小説「俺様外科医に求婚されました」作者:時永幸 感想


<↑試し読み> Renta!

職場の同僚に誘われて行った食事会で、5年前にある事情で別れた恋人と再会するお話。
5年前別れた事情は何なのかと、5年前、二人が出会って付き合うようになるまでがメインで描かれる。

完結。ピッコマで読み始め、
最後の方は、amazon kindle unlimited にて。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

准看護師の望月理香子(28歳)は、いつもは誘われてもめったに行かない食事会に同僚に誘われて行ってみると、実は合コンだった。遅れて来たイケメン外科医を見ると、それが5年前に理香子が別れた大和諒太(32歳)だったので、驚く。

5年前、理香子はある事情で、諒太を裏切るような形で酷い別れ方をしていた。
理香子と同じく合コンだとは知らなかった諒太は、すぐに帰ると言って、理香子も強引に連れ出した。
家まで送るといって車に乗せられ、「他の男と結婚すると言って俺を振った女がなぜここにいるのか、相沢と離婚したのか」等と諒太は理香子に質問するが、理香子は諒太には関係ないことだと言って、何も答えない。

 

この後、5年前、諒太の務める大病院に理香子が看護助手として働き始めた頃の二人の出会い、諒太がグイグイ理香子にアプローチして、付き合い出すまでのエピソードがメインに、合間に現在の再会してからまた諒太が理香子にグイグイアプローチしていく様子も描かれる。

諒太は実はその大病院の院長&理事長の息子で、いずれ病院の後を継ぐ予定の御曹司で、天才脳外科医と言われる長身イケメンな男性。父が院長で母が理事長。
飄々とした社交的な感じのキャラだけど、自分の肩書目当ての女性や後継ぎであることのプレッシャーを感じていて、最初は諒太が御曹司だと知らなかった理香子が肩書関係なく普通に接してくれて、じゃれ合うのが彼にとっては癒やしでもあった。

 

御曹司だとバレて、理香子の態度がよそよそしくなると、職権を活用して、理香子を自分の科に異動させ、近くで自分を見てもらおうとした。それが成功して、それまでチャラい感じに思っていたが、徐々に理香子は医師として働く諒太の姿に見直して惹かれていき、付き合うことになる。

諒太の両親にも紹介されるが、理事長である母は、家柄を重視して権力を振りかざして病院を経営するモンスターなので、看護助手の理香子との結婚など認められないと拒絶される。
院長である父は、理香子に優しく接してくれるが、理事長に頭が上がらない。

理香子は早くに父を亡くして母子家庭で、母親がガンで入院していた。
理事長は理香子の事を興信所を使って調べ上げ、手切れ金を渡すから諒太と別れるように言ってくる。
理香子がお金はいらないと拒否すると、新薬の治験に母を優先的に参加できるように取り計らうと提案してくる。理香子の母は、見つかった時は既に末期で治療法はなく、半年前から入退院を繰り返していたので、最後の希望にすがることにし、理事長の条件をのんで諒太と別れるという苦渋の決断をする。

 

手切れ金代わりに母親の転院手続きや入院費等を負担し、新しい職場と住まいも理事長が用意するので、明日からもう病院には来なくていい、新居が見つかるまではホテルに滞在、相沢と結婚してアメリカに行くふりをすることになる。

相沢は諒太の親友で同僚の医師で、大学生の頃に実家の経済的な事情で大学をやめなければいけなくなりそうだったのを、諒太が母に頼んで金銭援助をし、その代わり生涯、大和病院で医師として働くという契約をしていた。
そのため、相沢は理事長の言うことをきくしかなく、結婚はしないが、アメリカへ行くのは本当で、アメリカの病院で最先端医療を学ぶことになり、相沢も諒太との連絡を断つ。

約束していたデートに理香子は行けず、「今日は行けない、理由は今は言えないがそのうちわかる、最低な女だと思って、私のことは早く忘れてください」とメッセージを送ったのを最後に、諒太と別れる。

 

理香子の母は約束通り治験を受けられたが、よくなるどころか重い副作用に苦しんだだけで、4年半前に亡くなっていて、理香子はあの時の自分の決断を後悔していた。

5年前、大和病院で仲良くしていた職場の同僚で、相沢が好きだと言っていた小野が理香子に会いに来る。
5年前に突然の相沢と理香子の結婚、アメリカ行きという話をきいた小野が事情を問うメッセージを送ってきたが、理香子は応えられず、小野からの「最低」というメッセージを最後に連絡を断っていた。

小野は最後に「最低」というメッセージを送った事をずっと謝りたかったと謝罪、もうすぐ放射線技師の男性と結婚する予定で、幸せだから安心してと理香子に言う。
結婚の報告をした時に、理事長から事情は聞いているがよくわからない事もあったので、もう一度理香子から話を聞かせて欲しいと言って、5年前に諒太と別れた時の事情を理香子から聞き出す。

諒太にも言わないからと約束した小野だったが、実は諒太から、おそらく理事長が絡んでいると思われるから、小野が事情を知っているふりをして理香子から聞き出すようにと頼まれていたのだった。

 

理香子が務める病院に、諒太が医師としてやってくる。
この病院で医師と准看護師として会うのは初めてだろうと、初めましての挨拶をされて戸惑う理香子。
小野から事情を聞いたことを理香子に打ち明け、理事長には「5年前の事を理香子に謝罪し俺たちの事を認めるまでは病院には戻らない」と言って出てきたと話し、初めからやり直そうという。

理香子はそれを受け入れ、勤務後に食事に行く約束をする。


諒太と理香子にはそれほど魅力を感じず、二人の出会い物語はさーっと読み流して、ただただ別れた事情の部分と、それがわかって黒幕の母親がギャフンとなるのをみたくて、最後の方を読みましたが、全然ギャフンとならずに、ただやり直そうでアッサリ終わってて、「え?これで終わり?」って思いました・・・。

 

諒太の母は、そう簡単に変わらないだろうけど、せめて諒太が母親と対決して、息子に出ていかれてギャーギャー言う母親の様子を描いてほしかったです。

それに、理香子を母に紹介した後、母親は何をしでかすかわからないモンスターだって言ってたくらいなんだから、ラブラブだった恋人が自分の親友と突然結婚することになってアメリカに行き、二人共急にパッタリ連絡取れなくなって消えるなんていうものすごい怪しい状況だったら、5年前の時点で母親が絡んでるかもしれないって、思いつきそうなもんだと思うんですよね。

証拠はつかめなくたって、今回と同じように、真相を明かさないなら戻らないって言って、病院を出ちゃえばよかっただろうし。
理香子だけが大切で病院とか後継ぎとかどうでもいい諒太にとっては、カマ掛けるためだけでも、そういうことできただろうし。

相沢とは連絡が取れたってだけで、その後どうしてるのかなんにもふれてないってのも、なんかなぁ。
相沢にお金の援助を母に頼んだけど、おそらく諒太はその代わりの条件なんて知らなかったんだろうし、その辺りについても、母親に何か言うとかしてほしかったです。

諒太の父だって母に頭は上がらなくても、院長なんだから、こっそり調べるとかくらいはできそうなのに。
父だって、息子の恋人が急に消える状況で妻が絡んでるって絶対思いつくと思います。

 

それと諒太の母が、相沢にも理香子にも契約書にサインさせていて、契約書、契約書って言わせてたわりに、最後に、契約書があるけど大丈夫なのかとか口にすることも思うこともなく、あっさり諒太と復縁してるのも、なんだったんだって感じがします。

あの契約書に法的な効力があるのかよく知りませんが、結局、諒太と母の身内の問題になるので、裁判沙汰にはしないんでしょうけど、でも、それがあるから諒太に再会した時に5年前の事情を説明しなかったんじゃないの?そうじゃなかったら、5年経っても自分にアプローチしてくる諒太に、理香子が罪悪感で付き合えないと思ってるなら、5年前の事情を説明してスッキリさせてあげようって思うんじゃないのかな。

諒太に知られちゃったから、もういいってことなのか?
諒太がずっと理香子の事を忘れられなくて、再会してまたやり直すお話はいいんだけど、諸悪の根源の母親の事が、たいしてどうにもならずに終わっちゃってるのが、不満が残りました。

それと表紙の絵が、すごく好きだなと思いました。
イラストの方の名前も載ってないくらいで、表紙のみ、中には挿絵なしですが、諒太がカッコいいです。
水彩画っぽい色の塗りの感じもきれいで、すごくよかった。