小説「(仮)花嫁のやんごとなき事情6 円満離婚に新たな試練!?」作者:夕鷺かのう イラスト:山下ナナオ 感想


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中世っぽい世界観で、孤児院育ちの女の子が、お姫様の替え玉として、すぐに離婚するミッションで隣国の皇子に嫁いでいくお話。のシリーズ6作目。
箸休め的なお話で、謎に進展はなく、新しく第5皇子ユアンが登場します。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

「(仮)花嫁のやんごとなき事情1」感想
「(仮)花嫁のやんごとなき事情2」感想
「(仮)花嫁のやんごとなき事情3」感想
「(仮)花嫁のやんごとなき事情4」感想
「(仮)花嫁のやんごとなき事情5」感想
「(仮)花嫁のやんごとなき事情6」感想

 

 

セタンタ王の指令変更により、嫌われて離婚を目指すだけじゃなく、まずは誘惑してクロウをメロメロにさせてから、捨てる事を目指すフェル。
けれども今まで男性相手の恋愛関係の事に仕事でも個人的にも関わった事がないので、どうすればいいかわからず、使用人仲間のラナに相談する。

フェルは悪女を演じなければという変な思考になっているが、ラナはフェルがクロウを好きな事を察しているので、素直に自分の気持を伝えるようにアドバイスする。

今まではシレイネの姿でクロウに会うと、憎まれ口をたたいてばかりで、好きはもちろん、嬉しい等も伝えたことのなかったフェルだが、ラナのアドバイスに従って、クロウにお茶とお菓子を持っていってクロウの傍に座って寄りかかったりする(最初は失敗してクロウを倒してしまう)。

フェルにそんな事をされたことがなく、フェルに嫌われていると思っているクロウは、何か裏があるのではと勘ぐってしまうし、フェルが自分に好意を向ける言動に戸惑って動揺してしまう。

フェルはクロウにもらった鈴蘭の香油?をつけていたのだが、その理由も、好きな香りで元気を出したかったからと素直に伝え、今までにない返答にクロウは嬉しさと驚きでどうにかなりそうになる。

 

ガウェインとクロウの会話。
知ることは知られることだから、フェルに妖精の事、本物の王女だという事を伝えちゃダメと言われてはいるが、伝えられることもあるだろう、このままフェルだけ何も知らない道化なのは許さないとガウェインはクロウにいう。
フェルが身代わりだとクロウが知っていること、それでもクロウはフェルが好きだということは伝えるべきだという。

ガウェインはフェルが本物の王女だというフェルの出自についてはクロウから聞くまで知らなかった。
フェルを保護したのは先代の孤児院長の吟詠詩人(ポエルジ)。

聖職者の階級は、位の高い順に以下の通り。
樫樹の賢人(ドルイド):各国の中央教会にしかいない
預言者(ウアテス):王侯貴族への布教役
吟詠詩人(ポエルジ)、語り部(フィラ):孤児院経営など慈善事業に特設携わる
吟遊詩人(バルド):僧兵でもあり末端の聖職者

先代の孤児院長は、吟詠詩人だったが、戒律を侵して降格させられた預言者だったらしい。何をしたかは不明。先代が失脚したのとフェルが生まれた時期がだいたい同じ。
フェルの出身地など、詳しくフェルのことを聞こうとするとはぐらかされた。
ワルプルギスにはフェルを聖堂などの神域から決して出すなと言われていた。

 

本物のシレイネがいた間にシレイネの部屋には天井画、聖詩篇にまつわるもの、教会の祝福を受けたものが取り払われている。シレイネとキリヤは妖精の一族の血を引き、太陽光と聖詩篇をひどく嫌う。
聖詩篇は太陽を最高神に据える教え。
妖精の手がかりは、妖精が嫌っていた正教。

セタンタ、キリヤの話から推測して、妖精の王はユナイアとエルラントの度重なる戦争とも、パールの死因とも関係がある。パールは知りすぎたとキリヤは言っていた。
パールは死の間際までクルヴァッハ南東部に残る妖精の伝説を詳しく調べていた。
「俺が死んだら兄上はどうするのかな」と未来を予見するような言葉を残していて、あの時点でパールは自分の命が長くないことを知っていたのか?
黒龍城にのこるパールの痕跡を辿り、パールが聖詩篇を調べるために教会に探りを入れていたことを掴んだ。
しかしエルラント教会とクロウの父である皇帝の関係は悪く、クロウが調査協力を打診しても取り付く島もないため、聖職者であるガウェインに仲介してもらおうとしたが、ユナイア派の下っ端にくれてやる時間はないと断られた。

 

黒龍城の家令ケイは、おせっかいして、ガウェインにパールの死の真相を伝える。
皇帝ウーベルを憎む亡国出身の第三王妃であり実母のリグレイン・フレアメルが、ウーベルと同じ瞳を持つクロウへの当てつけとして、呪毒を使ってパールを殺したこと。
また生涯呪われてあれ、苦しみ抜き、実をなさずして果てるようにと幼少時から囁かれ続けられたこと。

愛情不信の原因の半分は、その実母リグレインだが、以前はパールのように好意を向けてくる相手を受け入れる姿勢があった。
あとの半分は、フェルが原因で、常に最低、離婚しろ、大嫌いの3点張りで、クロウの悪口をいい続けているため。
ケイ曰く、夫婦揃ってこじらせすぎ。

エルラントとユナイアの商路の間にクルヴァッハの他に、第四皇子ユアン・ヴァセタ・エルラントが治める紫龍公領ヴァセタがある。
ユアンは今年で19歳、生きていればパールと同じ年で、ユアンの印象は薄く、ケイ曰く空気のような存在、パールと仲が良かったことくらいしか印象がない。
動物が好きで、いつも大きな2頭の獅子を連れているからヴァゼタの若獅子と呼ばれえいる

 

ウーベル皇帝の第二王妃メイヴの第二子、第二皇子イグレックと同母の弟。
メイヴ王妃出身の大貴族ロシュ侯爵家は反ユナイアの中核。
ロシュ侯爵家は皇位継承権の高いイグレックに期待してもてはやしユアンは蔑ろにしたため、ユアンは教会に預けられて育てられた。そのため、ロシュ侯爵家の反ユナイア思想に影響されていない。

ユアンに書簡を出したが返事がなく、ヴァセタ公領に行くにも反ユナイア派に待ち伏せされる危険性もあるため行けない。ユアンを味方につけたいが、こちらから迂闊に動けない状況。
商路の建設はエルラント内の親ユナイア勢力と反ユナイア勢力のぶつかり合いでもある。

エルラントの兄弟といえば、とフェルはジルフォードを思い出して名前を出す。
名前を呼ぶと出る気がするから名前を出すなとクロウが話していると、本当にジルフォードが城門から「お兄様がきたよー」と叫ぶ声が聞こえる。

無視していたクロウだが、出てこないと初恋話をするぞと話し始められたので、仕方なく慌てて出迎える。
なぜ来たのか聞いてもまともな返事が来ないので、剣でジルフォードを切りつける。
ジルフォードは一歩も動かないが、クロウとの間で背の高い女性が剣を受け止めていた。
彼女は、ジルフォードの護衛&隠密、優秀な武人を輩出するティアシェ村出身の中でも逸材、男女含めて郡を抜く腕前を誇るミゼルカ・ティアシェ。
普段は天井裏に潜んでおります、と自己紹介。
黒に近い灰色の髪、暗紫色の瞳。

 

ミゼルカはすぐにジルフォードを後方に投げ飛ばし、白龍師団兵が受け止める連携プレー。(ジルフォードを安全圏に送った)
クロウはミゼルカの姿を現させるためにジルフォードに切りつけたのだった。

ジルフォードは、外遊していたリグレインが帰国したので、皇宮に様子見に行っていた。
イグレックは貴人用の牢に入れられていたが、誰かに呪毒を盛られ乱心した。

イグレックは震えながら同じ文句をつぶやいている。
「妖精王に呪われる、赤い病に冒される。藍、翠、次は黒。お前の番だ。」

「黒龍の庭は赤い病に冒される」
キリヤが使った脅迫に酷似しているその言葉。

イグレックの異変直前に赤葡萄酒を持って獄中を見舞うリグレインらしき人物が目撃されている。

 

クロウはフェルとミゼルカの二人で話をするように言い、クロウとジルフォードは二人だけで話をする。

ジルフォードから少し前に書簡が届いていたが、その書簡に気になる事があった。
封筒が反故でできていて、広げた紙には異常に乱れた筆致で断片的な言葉が綴られていた。
「酷似、リグレイン妃、化け物、来るな」
ジルフォードにその紙を見せて聞いてみるが、ちゃんとした封筒に入れて封蝋をしたはずだし、覚えがないという。

封筒が反故でできているという意味がわからず調べたら、反故は「書き損じた紙」等を指すようです。
私は「反故にする」っていう言い方しか知らなかったんですけど、読書家な方は知ってる単語なんでしょうか。
私の感覚だとこの使い方で知ってる人そんなにいるのかなぁって思いましたが、こうやって知らない人に知らしめる事はできるかもしれません。

 

ジルフォードのグリフレイ領で、2週間程前に、ゲヴォルダンの獣と呼ばれる謎の化け物が突如寒村を襲う事件があった。村人のほとんどが食い殺されたが家畜はほとんど無傷、獣の討伐には成功したが槍に貫かれると獣は一匹の猟犬に姿を変え、その猟犬の飼主で生き残った1人の村人が血を吹いて絶命し、彼の心臓には槍で突いたような穴が空いていて、飛び散った血は淡く光っていた。

キリヤに聞いた「隠れずの月」という他者強化型の呪毒に似ている。
おそらくゲヴォルダンはその実験台にされた可能性が高い。

他に変わったことはなかったかとクロウに言われてジルフォードは、弟パールを見たという。
前巻の最後でジルフォードが皇宮にいるシーンが少しあって、そこでジルフォードがパールを見て驚愕して終わるという、気を持たせる終わり方をしていました。それですね。

「欠番だった時期が長い愚弟、ずいぶんと嫌ぁな感じに様変わりしていた」というジルフォードにクロウは目を見開く。

 

このシーンはここで終わって、次に出てくる時は二人の話が終わった後になってしまうので、パールの話はどういうことなのかわかりません。
パールの死を知っているはずのジルフォードが「長いこと不在で変わってた」という言い方は、パールが生きている前提で話をしているかのようで、ジルフォードも呪毒かなにかにやられて記憶をすり替えられているのか?と思いました。もしくはジルフォード自体が偽物とか。
でもずっと傍にいる護衛のミゼルカが偽物に気付かないはずがなく、二人共偽物というのも無理がありそうなので、それは違うと思います。

ジルフォードが記憶を変えられていて、前に届いた書簡の封筒の文字がそれを示しているのか、それともジルフォードがわざとそんな言い方をして話し始めただけで、死んでるはずのパールそっくりの者がいたってことなのか。

フェルとミゼルカとのティータイムでは、ミゼルカがジルフォードの事を恋愛感情で好きだという事がわかる。
ミゼルカは身分の違いで叶うはずのない恋ということはわかっていて、「分不相応な戯れとお忘れを。殿下の護衛であることが幸せで、あの方の傍にいる唯一の道」だという。
フェルは自分とクロウの関係に重ねて、考えさせられる。

 

それぞれの話が終わった後、フェルとジルフォードは廊下で会い、ジルフォードに、本物のシレイネではない事を知っている事、身代わりは知っているがフェルの素性(庶民の方)は知らない事、クロウも身代わりを知っているだろう事を聞かされる。

ティカルでフェルはジルフォードに「あの人を傷つけるなんてごめんだ」と言ったが、偽物の花嫁として愚弟を騙していながら、あの子を傷つけたくないと言うが、そんなことどう実現するんだと、ジルフォードに問われる。

ここでいきなりジルフォードがフェルに本物のシレイネじゃないと言い出すのは、やっぱりジルフォードは何かに操られているのか?と思ってしまいましたが、その後に続く話の様子からするとクロウを気遣ってるようなので、違うみたいだなと思いました。

クロウが身代わりに気付いているだろうと言われて動揺したフェルは、召使いの格好をしてガウェインに会いに行く。一緒に来たラナにクロウがどうして気付いたか思い返してみるように言われて振り返ると、思いつくことは大量にあり、なぜ今までバレてないと信じてたのかと逆に思ってしまう。

 

ガウェインはクロウが気付いていることを知っているが、自分からクロウの気持ちを語るべきではないので、知っていたとしても、今までフェルが見てきたクロウがどうするか考えてみてとアドバイスする。

フェルは北の側塔にいるキリヤにも会いに行く。
フェルの正体も名前も知っていたキリヤならクロウの真意を知るの手がかりになるかもしれない。
キリヤはフェルが召使いの変装をしていても、ひと目で見抜き「花嫁さま」と呼ぶ。
普通の人間にはわからないだろうが、キリヤは香りでわかるのだという。

キリヤはジルフォードがフェルの素性までは知らないならクロウもそうかもしれないという。
召使い姿の事までは気付かれてない事に同意を求められて、キリヤは視線を泳がせつつ、「じゃ、そういうことで」と曖昧に同意。

 

キリヤは何者で、なぜフェルの名前を知っているのかというフェルにキリヤは「ほくは朝焼けの子の影。夕暮れの子のあなたとは違い本体はもうこの世にはいないはず。」という。答えられるのはそれだけだが、フェルの力の理由や身上を探るより使い方を考えたほうがいい、フェル自身がどうしたいのかを考えるようにアドバイスをする。

ここはクルヴァッハで今は夕暮れ。昼から夜へのあわいの時間。
あなたは黄昏を身に宿す「花嫁さま」なのだから。
黒龍公の妻だから「花嫁さま」と呼んだわけではない。

キリヤは妖精のおとぎ話に出てくる「花嫁」という意味で「花嫁さま」と呼んでいたらしい。

フェルはすぐに逃げなくていいと思ったが、考える時間がほしく、しばらくクロウと顔を合わせたくなかったが、タイミング悪くクロウに呼ばれる。
クロウは商路についての話をしようとするが、フェルの様子はおかしくて結局話ができないまま気分が悪いと言って退室してしまう。

 

フェルの言っていた事からジルフォードが何かフェルに言ったのではと思ってクロウはジルフォードに会いに行く。「お前たちを見ていたらまどろっこしくて、つい。お前たちはそのままでいい」とジルフォードに寂しげに微笑まれて、「一緒に幸せになりたいならちゃんと向き合ったほうがいい」というガウェインの言葉を思い出すクロウ。

そこへジルフォードが使いに出していたミゼルカが戻ったが、不審な荷物を持っているので城門まで来て欲しいとケイに言われて、ジルフォード、クロウ、フェルが城門に行く。
ミゼルカが担いでいた麻袋の中身は紫龍公ユアンで、ジルフォードが1週間前にエルネットさりたの最速便で頼んでいたのをミゼルカが受け取ったらしい。
一緒に獅子2頭もいる。

 

ジルフォードはクルヴァッハに来る前に紫龍領に寄ったが「何しに来た帰れ変態」とユアンに追い返されたので、お土産をもらってきたとのこと。
ちゃんとユアンの家令アンドリューも公認だから大丈夫だという。
家令アンドリューは、週に6日は教会を訪問してまで根性で面倒を見ていたユアンの父親代わりのような男で、ジルフォードとも親しく、ユアンにとって最も気心の知れた人間。

気絶していたユアンはそのまま部屋に連れていかれ、気がつくと、貴族らしくない平民のような品のないクチの悪い話し方で、シレイネを毒花と言ったり反ユナイアのような事を口にする。
「エルラントに刃向かった亡国の血を引く呪われ野郎」というクロウへの言葉を許せずにフェルが、嫌味を交えて挨拶すると、ユアンはフェル(というかシレイネ)がその場にいるとは知らなかったようで、急に口調を改めて、シレイネに自身には悪意がなかったかのように気まずそうにしおらしく、ユアンは挨拶を返す。

 

クロウがユアンに商路の計画を話すと、ユアンに「断る」と一言で返される。
埒が明かず、無理やり連れてきたことだし、一晩おいて翌朝またということにして、兄2人がユアンの元を訪ねるが、やっぱり拒否され失敗。
フェルが前にした事のあるお客様苦情係の仕事の経験を活かして話をしてくると、ガウェインを護衛に付けてラナも伴ってユアンの所に行くが、結局まともに話もできず、フェルは手を払われた時にバランスを崩して家具の角の頭をぶつけ血を流し、それを見たガウェインが激怒して、ユアンを片手で胸ぐらを掴んで窓から宙ぶらりんにして気絶させる事態になった。

ユアンの回想、3年前、パールとの会話
パールは3年前、ティカルに行く直前に皇宮に行き、母リグレインと会っていた。
ジルフォードは数年前まで嘘みたいに厳格で寡黙な人だったと、パールは言っていた。

ユアンはここに来る直前にリグレインと会っている。
ジルフォードが「欠番だった愚弟が嫌な感じに様変わりしていた」というのはユアンの事を言っていたらしい。

 

ユアンが獅子2頭と城の敷地内の森にいるところに、フェルが召使いの格好をしてラナと共に偶然のふりをして会いに行き、ユアン&獅子が昔仕掛けてあった罠でケガをしているのを助け、ユアンの話を聞ける。

ユアンは実を手に持って鳥を呼び寄せる等、動物を手懐ける特技を持っている。
それを活かして、畜産で領民を豊かにしたいという夢を持っている。
イグレックが皇位継承者から外れた事で、皇位継承者として期待され、母と母方の実家からのユアンへの干渉が酷くなっている。今まで放っておいたくせにという気持ちもあるが、家族だから捨てられない気持ちもあり、ジルフォードもクロウも家族だけど、と苦しい立場にあるらしい。

ユアンには誰にも内緒といわれたが、フェルは聞き出したことをクロウに伝える。
クロウが調べたユアンの領地のある事情もわかって、強めに追い詰めることにする。
ジルフォードと組んで、皇帝も商路に賛成している、それを邪魔しているユアンを処罰しようと考えているという内容の皇帝の手紙を偽装して、ユアンに見せる。

 

少し間をおいて皆でユアンの部屋に突入すると、ユアンは窓から逃げた後だった。
ガウェインとミゼルカがユアンを追って捕まえ、クロウとユアンは話をする。

ユアンのヴァセタ領では、家畜の伝染病が流行り畜産業の主力の馬と牛が大量に失われた。ユナイアとの戦争で徴発もあり財政難に陥り、母の実家ロシュ侯爵家の援助の手を借りて乗り切ったが、ロシュ家に逆らえなくなった。

皇帝はユアンが一貴族の傀儡にされかければ見逃さない。
ロシュは過干渉を咎められ、ユアンは領主としての地位を失う。

そしてヴァセタはロシュへの返済が嵩み汲々としていて、切っても切れない腐れ縁だけが残った状態。

クロウに現状を鋭く指摘され、ユアンは兄達への劣等感、見返したい気持ち、重苦しいロシュの期待、領民、自分の代でヴァゼタを反映させたい夢、全て捨てられないんだと言った後、顔色が悪くなって目が赤く輝き、呪毒の影響を受けている顔つきになる。

 

ユアンの獅子は異形の化け物に変身し、ジルフォードのグリフレイ領のゲヴォルダンで起きた「隠れずの月」の呪毒にユアンがかかっていることがわかる。
獅子とユアンの命は繋がっているから、獅子を殺せばユアンも死ぬ。

隠れずの月は、呪毒を受けた人間の血を舐めた獣が宿主の絶望に反応しておぞましく凶暴な姿に変わる。

ガウェイン、ミゼルカ、クロウ、ケイが戦い、ジルフォードをかばってミゼルカが獅子に噛まれて大怪我を負う。
フェルがクロウの助けを得て、ユアンに「夢は叶う、叶えるんです」と呪いの逆さまを言って、ユアンの呪毒を解き、ユアンは獅子二頭を呼び自分の両腕に噛みつかせて二頭を止め、二頭は元の姿に戻る。
(たぶんユアンの動物への能力で大人しくさせた)

 

ユアンの呪毒騒ぎは解決、しばらく眠っていたユアンが目覚めた後、ユアンに皇帝の手紙は偽物だったと打ち明ける。クロウはフェルと一緒にやった黒龍城の予算を節約した書類をユアンに見せ、「お前が自立して事業に専念できるよう資金繰りの相談に乗る」という。

ユアンはクロウは何事も苦もなくやってのける人だと思っていたが、水面を優雅に滑っているようにみえて水面下で懸命に漕いでいる水鳥のような人だったんだなという。
そしてユアンは「商路の件は前向きに検討する、俺もちゃんと自分の力で水を掻いていきたい」という。

フェルが重症を負ったミゼルカの様子を見に行くと、枕元にジルフォードが座ってミゼルカを見ていた。
ジルフォードはミゼルカの想いを受け止め、彼女を傍に留めておくために護衛と主であることを選んだのだということをフェルは知る。ミゼルカの身分で妃になることはできないため、立場の不安定な妾にするよりも、彼女の生き方を尊重した形。それが彼らの出した答え。

 

フェルは、自分の瞳の呪毒を解く力をクロウの為に使い、呪毒の脅威をクルヴァッハから退ける彼を助けようと決心する。いずれ去る身なので彼への想いは伝えない。

ジルフォードとユアンがクルヴァッハを去る前夜、晩餐会が開かれ、フェルはジルフォードに贈られたドレスを着て、思いっきり着飾られる。
そして晩餐会ではジルフォードが持ってきた領地の名産の酒を勧められて、あまり酒を飲んだことのなかったフェルは酔っ払ってしまう。

それをみたクロウがフェルを、星が綺麗だから外に行こうと誘って連れていき、四阿に2人で座る。
酷く酔っ払っているフェルはわけのわからないことを連発。クロウは持ってこさせた酔冷ましを自分の口に含み、フェルに口移しで飲ませる。
そしてフェルは酔っていて覚えていないだろうと思いながら、「お前だけを見てきた、お前が大切だよ、今までもこれからもずっと」と言い、最後に「大切なことは変わりない。たとえお前が本当のシレイネではなくても」という。

 

フェルはクロウにお姫様抱っこされて部屋まで運ばれ、翌朝目覚めたときには、ジルフォードもユアンも発った後だった。
二日酔いで途中から記憶が定かではないが、クロウに言われた「たとえお前が本当のシレイネではなくても」という言葉は覚えていた。

ユアンが皇宮でリグレインに招かれ不思議な艶のある紅茶を出されて飲んだと聞き、リグレイン妃が呪毒と関係ある可能性が濃厚になる。
ユアンは中央教会で幼少期を過ごしたため、教会の上層部と繋がりがあり、今回迷惑をかけたお詫びとして中央教会に直接渡りをつけてくれるらしい。
またユアンからの情報で、中央教会は最近、「赤い病が来るから」という理由で、妙な増改築を続けているらしい。赤い病とは呪毒を暗示する言葉。

ティカルの妖精伝承、パールが調べようとしていた教会と「聖詩篇」

クロウはフェルから同じ想いを返してもらえることはないと、一方的に想い続けるつもりでいたが、それだけでは満足できなくなっていることに気付く。
「あいつの心が欲しいのか、俺は?」

 

作者さんのあとがきによると、4、5巻がシリアス気味だったので、6巻は箸休め的なお話にしたとのこと。
だからということなんでしょう、今回、新しい呪毒「隠れずの月」は出てきたけど、妖精や呪毒関係の話に進展がありませんでした。

謎メインで楽しみにしている私には残念ですが、面白くなかった事はないです。
フェルがクロウへの気持ちを自覚して素直になるようにアドバイスを受けたりしたせいか、前ほど、クロウに反発してあれこれギャーギャー言ってばかりじゃなくなったので、そこがよかったです。

ユアンは、クロウやジルフォードによると地味で無個性みたいな感じだったので、すごく大人しい人なのかと思ったら、だいぶ違いました。かなりくだけた口調というか、むしろ乱暴な口調で、地味ではないなと思いました。
フェルの解釈によると、ジルフォード、クロウのような超人変人組ではなく、常識人なだけってことのようですが。うーんそうなのかな、常識人っていうのもなんかなぁ、言ってる内容は、そうなのかもしれないけど口調が荒いのであんまりそういうイメージじゃなかったなぁ。

 

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