり)と、彼女に関わりを持った人たちの人間模様。

ヤマシタトモコさんの「さんかく窓の外側は夜」が好きで、ピッコマで「ひばりの朝」が期間限定で全話「待てば無料」で読めたので、読んでみましたが、わかったようなわからないような・・・というのが正直な感想です。
おそらく刺さる人には刺さるのかもと思いますが、私の心には刺さりませんでした。
最後もどうなったのか、はっきり描かれないので、もやもやする読後感でした。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

ヒバリは実年齢よりも上に見えるような、女らしい色気のある体つきをしているけど、中身は特にませているわけじゃない、年相応の女の子。
けれど周りからそういう目で見られてしまい、ヒバリはおとなしい子なので、ヒソヒソ話されている事に何も言わないので、小学生の中程から(おそらく体が肉感的に発育してきた頃から)、同級生から浮いた存在になっていて友達もいない。

クラスの女子でミチカだけがヒバリに話しかけたりしていて、優しい子と思われているが、ミチカの内面は全く違う。ただの当てずっぽうで、悩みがあるんでしょ、親友だから話を聞くよ、等と言って、ヒバリが父親から性的虐待っぽいことをされている話を聞くと、「人の不幸は蜜の味」、超楽しいと思って、嬉しくなる。

その話を友人にしてしまうとすぐに噂話が広まり、ヒバリも噂されていることを知ってしまう。
それを聞いたヒバリがクラスから飛び出すとミチカは追いかけるが、自分は言ってないと言い訳し、ヒバリを心配する素振りをしながら、心の中では、これでヒバリがショックを受けてもう学校に来なくなればいいのにと思っている。

この時の心の声で、ミチカはヒバリの事を「調子に乗ってる」とも思っているようで、美人なミチカは色気のあるヒバリの容姿を敵視している部分があって、蹴落としたいと思ってたってことなんだろう。

 

翌日、普通に学校に来ているヒバリにミチカはがっかりする。
一緒の下校途中、電車の中でミチカは痴漢に会い、スカートの中に手を入れられるような痴漢行為に怖くなって行動を起こせず、携帯でヒバリに助けを求めるが、ヒバリは何もしない。
フッと笑った表情のヒバリにミチカは「ミツのアジ」と思っているのは、ヒバリがミチカの不幸な状況を喜んでいると思ったってことなのかな。

後に、なぜ助けてくれなかったのかとなじられて、自分も怖くて何もできなかったとヒバリは言うけど、本当にそうだったのか、ミチカが人に話した事を察して、似たような目に遭っているミチカを見て笑っていたんだろうか。それともミチカにはそう見えただけ、なんだろうか。

父親からの性的虐待のような事の話は、ミチカにしかしていないのに、私は言ってないとミチカが言うことを、よくわからないとヒバリは言っていて、はっきりと糾弾したりしない。
この後、ミチカは10日程続けて学校を休むが、これが彼女にとってどういう変化をもたらしたのかも、いまひとつよくわからなかった。
あとはもう卒業の時に、挨拶程度の会話をするだけ。

 

ヒバリと小学校の頃から一緒の相川という男の子がいて、ヒバリに好意を持っているが、ヒバリがクラスで浮いた存在なので、その事は人には言わないことにしていた。
ヒバリが大人の男性(憲人)と親しくしているのを見て、触発されてか、コンビニでヒバリに「好きかも」と曖昧な告白をするが、「何も知らないのに好きかもなんていらない」と拒絶されてしまう。
「何を知っていれば好きでいていいのか」と思う相川。

その後、クラスの中でもヒバリを擁護する態度をとり、ヒバリと一緒に帰ったりする。
学校帰り、ヒバリの家の前で、ヒバリの母のイトコの男(完)が、ヒバリの父親の性的虐待の噂を聞いて、そんなことあるわけないよな?と無神経に確認しに来た時に、相川はヒバリの肩を持つ発言をしていたと思ったけど、これ以降、相川はフェードアウトしてしまう。

ヒバリを助けたいと言っていたのに、相川はどうしてしまったのか、というのもよくわからなかった。
いい感じにヒバリと距離を縮めて仲良くなってきてたと思ったのに・・・。
相川が離れていってしまうような出来事あったっけ?
しばらく経って、相川が後輩の女子から告白されているのを見かけるだけで相川の話は終わる。

 

ヒバリの父親がしゃべるシーンはほとんどなく、ヒバリの父親がどう思っていたのかは出てこない。
性的虐待のような事は、ヒバリが寝ている部屋のドアを開けじーっと見ていたり、ヒバリがお風呂に入っている時によく洗面所を使っていたり、というもので、決定的にはっきり性的虐待だという何かをされてしまっているわけではない。
だから大したことないというわけじゃなく、決定的なことをされてない点はよかったなと思った。
そういうのを見たくないから。
でも本人が不快さや戸惑いを感じているなら、視線だけだとしたって、おそらく父親はそういう目で見てるってことなんだろうと思うし、そんな中で生活しないといけないのは嫌なことだろうと思う。

ヒバリが母親のイトコの完のところに行きたがったのは、そんな父親と一緒に過ごす時間を減らしたかったんじゃないだろうか。

完は、「おれはいつも大切なことを見逃す」と何度もモノローグで言う。
大学生の頃から7年付き合っている富子という彼女がいる。完は、ヒバリが自分に好意を持っているだろうと思っていて、タイプが逆な二人の女と付き合えたら楽しそうだと、呑気に考えていたりする。
富子は細身で体つきはヒバリと逆で肉感的ではなく、イケメン、男前などと言われたりしていて、自分が女としての価値があるかという事を気にしていて、美形なのに自己評価が低い。
そのため、初めて自分を女としてみてくれた完と付き合い、そのままずっと交際を続けている。

 

二人の大学からの友人、憲人(けんと)は、富子の事が好きだったし今も好きで、なぜ富子は完なんかと付き合ってるのかと思っている。そのせいでか、心の中ではミチカと似た感じで、「全員死ね」ってしょっちゅう思っている。

完は無神経なやつで、本人が「おれはいつも大切なことを見逃す」と自覚しているとおり、他人の心の機微を感じ取る事がよくできないんだろう。
富子は完に処女をあげたのに、富子にとってはそれは大きな出来事なのに、富子はそれを完に「そーだっけ」と言われて、なぜ自分は完とつきあってるのか、という疑問に気付いてしまう。
自分に初めて女として価値があると言ってくれた男で、完と別れたら次があるかわからないから、嫌われたくないと思ってたけど、好きだったっけ?という疑問。

憲人がヒバリと知り合って、話を聞いているうちに、性的虐待のような話を聞いたり、富子もヒバリと同じ学校の制服を来た女の子(ミチカ)が、ヒバリという名前を出して父親からの性的虐待のような話をしているのを聞いたり、ということがあって、憲人は何かしないとと思うが、結局彼らは何をしていいかわからず、何もしない。

 

富子は、この話を完にして、ヒバリにもそれを匂わせる事を聞き、その時のヒバリの反応で本当なんだと確信するが、完は父親が娘に性的虐待なんてするはずがないと思っていて、全く話が通じない。
私は何もしないけど、完が何もしないままヒバリに何かあった時、完はきっと後悔するだろうというようなことを完に言って、富子は完のもとを去る。

完は気にはなったのか、ヒバリの家に行って、ヒバリの父親に話しをしに行くが、「そんなことあるわけないよね?」という、ないこと前提の確認の仕方で、あったとしても当事者の父親を目の前にして、言えるわけがないだろうという、無神経なシチュエーションでの完の言動に呆れる。

今時、児童虐待は一般的に知られているだろうと思うのに、親は子供をかわいいと思うはずだから、虐待なんてあるはずがないという完の考え方に驚くし呆れる。
あるはずがないという程に思っている人に、考えを改めさせるには相当な労力を必要とするので、完を好きじゃない事に気付いた富子はそんなことしないし、中学生で当事者のヒバリにも無理だから、完は勘違い野郎のままだ。

 

憲人の言動から、富子は憲人が富子を女として見ているということを知る。
そして最終話で、高校生になったヒバリと富子が再会し、富子が完と別れ、憲人と付き合っているということがわかり、よかったなと思った。
完は富子を本気で愛してないだろうことは見て取れたし、憲人は自分の方が富子の事を好きなのにって思ってるんだろうな、そしてほんとにそうなんだろうな、それがちょっと歪んで変な考え方になってたけど(死ねって思っちゃうとか)、憲人と一緒になった方が幸せになれそうだなと思っていたから。

この作品に出てきた人たちの中で、憲人と富子が付き合うことになったというのが、唯一ちゃんとした行方が見れた人たちという気がした。

ヒバリの母親は、昔早熟だった女女した感じの女性で(見た目はキレイめなオバちゃん)、ヒバリも自分と同じ早熟なタイプだと思っていて、体だけで中身は年相応だということを理解していない。
ヒバリの担任の先生の方が、ヒバリが体だけで中身は年相応だということをわかってる。
でもこの担任の先生も、よく見えているようなのに、何もしようとはしない。

 

結局、ヒバリの状況は何も変わらない。
ヒバリは息を止めて、いろいろな嫌なことをやり過ごして生きていく。

高校生くらいになれば、ヒバリの肉感的な体もそれほど目立つ存在ではなくなるんじゃないだろうかと思ったけど、特に変わらずあっという間に過ぎる。
そして、最後、ヒバリは母親に高校の卒業式の日を、1日遅れの日付を教え、本当の卒業式の日の朝、家を出て、そのまま帰ってこない、学校にも行っていないというのがわかる状況で話が終わる。

 

タイトルの「ひばりの朝」とはこの卒業式の日の朝、ひばりが家を出た朝のことを指しているんだろうと思う。
ひばりはどうしたのか?
自殺したか、家出したか、なんだと思うけど、そのどっちなのかとはっきり言えるほど私はこの作品を理解していない。

自殺を考えていて、卒業まで耐えようと思うだろうか?と思う。
でも、家を出て一人で生きていくんだとしても、荷物が何もないなとか、あまりそれをはっきりうかがわせるほどの描写もないので、なんともいえない気がしてしまう。
アルバイトするのに、高校の卒業証明とかは必要ないと思うけど(?)、必要になった時のために、一応、卒業するまでは学校に行って、ってことなんだろうか。
まあ耐えられるなら高校卒業はきちんと認められるように通っておいた方が、将来を考えたらいいには違いない。
事前に泊まる所、住む所、働くところの目星をつけておいて、お金を用意しておけば荷物はなくてもどうとでもなるし、できないわけじゃないなと思う。

だから、そうあってほしいという気持ちで、私は、ヒバリは高校を卒業するまでは我慢して家を出て一人で生きていくことにしたんだろうと思っている。
最初に読み終わった時は、どっちだろう?という気持ちだったが、今は自殺はしてないだろうという気持ちのほうが強い。他の人の感想を探してみると生きているはずがないと思っている人もいた。でも私はそう思わない。
やっぱり死のうと思うヒバリが卒業を待つ意味はないと思うから。

 

あらすじから、「さんかく窓の外側は夜」と全く違う話なのはわかっていたけど、ほんとに全く違ったなと思いました。「さんかく窓の外側は夜」はおもしろいけど、「ひばりの朝」はおもしろい、とまでは感じません。
結局なんだったのか、っていうのが、私にはよくわからないところが多かったからです。

ミチカは、痴漢された後どうなったのか。心境の変化があったのか。
相川が一番よくわからないんだけど、なぜヒバリから離れてしまったのか。

「センコウガール」で、理解のない親や周りの友人に耐えられず自殺してしまった女の子が出てきましたが、高校生で、あと数年我慢すれば、家を出て一人で生きていく事もできただろうにと思ったことがあって、ヒバリの場合は、私がそうできればよかったのにと思っていた「卒業まで我慢して家を出る」って事をやったってことなんだな、と思いました。

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