漫画「彼女のいる彼氏」矢島光 感想

 

タイトル通り、彼女がいるのに主人公の咲(サキ、女性)にちょっかいをかけてくるゲスな男、徳永と、同じく最初は彼女がいてちゃんと別れないうちに主人公と付き合い始めたけど元カノとは別れて主人公だけになるものの、仕事優先で恋愛には不器用な佐倉くんとの間で揺れ動く咲の恋愛模様と、大手広告会社の仕事の実情が見れるマンガ。

完結。comico で無課金で読めます。7話まではいつでも無料。8話以降は無料チケットが必要。
コミックもでてるようです。
読み終わってから知りましたが、このお話の舞台になる広告会社は実在する会社で、作者はこの会社の元社員だそうです。でも元々漫画家になりたかったとか。
絵柄が好みなので気になって読みましたが、なかなかおもしろかったです。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

 

デザイン会社を舞台にした恋愛マンガは以前に「午前3時の無法地帯」も読みましたが(全部は読んでない。最初の方と最後の方)、そこはパチンコ専門のデザイン会社で小規模な会社だったので、無理を言われて徹夜するようなとこは一緒ですが、やっぱり大手は違うなーと思いました。仕事の規模も大きいから一人じゃなくてチームで複数の人と仕事するし、その分、デザインを統一するための仕様書みたいなのが必要だったり、ちゃんとしたプレゼンをして社内でも顧客にもチェックされないといけないし、大変さが違う。そして働く人たちの仕事に対する意識も高い。
たぶん業界内のトップレベルのデザイナーさん達の仕事ぶりなんだろうなと思うけど、こんなに真摯に仕事に打ち込むってスゴイなーというのと同時に、大変な時は徹夜するの当たり前な仕事は嫌だなーと思った。
徹夜とか勤務時間の長さは「午前3時の無法地帯」の方が酷かったけど。「午前3時の無法地帯」はもう日常的に会社に泊まるの当たり前みたいになってて、そういうのは私は無理だわーと思いました。
「彼女のいる彼氏」の方はそこまでじゃなくて、大変な時だけ、だけど、若いうちはその大変な時がままあるよ、って感じ。若いうちならできたかもしれないし、ある程度の時期までならいいかもしれないけど、それが当たり前〜なとこでは働きたくないなぁ〜。

 

 

でもまあとにかく仕事の様子はスゴイなーと思いながら読みました。自分もこうしたいか、こんなのは嫌かどうか、感じ方は人それぞれだと思うけど、こういう仕事の実情が見れるというのは、これから就職をする人、社会人になったばかりの若い人にはためになるんじゃないでしょうか。

恋愛の方のお話は、というと、とにかく徳永が、長年付き合ってる彼女がいるらしいというのは最初の方から読者にはわかっているのに、咲にキスをしたり、ちょっかいを出すレベルじゃない感じで、本気で付き合おうとしてくる神経が理解できず、そこら辺どう思ってるのか、というのが不思議でならなかったです。

最初に咲にちょっかいかけてたのは(キスもしてた)徳永の方ですが、その後で佐倉と急な展開で咲は付き合うことになりました。でも佐倉くんは元彼女への気持ちはなくなっているものの、ちゃんと別れてなかったんですよね。別れようとは言ったものの、やだやだと駄々をこねられ泣かれてしまって、それに対して強い態度をとれず、ちゃんと別れたことになってなかったんです。

 

 

彼女と佐倉が野外の音楽フェスに行ったエピソードが出てきますが、うん、こんな態度の彼女、めんどくさいって思うよね。見たいバンドが次出るっていうのに行こうとしたら、彼女が疲れたと言って一緒に休憩するのを強要してくるような態度をとってくるし、会社の同僚の女性と会話してたのをなじられるし。
そりゃーいやになるわ。ここで相手が別れたくないというのに対してどうしようか迷っちゃってはっきりさせられなかったのはまあしょうがないとして、咲と寝た後で元カノにちゃんと別れを告げようとしなかったのは佐倉が悪い。そのせいで元カノが会社に来ちゃって咲を傷つけることになっちゃったし。

佐倉と元カノの出会いエピソードではなんか全然別人のようにいい感じだったのにね、彼女。
別れを告げても受け入れずに病んだ態度をとられるって、すんごいめんどくさい女の人だったから、佐倉はかわいそう。でも数回何かあっただけでストーカーとか自殺未遂とかしてそれ以上引きずられなかったので幸い。しばらくして街で見かけた時に別の男の人と腕を組んで歩いていて、元カノも佐倉もお互いに気付いて、元カノの方が佐倉にドヤ顔?みたいなのしてきたのを見て、佐倉が「女って怖い」って思ってたけど、いやそれよりそこは次にいってくれててよかったってホッとするところじゃないのって思った。ずっと執着されてストーカーとかされる方が怖いよ。

 

 

佐倉くんは入社2年目で、でも有能なデザイナーで、デザインチームのチーフに抜擢されます。でも彼はマネジメントよりもデザインする方が好きだし性に合ってるし、どちらかというとコミュニケーションは苦手な方なので、大変な思いもするし悩んだりもします。彼をこの会社に引き込んだ上司で前任者だった人は、だからこそあえて若いうちに苦手なことを経験させるためにやらせたんだそうです。
なるほどねー。この上司見た目はなんかちょっとチャラい感じもするし、そんなにいい人っぽくないんだけど、仕事は有能な人みたいです。

でも学生時代に一緒に働いた人から声をかけられ、やりたい仕事だったので、佐倉くんはそっちにいくことにしますが、でも今やってる仕事を投げ出して辞めちゃうんじゃなく、ちゃんと軌道にのせるまで仕事して、いなくなった後も仕事が回るように次の人材(新人の女の子と咲)を育ててから辞めます。(咲は4年目で佐倉より先輩なんですが能力的には佐倉のほうが上なので)
そういうとこエラいです。自分に向いてないから嫌で投げ出して辞めるんじゃなく、ちゃんと区切りがつくまで仕事していってから辞めるっていうところ。(人材を育てるっていっても何年もじゃなくて数ヶ月ですけどね)

 



そんなまだまだ社会人になってバリバリ仕事でこれから成長していくぞーっていう時期の人なので、仕事優先で、彼女への対応がおざなりになってしまうのも仕方ないよねって思う。そんな人に元カノみたいな人はめんどくさいでしかない。咲ちゃんは同じ仕事、職場だし、仕事への理解はあったと思うけど、佐倉くんのちょっとした気遣いが足りなかったんだろうね。
それに加えて咲ちゃんは精神的に強い人でもなかったから、いろいろ気遣ってくれるマメで優しい徳永の方にひかれちゃったんでしょうね。
佐倉の仕事が超忙しくなって、全然プライベートで会えないし、会社では会うのに全く優しくしてくれないしで、そこに徳永のほうがちょいちょい優しいことを言ってくれたり気遣ってくれたりしてくるので、咲ちゃんは徳永の方にフラフラいっちゃいます。
他に好きな人ができたと咲が佐倉に言うとアッサリ佐倉は、(その人と)付き合ったら?と言ってしまい、たいして佐倉に想われていなかったんだと咲は思ってしまいます。でも実はなんともないことはなくて、ただ仕事が大変で優先させてて、彼女への気遣いができない不器用な人だっただけで、佐倉は傷ついて落ち込みます。

 

 

そしてなんといっても徳永ですよ。徳永の彼女は、咲たちの仕事にも関わってきたリンだということが後半になってわかります。徳永がリンのことをどう思っているのか、リンがいるのに咲と寝たりしてることをどう思ってるのか、彼の心情はあまりはっきりとは描かれません。「彼女も好きだし咲のことも好き」とは言ってます。たぶんどっちも好き、同時に二人と付き合いたい、というのが成立してしまう人なんでしょう。
咲とHする直前に「彼女いるよね?」と聞かれても、平然と「いるよ」と言ってしまい、さっきの「どっちも好き」というセリフを言う徳永、そしてこの時点では咲も佐倉と別れてなかったので、「自分もでしょ」と返して何も言えなくなった咲とHしてしまうゲスいやつ。咲もほんとはそうなるってわかってて徳永の部屋にきちゃったわけで徳永だけが悪いわけじゃないけど。
徳永は咲のことをセフレとか、遊びとか考えてたわけじゃなく、ほんとに好きは好きだったんだろうと思う。

 

 

咲は癒やし系キャラなんだろうな。精神的に強くないとこも含めてフワッとしたとこを徳永にも佐倉にも好かれてるんだろうと思う。ハムスケとか呼んでるのからしても、そういうなんていうか、かわいくてしょーがない愛玩の対象なんだろうね。
でも、最後の咲と一緒にベッドに上にいるところをリンに見られた後の咲との会話で、「咲だけのものだよ」とは言うくせに、「リンさんより好きって言ってほしい」という言葉には答えない。咲だけのものじゃないじゃん。思いっきり嘘じゃん。でもそこまでは嘘つかなかったってことでもあるのかなと思うけど、咲だけのものって言っておきながら、リンより好きとは言えないって何なんだ。なんでそんな中途半端に嘘つくんだよ。

 

 


でもそこから推測するとやっぱり長い付き合いで冷めてる風だったけど、徳永の中ではリンが一番で、リンに振られたかもしれないって思っても咲を繰り上げ一番にできないくらいにリンが一番だったのかなぁ。
まあこの時点ではまだリンにはっきり言われてるかわからないし、振られたかもしれないっていうのは徳永が咲に言ってるだけだから、ほんとはそう思ってないけど言ってるだけ、なのかもしれないし。
リンに見られた時も、何もしてないとかシレッと嘘つけちゃう人なんだよ、ほんと酷い。
でも咲には彼女がいることを認めたのにリンには誤魔化そうとするんだね。そこがやっぱり一番ってことなのかなぁ。

ここの後、数日後か、1週間以上たってるのか、時間経過がよくわからないけど、咲も徳永もアッサリわりとふつーな感じで話をしていて、咲はもうふっきっちゃってるし、徳永はあんな対応したくせに一緒にアメリカへ行こうとか、ふざけた感じで誘ったりしてるし、そんな態度がとれるのが二人ともビックリですよ。いやでも少し間があって咲はもうふっきってて気持ちを切り替えちゃってるんだなと思えば不思議ではないけど、徳永ですよ。リンより好きとは言えなくて、バイバイと泣きながら言われた相手に、ふざけた感じとは言え、一緒にアメリカへ行こうとか言える神経がよくわからない。
徳永が、この後、リンにふられてどう感じてたのかとかも全くでてこないのでわからない。

 

 

この時点ではアメリカに行くことになったから、またリンのところにも行けるって思ってたのかなぁ。どうだろう。最終話で他の人のその後は出てくるけど、徳永だけどうなったか全くでてこなかった。こんなゲスい徳永はもっと酷い目に会うとか、リンにふられて落ち込むとかしてほしかった。

徳永は優しいしマメで気遣いのできる人だから、フラッと惚れちゃうけど、結局そういうのは表面的な部分なんだろうと思う。

リンは徳永と咲がベッドの上でいるとこを見て、修羅場になりそうな場面で冷静に対応して、むしろ咲のことを気遣っててすごい人だ。たぶん今までにも徳永は浮気してて、それに気付いてたけど気付かないふりをしてきたんじゃないのかな、と思う。今までのチラッとでてきたセリフ、優しいから楽、浮気性は変わらない、っていうのとか、女友達がみんな徳永のことを好きになっちゃうから女友達がいないとかから考えると。
長い付き合いの中で、いろいろと徳永のやってることを見透かしてたんじゃないのかな。
そしてなんとなーく楽だから続けてきたけど、もうやめようって思ってて、それでアメリカに行くことに決めたんじゃないのかな。咲のことがなくても。

 

 

だからリンはもう徳永にあまり気持ちはもうなくなってて、だからあそこで感情的にならず冷静に対応できたんじゃないかという気がする。あの場面を見ても、ああやっぱりね、やっぱりこういうことしてたんだねっていう、あきれた気持ちだったんじゃないかな、だからこの人となんでもないとかすぐ言えちゃったんだと思うな。リンが徳永のことをすごく好きって思ってたら、いくらなんでも「この人とはなんでもない」とは言えないだろうと思う。最後の一瞥は、嫉妬して怒ってるんじゃなく、軽蔑じゃないだろうか。
それでもあんな対応ができるのは彼女の人柄がいいからだと思うけど。
むしろ咲ちゃんのことをかわいそうだと思ったかもしれないと思う。こんな男にひっかかっちゃって。
でも「徳永はやめとけ」とは言わなかったから、私はいなくなるから大丈夫って言ってただけだから、そこまでは思ってないのかなぁ。大丈夫を連呼してたから、実はやっぱりちょっとショックは受けてて「大丈夫」が言えることの精一杯だったのかもしれない、という気もする。
そして最終話で、リンちゃんが徳永じゃなく、(おそらく)アメリカ人男性と結婚して子供ができててよかった。

 

 

でも徳永とリンが2人で一緒のシーンや会話ってほとんどなかった。だから2人の関係がどんな感じだったのかがいまいちよくわからず、それぞれが相手について話している時の様子から推測するしかない。
徳永は最初の方で彼女についてよく続いてるなみたいなこと言われて、努力ですよ、と答えている。他にも彼女と連絡をとってるシーンはたまにでてきたけど、いつもにこやかなとか好きーって感じがする表情じゃなかった。努力してでもキープしておきたい人だったのかもしれないけど、そんな努力をしてきた人にふられてどうだったのか、落ち込みとか見たかったなぁ。
リンの方も表情はにこやかだったけど、優しいから楽とか、浮気性は変わらないとか、言動はちょっと達観してる風で、落ち着いてる感じだった。大学生の頃から何年もつきあってるならラブラブじゃなくて落ち着いてておかしくないと思うけど、お互い好きって感じをあんまり感じられないカップルだった。

 

 

そして咲ちゃんはキラキラ女子のみなさんに二股は地獄だよという話をされた時は、それでも大好きだからやめたくないって言ってたのに、よく徳永のことを思いきれたなぁと思った。最初に徳永とHしちゃった後、家にあったクッキーで彼女がリンだと気付いて、二股されるのは地獄と話をされても、好きでやめられなかったのに。事後に彼女に鉢合わせするっていうのは、ただ知るのとは違って、経験はかなりショッキングな出来事ではあるけど、でもここではまだ吹っ切れてなくて、その後、リンにふられたかもと言って、咲だけのものだ、俺も好きだよって言ったくせに、リンがアメリカに行くことを知って、リンより好きって言ってほしいと言われたのに言ってくれない徳永の態度で、1番(=リン)がいなくなっても1番じゃない人(=咲)は繰り上がれないんだって、1番になれないんだって思ってやっと吹っ切れたんですね。
二股されてても、1番になりたいとは思ってて、1番になれるかもという期待を持っていて、でも1番がいなくなってさえ無理なんだと思い知って、やっと、ってことなのか。
でもほんとに徳永がどう思ってたのか知りたいよ。

 

 

全52話中、咲が徳永とHしちゃったのは46話、そこから佐倉と別れて、二股でも好きだからという話をして、2回めのHの事後、リンに見られて徳永にリンより好きって言ってもらえなくて吹っ切るまでが51話と、最後で結構怒涛の展開になってます。二股が長引かなくてよかったね。
WEBマンガで52話だけど、コミックでは2巻だそうで、普通のマンガの話数でいうと10〜12話ってとこなのか。最後の怒涛の展開部分で1話分くらいって、ほんとに怒涛の展開だな。
WEBマンガってどれもいつも展開遅いって思うんだけど、普通のマンガより1話のページ数少ないってのもあるのかな。週刊と月刊でもページ数違うし一概にいえないけど。
これの場合は読み始めた時に既に完結してたので、comicoPLUSでCMを見て無料チケットとかもあって数話見れたしどうなるか気になっちゃうから先に最後らへんを読んじゃいました。だから1話でこれしか進まないのか、っていうヤキモキはなかったんだけども。

 

 

最終話で4年後になり、同僚のルミちゃんの結婚式で、咲と佐倉は再会し、でもここではどうにかならず、その後、佐倉が会社に戻ってきてまたまた再会し、再びつきあうことになって終わります。
再会の時、遅刻しなければ雨降ってなかったとか、つきあってください、の後に、前は言えなかった「好きです」を佐倉が今回はがんばって言ってくれたり、最初のHのときに佐倉がやった咲の腕を自分の首に回させるのをまたやったりと、前にでてきたエピソードがまた出てきてちょっとニヤッとさせる感じなところがにくい。
佐倉と咲でハッピーエンドで終わってよかったです。
お互い4年たって、今度は落ち着いてつきあえるんじゃないかな。
そして、徳永が痛い目を見てほしかった。どうなったのかやってほしかったなー。

結構ダラダラ書いてしまいました。
考えてることをまとめないといつまでも頭の中でぐるぐる考えちゃうので書いたけど、でもやっぱり書くのに時間かかりすぎて、なんかそれもどうなんだと思ってしまう。

 

 

追記 2018.11.30

完全版というコミックも出ていてこちらは全4巻で何が違うのか、番外編みたいなオマケがあるのかと思いましたが、どうやら先に出ていたコミックはwebマンガをコミックの形式に構成し直したもの、完全版はwebマンガの形式をそのままコミックにしたもの、のようです。


amazonのレビューを見るとだいぶ不評なので完全版を試し読みしてみたら、確かに・・・不評の理由がわかりました。

スマホの1画面を1ページにしているので、横幅1/3くらいしか絵がなく左右は白紙、ページによってはなぜか上下もかなり白紙で1コマ分くらいしか載ってないページもありました。


ページ数が多くなって4巻になったのはこういう理由か。
試し読みしてから購入しないと後悔すると思います。

 

 

 

 

 

 

 

他に彼女がいる人と付き合う話↓

 

同じく広告代理店で働く様子が描かれるマンガ↓