小説「仮面伯爵は黒水晶の花嫁に恋をする」作:小桜けい 画:氷堂れん 感想

 

領地を立て直した子爵の娘が、後妻の義母と婚約者に騙されて、爵位継承権を奪われ、異母妹に婚約者も奪われて、変わり者と名高く常に仮面をつけた伯爵に金で売られて結婚させられる。
しかし噂と違って仮面の伯爵は優しくて・・。

ピッコマにて。完結。
有料話分は全部は読んでません。一部読みました。
ジャンルはTLで、Hシーンの描写も何箇所かあります。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

 

 

クリスタの生い立ち、婚約破棄まで

フェルミ子爵家の長女クリスタは、10才の時に母を亡くした。

母が亡くなってすぐに父は妾だったデボラを後妻に迎え、2歳年下の異母妹ステファニアも家族に加わった。
後妻デボラはステファニアだけをかわいがり、クリスタには辛く当たったが、父はデボラの言いなりで、クリスタが虐められるのを見て見ぬふりだった。

デボラとステファニアは贅沢や豪遊をして、家の財産に見合わない浪費をしたため、借金がどんどんかさみ、家は破産寸前になった。
父は、借金に追われる事から逃避するためか酒に溺れていき、領地経営もまともにしなくなっていった。

クリスタが父に領地に目を向けるように懇願しても疎まれ殴られた。

クリスタが15の時に父は酒毒で倒れ、一命はとりとめたが意識ははっきりせず、領主代理をデボラと争ってクリスタが務めることになった。
父は婿養子で、クリスタの母が爵位を継ぐ血筋だったため。

クリスタは数年かけて領地の立て直しに成功する。

クリスタの真面目で懸命な姿に、クリスタは領民にも慕われている。
しかしやっと領地が立て直せると目処が立ったタイミングで、クリスタの婚約者ミケーレとデボラに全てを奪われる。

ミケーレは次男で、クリスタの家に婿に入り結婚する予定だった。

ミケーレはクリスタに時々、領地経営に関する書類を見せてもらっていて、それでクリスタが領地立て直しに成功するタイミングを見計らっていたのだった。

ステファニアがミケーレの子供を身籠ったから、ミケーレとステファニアを結婚させたいといわれ、クリスタはショックを受けたが、そうなってしまっては仕方ないと子供のことも考えて婚約破棄に応じた。

しかし、クリスタの知らないうちに、ミケーレとの結婚がフェルミ家を継ぐ条件に変えられており、クリスタは爵位の継承権も奪われてしまっていた。

父が物事があまりわからなくなっているのをいいことに、父にサインをさせ、領主印も押された正式な書類を作られてしまっていたのだった。

そして更には、人嫌いの変わり者と名高いベルヴェルグ辺境伯との結婚も決められており、婚約破棄と継承権を奪われた翌日には屋敷を出て嫁ぎ先に行くように言われた。

ベルヴェルグ伯の条件は、侍女を連れずに単身で来る事、待遇に一切の文句を言わない事、結婚式はあげない、その代りに、フェルミ領に毎年資金援助をするというもの。

クリスタは、自分が去った後に召使い達に理不尽な仕打ちをしない事、領地の税率を挙げないことを証書にサインして約束すれば言うことを聞くと言って、デボラにそれを認めさせ、屋敷を去ることを決めた。

使用人達はクリスタを慕っており、デボラ達の仕打ちに憤慨してくれたが立場上何もできず、惜しまれながらクリスタはベルヴェルグ伯の元へ旅立つ。

 

 

ベルヴェルグ伯の元へ

クリスタは子供の頃からデボラに容姿をけなされてきていたので、自分の容姿に自信がない。

また子供の頃からミケーレとの婚約が決まっていたので、婚約者がいるからと理由をつけられて社交界デビューもしていなかった。

そのため、他人から見て自分の容姿をどう評価されるのかという事がわかっておらず、侍女に容姿を褒められてもお世辞だと思っていたし、自分の容姿は妹は比較にならない程たいしたものではないと思いこんでいた。

だが、ステファニアはかわいい系、クリスタは美人系で系統が違うだけで、実はクリスタの容姿は良かった。

ベルヴェルグ伯の屋敷へ身一つで行くと、門番にあまりに美人な女性が来て驚かれるほど、クリスタは美人だった。
ベルヴェルグ伯の出迎えはなかったものの、執事や他の召使い達はクリスタを驚くほど歓迎してくれた。

そしてベルヴェルグ伯は使用人達に慕われており、仮面をずっとつけているのは事実だったが、使用人達から聞いた話では嫌な人物ではなく、むしろいい人であるようだった。

またクリスタが自分の使用人を連れて来ないように言われたのは、ベルヴェルグ伯の仮面の事情があるため、興味本位で知ろうとしない信頼の置ける人物でないといけないからなので、理解してほしいとも言われた。

ずっと姿を見せなかったベルヴェルグ伯だが、夜になってクリスタの部屋を訪れ、改めて結婚の条件について説明され、跡継ぎがほしいだけなので、愛情は期待しないでほしい、伯爵夫人としての仕事もしなくて構わない、等と言われる。

そして、クリスタがそれを承諾すると、仮面を取ろうとしないようにと手を縛られて、ベルヴェルグ伯=ジェラルドはクリスタを抱く。

少し荒々しかったがクリスタが初めてだと知ると動揺して慌てた様子で薬を取りに行き、痛みが軽減されるようにと最初に軟膏?を塗ってくれる等、気遣いもみせてくれた。

 

 

ジェラルドの秘密

ジェラルドは、実は宝石人と呼ばれる、額に宝石が埋め込まれた状態で生まれてきた人だった。

この辺りでは、宝石人の話は伝説のような形で知られており、今ではおとぎ話のようにも思われているが、昔は何人かの宝石人が実際にいた。

けれども、宝石目当てで捕らえられ、無理矢理宝石を外されて死んでしまったり、監禁されたりして悲惨な末路を辿る人が多く、宝石人は絶えてしまったと思われていた。

ジェラルドの両親は普通の人だったが、宝石を身体に持って生まれたジェラルドのために、宝石人に関する情報をかき集め、子供の頃から仮面をつけさせて宝石人である事を隠して育てた。

宝石人は5年毎に自然に宝石が外れ、新しい宝石と入れ替わる。

ジェラルドにはダンテという執事がいるが、ダンテの家は代々ベルヴェルグ家の執事を務めていて、ダンテも子供の頃からジェラルドの友達兼世話役をしていた。

ジェラルドは両親に愛された育ったが、小さい子供には仮面は邪魔で常につけていなければいけない必要性は理解できなかった。

ジェラルドの5才の誕生会の時、屋敷を抜け出して外に出て、一人の旅人に出会って仲良く話をした。
旅人は人の良い男だった。

途中でジェラルドは額が痛くなり、仮面を外したくてたまらなくなり、仮面についていた金具を宝石人の能力で操って外してしまい、仮面を外すと、額の宝石が外れた。

ちょうどジェラルドの宝石が入れ替わるタイミングだったのだ。

それを見た旅人はジェラルドが宝石人であることを察して、それまでの人の良さを一変させ、一緒についてきていたダンテを木の棒で殴り、ジェラルドを縛ってさらって行こうとした。

殴り飛ばされていたダンテが旅人の喉を短剣で切りつけ、息の根を止めて、ジェラルドに仮面をつけさせた後に気を失った。

ジェラルド達がいなくなった事に気付いた両親がジェラルドを探させていたので、すぐに人が駆けつけた。

ジェラルドに大きなケガはなく、ダンテはしばらく入院したが無事だった。旅人はベルヴェルグ伯の息子を誘拐しようとした者として身元も死因も深くは追求されないまま処理された。

この出来事により、ジェラルドは自分がどれほど人の欲望を刺激する危険な存在か、両親の心配は過剰ではなかったのだということを思い知り、もう二度と他人の前では仮面をとるまいと誓った。

両親とダンテの父は数年前に事故で亡くなり、ジェラルドの出産に立ち会った産婆や医師は老齢で既に亡くなっているので、ジェラルドが宝石人であることを知るのは今はダンテのみ。

 

 

クリスタと結婚した理由 両思いへ

幼い時の事件のせいで、なかなか他人に仮面の下の素顔を見せる程の信頼を寄せることができなかった。
そのため、妻を迎えることも難しいだろうと思っており、半ば諦めていた。

クリスタを妻に迎えることになったのは、ジェラルドがある時に冗談半分で言ったことを聞いた貴族がデボラに話を伝えてまとまってしまったもので、ジェラルドが本気で妻を探していたわけではなかった。

クリスタとの初夜の時に改めて条件を提示したのも、クリスタに断らせるつもりで酷い条件を突きつけたつもりでいたので、承諾されてうろたえていた。

また、クリスタは社交界デビューをしていなかったので、社交界でクリスタの存在を知っている人はほとんどおらず、フェルミ家の娘といえばステファニアの事だったので、ジェラルドはステファニアの男と遊んでいるという話をクリスタの事だと勘違いしていた。

そのため、遊んでいる女ならば、そういう扱いをしてもいいだろうと思っていたので、クリスタが初めてだと知って混乱した。

初夜の後、ジェラルドはクリスタと接した様子から聞いていた人物像がだいぶ異なっていたので、ダンテに調査させ、ジェラルドが思っていた人物とは別の娘だということ、クリスタがフェルミ領を立て直した後に後妻のデボラに追い出された事などの事情を全て把握した。

ジェラルドは初夜でクリスタを抱く前の時点で、何かがおかしい事に気付いていたが、クリスタに一目惚れしてしまい、クリスタを手放したくない抱きたい欲望の方が勝ってしまったのだ。

だがジェラルドはクリスタを抱いたのは最初の晩だけで、その後は、もう許可なくクリスタに触れないと誓い、食事を共にしたり、散歩をしたりして、クリスタと語らう時間を多くとり、徐々にクリスタと親しくなるよう努めた。

クリスタは跡継ぎのための結婚と聞いていたのに夜を共にしないジェラルドに戸惑いつつも、徐々にジェラルドにひかれていった。

ジェラルドはクリスタの事を愛するようになっていたが、過去の事件の事もあり、自分が宝石人であることをなかなか打ち明けられなかったが、ダンテにも背中を押され、素顔を見せて宝石人であることを打ち明け、最初の頃の態度を謝罪した。

クリスタもジェラルドを好きなことを伝え、いろいろな事情も理解して、二人は晴れて両思いの夫婦になる。

 

 

誘拐事件とその後

しばらくラブラブに過ごしていたが、クリスタが誘拐される事件が起こる。

ジェラルドにはフィリポという厄介者の叔父がいて、このフィリポがデボラ、ミケーレと組んでクリスタを誘拐し、宝石人であるジェラルドを捕らえて金にしようとした。
(フィリポはジェラルドが宝石人だとは知らされていなかったが、何かで知ってしまった)

結局、ジェラルドとダンテの活躍によって、フィリポ、ミケーレ、デボラは捕らえられ、クリスタは救出された。
(この辺りのピッコマ有料話は救出された&事件後の部分しか読んでないので、ザックリ)

ミケーレは実家から縁を切られ、フィリポと共に離島で労役が課されることになった。

デボラは修道院に終身の禁固刑を言い渡されたが輸送中に逃亡しようとして崖から海に落ち、おそらく死亡。
デボラは隣国の少貴族の娘で女優を夢見て家出したが売れず、劇場によく見に来ていたフェルミ子爵(クリスタの父)に取り入って妾になったらしい。

デボラの両親は老齢だが健在で、娘のその後を知らされ悲しんだが、孫のステファニアと暮らしたいと申し出てくれて、ステファニアは新天地でやり直すことになった。

ステファニアは実はミケーレの子供を妊娠していなかった。

クリスタの困った顔を見れればいいくらいの気持ちで、フェルミ領を継ぐ事も望んでおらず、母のデボラにいいように利用されただけで、誘拐事件にも関わっていなかった。

ミケーレ達が作ったフェルミ領継承の書類も無効とされ、クリスタはフェルミ領を取り戻し、領主となったが、ジェラルドと離れなくないので、ジェラルドから信頼のおける有能な者を紹介してもらって領主代理を努めてもらうことにした。

クリスタとジェラルドの子供が二人以上生まれたら、それぞれ、ベルヴェルグ領とフェルミ領を継ぐことになる。

クリスタの父は、酒毒のため、ベッドで亡くなっていた。

クリスタへの謝罪の言葉が書き殴られた紙が落ちていて、それを読んだクリスタは嗚咽を零した。

誘拐事件の時に、ダンテがフィリポより先にジェラルドが宝石人である秘密を公にする事にして、城の者達に知らせたため、その後、瞬く間にジェラルドが宝石人である事は国中に知れ渡った。

そのため、もうジェラルドは仮面をつける必要がなくなった。
そして、ジェラルドとクリスタは仲良く幸せに暮らしました。

おしまい。

 

 

感想

最後の方は、ピッコマ有料話を全部は読んでないので、端折ってます。

最初のクリスタがデボラ、ミケーレに騙されるエピソードはものっすごく悔しい腹立たしい話で、彼らがギャフンというところはもうちょっとちゃんと読みたいなとは思うので、ビンゴでコインが余ってたらまたいつか読もうかと思います。

最後はジェラルドとクリスタが結ばれてハッピーエンドになるのは、最初から予想されるんですけど、この手の話はほとんど最後はそうなので、どうなったのかを知るため、有料話のどこを読もうかなと思って、エピローグ前を読んでみたら、ただのHシーンのみだったという・・・。
Hシーンはそれはそれでいいんですけども、ストーリー部分を知りたかったので、ガックリ。

「金属たちの願い」の最後から「告白」の最初が誘拐事件の結末部分でした。

最初の方はクリスタがデボラ、ミケーレに騙されてひどい目に会って、それが逆転しないままなので、モヤモヤしますが、ジェラルドは最初だけですぐにクリスタらぶになるので、ジェラルドがクリスタを溺愛する感じをたくさん見れます。

デボラ、ミケーレ、フィリポと、邪魔してくる奴が関わるエピソードもそれなりな分量あるので、半分半分てとこでしょうか。

あとは、ジェラルドの秘密や彼らの人間関係や陰謀がわりと複雑に設定されてるなと思いました。

ドキドキハラハラとラブラブを両方楽しめるお話かなと思います。

そしてコミカライズされて、連載中なようです。