漫画「ライアー」三つ葉優雨 感想


<↑試し読み> Renta!

 

短編集。
表題作は、家庭環境のせいで自分がないけど演技が上手な女優と、彼女と似た過去を持つ人気脚本家の恋のお話。端的に言うと、あまりおもしろくなかったです。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

 

ずっと前に試し読みして気になってた本だと思うけど、今はその頃と気分が違うためなのかどうかわかりませんが、全体的にイマイチでした。

いろいろ突っ込みどころがあります。
設定等の細かいところは置いといたとしても、お話の内容にグッとくるものがありませんでした。

 

ライアー

幼い頃に母の虐待を受けて保護され、セラピーで受けた演技がキッカケで女優になったリン。
子供の頃、感情を表に出さない子だったため親に嫌われ精神科に通わされたことのある人気脚本家のカズマ。

脚本家になってもずっと焦燥感を感じていたカズマは、テレビでリンの演技を見て自分の脚本のドラマだということも忘れて、涙が出た。

それからずっとリンのことが好きだったようですが、彼女が自分が脚本のドラマのオーディションに来た時、「あんた そのままじゃ破滅するよ」と言ったり、強引に彼女を連れ出して「あんたの演技 気に食わないね」「退屈な女」と言ったりします。

彼のこの、最初にリンに対して突き刺さるような言葉を投げかけたのは、彼女に発破をかけて、カラッポなままじゃなくて、自分からなにか動くように、もっと奮起させようとして言った言葉ってことだったんでしょうか?

 

よくよく考えると、ああ、そういうことなのかな〜という気がしましたが、最初読んだ時は、カズマの方が先にリンを好きで構ってきてたみたいなのに何であんなキツイことを言ったんだろう?と思いました。

それによって「彼女が変わった」というのもイマイチわかりにくかったのもあって、彼の言葉が彼女を奮起させた、いい影響を与えたっていうのがわかりにくかったせいかな。

リンが用意された白い衣装じゃなくて赤いのを自分で選んで、それを見てカズマは喜ぶんだけど、それっていいのかな?そんな勝手な行動って思っちゃって、これが彼女の良い変化ってあんまり感じられなかったんですよね。

リンを連れ出す時に、カズマは「今この業界で俺に逆らえるやつなんていないと思うけど」と言ってリンのマネージャーに自分の名刺を投げつけるんですが、うーん、いくら人気な脚本家だからって、そこまでの権力はないんじゃないかなぁ・・・と思ってしまいました。

若そうだし。後ろ盾なさそうだし。

その後、リンが精神科の治療を受けていたことをマスコミに騒がれ、追いかけられるリンをカズマが助けて連れ帰って結ばれちゃうという急展開なんですが、そこはリンの方も最初からカズマが気になってたようだし、彼の言葉が心に響いていたようなので、それも有りなんだろうなと思います。

「あんなキツイこと言ってたのに好きだった」ってのは、わかるとして、彼の言葉が彼女の心に響いたってのがわかりにくかったので、「あのキツイ言葉はなんだったの?」って思っちゃった話でした。

 

恋の灯、3つ

幼馴染の男2人、女1人の高校生の三角関係の恋模様。
男の子達は二人共、その女の子、コノカの事が好きだけど、コノカはずっと片方の男の子、ケイの事が好きだった。
けど小学生の頃、階段から落ちたコノカをかばって額に傷が残ったダイに負い目を感じていて、ダイに告白されて、付き合うことになる。

ここでケイは大人しく引いたままにならずに、ダイの見てないところでコノカの手を握ったり、教室で2人きりの時に、キスしようとしたりするのが、スゴイなと思ったんですけど、その前に、ケイが他の子に告白されたのをコノカが覗き見してるのに気付いたから、なのかな?

コノカは自分に気持ちがあるんじゃないかと思っての行動だったのかな。

この告白した女の子が、ふられてキスだけでもって言うのもスゴイなと思う。
そして言われたままキスしようとしたケイも。
え?そういうのアリなの?って思いました。

どっちも若いがゆえ、なのかもしれないけど。
いろんな意味でダメでしょって思います。
男の方がプレイボーイでキスくらいなんともないよって感じの人だったら、好きでそれでもいいからって感じでキスしてもらうってのはアリかなと思うけど。

告白を断る相手にキスできるの?する気になるの?っていうのと、キスなんかしたら余計に気持ちに踏ん切りつけられないじゃんって思うから。

 

で、コノカにケイがキスしようとしたところで、ダイが来て、ダイとケイが殴り合いのケンカになって、それを見たコノカが自分のせいだと自分がいなくなればと窓から落ちようとしたのをケイが助けます。

謝るコノカを見て、ダイが、コノカがケイを好きなこと、自分の額の傷に負い目を感じているから断れないだろう事をわかってて、コノカに告白した自分が悪い、それを利用してでもコノカを手に入れたかったと告白します。

これでこんがらがってた三角関係は、想い合う同士が両思いになって、付き合うことになって終わります。

コノカが窓から落ちようとするのを見て、「えぇ?そこまでする?」って思いました。
それも言ってしまえば若さゆえなんだろうけど(なんでも若さゆえになっちゃうけど)、そこまで思っちゃうのもしょうがないって思うほど気持ちがついていけてなかったので、「えぇ?」って感じでした。

最後は、ダイが部活のマネージャーから告白されて付き合うことになったって事もわかって、丸く収まってる感じで、終わってるけど、あんなゴタついたのにまた3人で仲良くできるんだ?っていうのが驚きです。

コノカは死のうとまでしたのに?
若さゆえの過ちで、あの時は気が高ぶってやっちゃったけど、ほんとはそこまでの事じゃなかったなみたいになってんのかな。

 

すはだの温度

真面目でお硬い高校生の女の子(チヅル)と、チャラい男の子(エイタ)の話。
チヅルは、中学生の頃、姉の彼氏を好きになって、彼氏が家に来ている時に、彼氏がかわいいねと言ってチヅルにキスしたところを姉に見られ、彼氏はチヅルが誘ったと言い訳して姉は彼氏を怒るという事があって、チヅルの中では姉の彼氏を取った過去になって、罪悪感から男子を避けるようになった。

そんなチヅルにエイタがちょっかいをかけるようになって、いきなりキスするとかだいぶ強引な感じで迫って、最終的には結ばれるんだけど、実はエイタは図書室でチヅルの寝顔を見て一目惚れしていたというお話。

ちょっかいかけ始めの頃、エイタがチヅルの背後から口を塞いできて「びっくりした?」ってやるんだけど、そりゃー男性恐怖症じゃなくても、怖いわ!
よく知った相手だったとしても、そのやり方は怖い。

そしてチヅルが中学生の頃、姉の彼氏を取ったことがある話をすると、エイタが「ほんとは男好きだけど今は謹慎中ってこと?」って言うのが酷すぎる。

 

最後にエイタがチヅルに一目惚れしてちょっかいかけてきてたってのがわかるんだけど、それなのにその発言なの?っていうのが、最後まで理解できないまま終わりました。

自分のトラウマな過去を打ち明けたのに嫌なこと言われて、強引にキスされてを繰り返されてるんだけど、好きになれる相手じゃなかったら、これものすごく嫌でしかない言動だなと思いました。

自分の好きな女の子に男好きとか言うのか、それでもいいのか、エイタは。
チャラいからああいう発言もしちゃうキャラなのかもしれないけど、そういうエイタが嫌でした。

あと、チヅルは気にしてるけど、ちょこっと出てきた姉は普通にチヅルに接してて仲良さそうだったし、過去回想をみると姉はまだ中学生な妹に手を出した彼氏の方に怒ってて、妹には怒ってないんじゃないかって感じでした。

チヅルは姉の彼氏の事を好きだったっていう気持ちがあったから罪悪感になってたってことなのかな。

それで好きだった姉の彼氏とはなんともならなかったのかなぁとかちょっと気になりましたが、チヅルから誘ったと言い訳された事からして、もうそれで終わったのかな・・・。
まあ短編なのでそこを深く追求しないんでしょうけど、本気だったならそれもありなんじゃないかとか、その過去話が結構気になりました。

 

いとしいきみへ

仲良し夫婦の両親だったが、父親が事故で亡くなり、父親に頼ってばかりだった母親がもぬけの殻になってしまっている様子を見て、自分はそうはならないと思っている女子高生の話。

ちょっとファンタジーな話で、途中、母親が突然女子高生になって娘と同じ高校に通ったり、最後は亡くなった父親が現れた痕跡があったりします。

父が現れて母親を叱ったらしく、それで母は元の年齢に戻って、元気に暮らし始め、娘もやっぱり自分の両親がうらやましいと思って終わります。

女子高生は最初から彼氏がいて、彼氏はこの騒動の協力者として登場して、恋愛要素は薄いです。

この話で気になったのは、主人公と母親の髪型。
サザエさんっぽい感じ?で、オールバックだけど真ん中が盛り上がってて、私は変な髪型だなって思っちゃったんだけど、わりとよくある髪型なんでしょうか。

 

あと、両親ともに、おじさん、おばさんな顔。
年齢的におじさんおばさんなのは合ってるんだけど、父はカッコよくもなんともない痩せ顔で、母はどんくさそうな、かわいい感じのぽっちゃり顔で、二人共ダサい感じな顔なのが印象的でした。
両親がメインな話だったし。

母親若返って高校生になると可愛い子になるんだけど、この子がああなっちゃうのか、っていう、たしかに顔の中身はあんまり変わってないかもしれないけど、おばさん顔で、何がそうさせるんだろうと考えてしまう顔でした。

娘が母の気持ちに共感して理解して一緒にがんばろうという気持ちになって、否定的になってた両親への気持ちが肯定的に変わるっていうお話で、いいお話なんだけど、あまり感じるところがなかったです。

 

 

全体的な感想


全体を通して、キャラの気持ち、ストーリーに寄り添えませんでした。
気持ちが入っていかない、気持ちがついていけない、共感できないのばかりでした。

なんでこれ買ったんだろう・・・って思っちゃったんですけど、たぶん試し読みでは続きが気になったんだと思います。読んでみないとわかんないですしね。

でもどちらかといえば同じ作者、三つ葉優雨さんの「とべない鳥」の方が続きが気になってて、それと勘違いしたんです、たぶん。

そして、軽く短く書くつもりが、書くとそれなりに長くなって時間かかってしまうのが、嫌になる・・・。
おもしろくなかったのより、おもしろかった作品を書こうよ、と自分で思う。