漫画「偶然見つけた7月」muryu 感想(1)

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主人公の女子高生、九条桜は、最近、覚えがないのに突然自分のいる場所や状況が変わっている事に気付く。予知夢なのか突然未来に起こる出来事が見える事もあり、何なのか不思議に思っていると、自分たちのこの世界がマンガの世界で、自分たちはそのキャラクターなんだと言われ・・・。

結構おもしろいと思いました。

ピッコマにて。水曜更新で連載中。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

1〜12話

女子高生の九条桜(16)は最近、よく記憶がなくなることに気付く。
例えば、期末試験の1日目に教室で席につこうとしていたはずだったのに、気付いたら最終日で最後の試験が終わったところで、自分の席に座っていた。
答案はきちんと書かれているが、書いた記憶もない。

そんな風に、過去のある場面を覚えてない、というようなものではなくて、突然場面転換したかのように感じる事が多々あり、その間の記憶がない。
体感5分なのにいつの間にか1週間が経っている。

記憶障害を疑って調べてみるが、調べている間にも何度も記憶喪失が起こる。

次に、突然、とぎれとぎれの映像が見える現象が起こり、なんだろうと思っていると、その後に、自分の周りでさっき見た映像と同じことが、実際に起こり、予知夢なのかと思う。

桜の通っている高校は、お金持ちの家の子達が多く通う学校で、大部分の生徒は幼稚園から一緒。
A4と呼ばれるイケメン4人がいて、そのうちの一人は、学食のお兄さんで、人参のきんぴらが出る日にだけ学食にいるので「人参のきんぴらの妖精」と呼ばれている(以下、妖精さん)。

他の3人は、桜と同学年の斎藤すばる、林海斗、大橋ノア。

 

桜はM金融総裁の孫(つまりお金持ちの家)。

桜は幼い頃から、心臓病を抱えていて、今までに何度も手術を受けて生きながらえてきたが、移植を受けられなければ、もうあまり生きられない。
腕時計型の心拍計?をつけていて、激しい運動はできない。

移植を待つための延命措置でまた手術を受けるよう、担当医師である海斗の兄から勧められているが、桜は拒否している。

大橋ノアは桜の婚約者で、幼い頃から家同士の付き合いがあるが、「マジで無理、お前みたいな病気持ちの女」と言われてふられる。

だが、ノアの父は、仕事で桜の父(祖父?)から融資を受けようとしているらしく、家の事情的には婚約解消になって関係が悪くなるとまずい状況で、父からは桜は来年までもたないらしいから投資を受けるまで今の関係を維持するよう言われる。

同級生のアカリは、高校からこの学校に入った外部生で、最近すばるから好意を向けられているが、それをよく思わない女子達から、いじめを受けている。

 

予知夢で、学食でアカリが足をひっかけられカレーをぶちまけ、そのカレーが自分にもかかるのを知った桜が、カレーをよけると、桜の様子を観察していた妖精さんに「君 見えてるんだな」と声をかけられる。

そこでまた場面転換が起こってしまうが、気になった桜は、妖精さんがいる日を待って、妖精さんに会いに行く。
そこで妖精さんから衝撃的な事を告げられるが、すぐには信じられず、最初は妖精さんをおかしい人だと思って逃げるが、それが正しいことを証明され、信じがたい事だったが受け入れた。

それによると、この世界は「秘密」というタイトルのマンガの中の世界。
桜を含めたみんなはマンガの中のキャラクター。

キャラクターに自我が芽生えると「記憶の空白」を感じるようになる。

ヘッド(マンガのページになる場面)では作者が意図しないことは決して起きない。

この世界には作者が描いてない場面、テイルが存在する。
テイルではキャラクターは自由に行動できる。
1つの場面でヘッドとテイルが共存している。

例えばテイルでケガをしてもヘッドになると消える。
自我のないキャラクターはテイルでの出来事を覚えていない。
(桜がテイルで何かをしても妖精さん以外は覚えていない)

 

妖精さんは、この「秘密」のマンガ本の1巻を持っている。
(2巻以降は持っていない。桜が1巻を読ませてもらった時点では1巻の内容は過去の出来事でしかなかった)

桜は自分がマンガの主人公かと思っていたが、それによって実は「その他のキャラ」でしかないことを知る。妖精さんも「その他のキャラ」。

主人公は、アカリとすばるで、海斗、ノア、桜の友人の夏美は脇役。

桜が見える予知夢はマンガのネーム。妖精さんにはネームは見えない。

桜は、この世界がマンガの世界という事を受け入れ、これが純情マンガなら、それっぽいことをしたいと思う。設定じゃない本当の初恋、自分の気持ち以外は自由にならないなら恋愛だけは自分の自由にしようと決意する。

そして桜が階段から落ちた時に背中同士でぶつかった相手に、ドキッという心臓の高鳴りを感じて、その相手が誰なのか、いろんな男子と背中をくっつけてみて探し、とうとう見つけて(9話)、彼が桜の恋する相手だと思う。

 

彼は同じクラスで桜の後ろの席の男子だが、マンガ「秘密」の中では名前もないキャラクターだったため、彼の名前はわからず、13番(おそらく出席番号かなにか)と呼ぶことになる。

自覚者は妖精さんに話を聞いた時点では、妖精さんと桜しかわからなかったが、テイルでの出来事を桜に言ってきた事から、海斗も自覚者だとわかる。

海斗もアカリの事が好きなのだが、桜からこの世界のことを聞き、主人公はアカリとすばるだと知ってガッカリする。そんな海斗だが「誰の目線で見るのかで主人公はいくらでも変わるから、海斗を中心に世界をみればいい。そうすれば海斗が主人公」だと桜に言われ、今まですばるに遠慮した態度だったのが、少しずつ自分の欲を前面に出した行動を取るようになっていく。

桜の友人の夏美は、すばるが好き。

13番は自覚のないキャラクターなので、テイルで桜が13番と接しても、違う場面に移ってしまえば傷も消えるし、桜と接した記憶もおそらく残っていない。
それでも、何かが変わるかもしれないと諦めずに、桜はいつも13番を探して声をかけたりして接する事を続け、自分の気持ちを届けようとする。

 

13〜14話

学校行事のキャンプで、「私縁石」という石が流行っていて、桜も私縁石を買う。
2人で向かい合って私縁石の両端をつかんで折ると、好きな気持ちの大きさで割れるらしい。

桜は13番と石を割ろうとするが、なぜかノアが来て桜が持っていた私縁石の片端を持ち割ってしまう。
ここはヘッドだったらしく、桜は言いたくないセリフを言い、したくないのに切ない雰囲気になってしまう。

割った私縁石に願い事を書いて積むと願い事が叶うというのもあって、それもヘッドだったらしく、桜が私縁石を何度捨てても手元に戻ってきたので、願い事を書いて積もうとするが、何度やっても崩れる。

積めないところまでがヘッドなのかと諦めて去ろうとしたが、13番がその石を拾って積んでくれて、2人で一緒に石を積み、成功する。

13番「君の願い きっと叶うよ」
桜「もう 君がそんな事言うから もっと生きられる気がしちゃうじゃん」

私縁石にはもう1つ伝説があって、日が沈む時、2人で一緒に願いの塔を積むと夕日が心を染めて、その2人は恋に落ちるというのがあり、期せずしてその通りの行動をしていた桜と13番だった。

 

1〜14話 感想

結構おもしろーいと思いました。

ピッコマの最後のハートの数を見ると、あんまり人気がないみたいですが、ハートの数に似合わず、なかなかおもしろいです。
絵もきれいだし。

なぜこんなに人気がないんだろう?と思いますが、最初の方、登場人物たちの関係性がわかりにくいからかなーとも思いました。

マンガの中の世界とか、記憶が飛んでいる事とかを別にして、桜とノアの関係って何なの?ていうのが、最初の方よくわかりませんでした。

家族の集まりとか、仲良しごっことか言ってノアが批判してる事から、親の再婚で連れ子同士の義理の兄弟なのかなと最初思いましたが、ふられるシーンがあって、付き合ってたのかとも思い、でもまた子供の頃のお互いの親も一緒で顔を合わせる回想があったり、「んんん? どういう関係なの?」って思いました。

結局、桜とノアは婚約者なんですが、高校生同士で婚約者っていうのが思いつかないです。

言われれば、お金持ち同士らしいので、そういうのがあるのは理解できますが、説明もなしにはわかりません。

 

アカリとすばる、特にアカリがいじめられてるっぽい状況も、何がどうなってるのか、最初の方はわかりにくいです。

すばるとアカリは付き合ってはいないけど、すばるはアカリが好きで、アカリをかまってるんだけど、すばるが人気者なので、周りの女子達からのやっかみでイジメを受けている、海斗もアカリが好き、という状況なのも、わかりにくいです。

一気に読んだのに、海斗もすばるもアカリのために破られた体操着を新しく買って渡した、という状況だったのが理解できませんでした。海斗が誰かを待ってて、アカリに渡してくれと桜に渡した紙袋がなんなのかってのがわかりにくくて、しばらく後になって理解しました。

桜とノアの関係も、アカリ、すばる、海斗の関係も、その辺りの登場人物たちの関係性が最初の方でわかりにくいです。

妖精さんが、学食のスタッフというのも、後の方にならないとわかんなかったし。
夏美が、あんなおじさんがA4の一員なのはふさわしくないとか言ってるのも、2回目に読んで、妖精さんの事を言ってるんだってわかりました。

そういう最初の方が、10話くらいまで読まないと人間関係等いろいろと状況を把握できないのが、人気のない一因なのではという気がします。

 

桜が自分の好きな人が13番だとわかった時、何かアプローチしなければと思って、振り返って「君、私のタイプ」と言ったら、近くに立ってた海斗に向かって言った事になっちゃった(11話)というシーンがありますが、ここも最初よくわかりませんでした。

振り返って見えたのは海斗で、海斗が「わりぃ、俺は違うわ」って答えて、「私だって違うわ」と桜は思う、というのが続きますが、「あれ?13番に言ったんじゃないの?なんで13番じゃなくて海斗になってるの?海斗に言ったんだとしたら何で私だって違うって思ってるの?」と、わけわかんない感じでした。

海斗が桜と13番の間くらいに立ってたというのは、クラスメイト達の声の後、このシーンの少し後にやっと描かれ、そこで「ああ、こういう立ち位置だったから、間違えて言った感じになってたのか」と、状況が理解できました。

そういうのから推測すると、この作者さんは、マンガ的なシーンの流れを描くのが下手なのかなと思いました。もうちょっと早めに13番を端に描くとかして位置関係を見せてくれないと「んん??」となってしまいます。

 

8話の最後でマンガ「秘密」の2巻らしき本が本棚から落ちて中身が見え、未来のワンシーンがチラ見せされるというのがありますが、これも、今後こんなことがあるよ、という予告なんだとしたら、それでどうした?って感じのワンシーンなんです。

すばるがアカリを片手で後ろから抱きかかえ、何かから守ってるような感じで立ってる2人と、海斗、なんですけど、これだけだとどういうシーンなのか全くわからないし、これだけなら今すぐあってもおかしくないシーンだと思うので、これ見せられてもちっともどうなるんだろう感がない。

誰かがキスしてるとか、ケガしてるとかならわかりやすいけど。

それともただ、2巻以降もあるよって事を示しただけなんだろうか。

 

妖精さんは、マンガの中でも名前が不明なキャラクターなんですが、自分は予知夢を見てないのに、それがネームだとわかったり、わりとまだ秘密のあるキャラクターなんじゃないかなという気がします。

学食のスタッフで、人参のきんぴらが出る日だけ来る人って何なんだろう・・・。
その設定が謎すぎる。

そもそも「人参のきんぴら」ってそんなに頻繁にでるものっていう気がしないんですが・・・。
たぶん、本当は人参のきんぴらじゃなくて、韓国で定番な別のメニューなんじゃないかなと思いました。

だとしても、そのメニューの時だけ来る学食スタッフってなんなの?
学食の人って普通毎日いるもんじゃないの?
アルバイトとかだったら、曜日によって決まってるとかあるとしても、メニューで決まるって何?

 

異世界転生もので、前世で読んだ小説の世界だったというのはいくつか読んだ事ありますが、今まで読んだものは全部、世界は小説の世界でも普通にそこで生活している話だったので、この作品のようにマンガの場面転換で記憶が飛ぶというような描かれ方をするのは初めて読んだので、新鮮でした。

でも新しいからって事じゃなく、普通にお話として、この後どうなるのかが気になって、おもしろいと思いました。

桜の心臓病、余命宣告はどうにかなるのか。
桜と13番の恋は結ばれるのか。

桜が13番を好きになった経緯がちょっと特殊だなと思いました。
顔も見ていない、言動を見たわけでもない、ただ体が接触しただけで、ドキドキを感じたって、超能力的な直感だよね。触れてわかったってことなんだから。

その後も、桜は13番に触れるとドキドキを感じます。

普通の世界じゃないから、ヘッドのシーンが終わると場面が飛んじゃうので、普通にメインキャラ以外の人の言動を見て好きになるっていうのは、言動が描かれない=存在しないから、無理なんだろうと思うけど。

 

ノアは桜に酷い言動を繰り返して冷たい態度をとっていたのに、「私縁石」のエピソードでは桜はノアに何も「私縁石」の事を言ってないのに、ノアの方から桜のところにきてわざわざ「私縁石」を割っていくという行動をとったのはなぜなんだろう?

桜が「私縁石」を一緒に割りたいと言ったら嫌がりそうなのに、言われてもないのに自分から行ったのは、実は桜の事が気になってたりするんだろうか?

アカリ、すばる、海斗の三角関係は、主役がアカリ、すばるだからこの2人がうまくいくんだろうと思うけど、海斗はそこでずっと奮闘するのか、諦めるのか。

アカリって、A4と言われてる4人のうちの2人から好かれていて、すごいんだけど、アカリの見た目はそんなに特別かわいいとか美人ではないなと思います。

そもそも登場人物たちはみんなある程度美形さんだし、顔の中身もそう違わないので、髪型で見分ける感じだし。
そしてアカリのお団子ヘアってあんまり可愛い子、美人な子って雰囲気じゃないし。
アカリの内面がわかるような言動が今のところほとんどないので、すごくいい子なんだとか、カッコいいんだとかもわかんないし。

 

A4っていう呼び方も、A4って言ったら紙のサイズのA4を思い浮かべちゃうんですが。
韓国だとそういった呼び方をすることが多いんでしょうか。
A4のAがなにかもわかんないし。

あと、読み返した時に気付きましたが、1巻の登場人物紹介のページの右の方に2人、まだ出てきていないキャラが載っています。
1巻の話はもう過ぎているはずなので、桜が関係しないヘッドに出てきてる人なんでしょうか。

2人のうちの1人は13番のようにもみえるけど、13番は名前が出てこないってことなので違うのかな。

とまあ、場面のわかりにくさが難点ですが、
絵が綺麗だし、内容も、今後どうなるんだろうというおもしろさはとても感じています。