漫画「レネゲイド」中山昌亮 感想


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主人公は大学生の田嶋。
おふざけで殺人請負サイトを作って、依頼がきたら対象者の写真を殺されたようにコラージュして載せる、ということをしていたが、ある日、本当の殺人依頼らしきものがくる。
無視して何もしないでいると、鍵を締めて出たはずの部屋に前金の2千万円が届いていたり、期日の「4月10日」を示す数字を何度も身の回りで目にしたりして徐々に精神的に追い詰められていく。

ピッコマにて。完結。
ミステリーの犯人をネタバレしていますので、ご注意。
以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

精神的に追い詰められた田嶋は、ファミレスで働くターゲットの志津(21)をファミレスのトイレで襲うが、逃げられて通報され、警察に逮捕されるが、すぐに釈放される。
田嶋は志津に会いに行き、事情を説明するが、志津に受け入れられなかったため、諦めて帰る。

志津は田嶋の話をすぐには信じられなかったが、殺人依頼のターゲットにされていると言われて怯えていた。自分の部屋で眠っていて気付くと、部屋の天井や壁の全面に自分の写真が隙間なく貼られ、田嶋に襲われた時の音声がラジカセから流れるという事態に、警察に電話するものの、警察に志津の家の電話番号から無言電話が何度もかかってきていると言われ、信じてもらえない。

実家に志津の友人の女性から「4月10日よろしく」と電話があったと言われ、田嶋ではないのかと思い、田嶋に助けを求める。
田嶋と志津は、ただ怖がっているだけでなく腹が立つ犯人に対抗するため、4月10日までの5日間、協力することになる。

 

田嶋は大学の先輩で売れないライターをしている今井に相談に行き、田嶋達の殺人依頼の話を人の興味をひくようにまとめて書いて、ネット上に載せて犯人の気を引いてこちらに何か手出ししてくるようにしてほしいと頼む。
田嶋と志津は今井の知り合いのハッカー京本(キョウタル)を紹介され会いに行き、殺人依頼の書き込みから痕跡を辿ってもらう。キョウタルが突き止めたのは、軍隊の運営する団体のHPだったが、更に調べるとそれは見せかけだった。

キョウタルは一家惨殺事件の生き残りで、事件の後、ネット上でその事件を面白おかしく茶化した連中に怒りの矛先を向け、度を超した悪ふざけをした人物を特定し、そいつがやったように見せかけて、危ない非合法団体のコンピュータに攻撃をしかけた。ネット上で悪ふざけをして喜んでいるような連中は検挙して世にさらしても喜ぶ奴もいるので、闇に葬られただろうと今井は言う。

 

今井を連れて志津の部屋を見せると、志津のベッドに腰掛けると出てくる鉄パイプが仕掛けられていたり、今井の車にキーを回すと爆発する仕掛けがつけられていたり、ボーガンを射掛けられたりして、地下鉄の通気口を通って、今井の事務所に戻る。

キョウタルは、DVDを仕込まれて警察に逮捕される。
田嶋が弁護士に扮してキョウタルに接見に行き、キョウタルの歯に書かれた文字を読んで、キョウタルからのメッセージを受け取る。キョウタルの指示通り、駅のロッカーを開けると侵入や乗っ取り等のハッキングの手口がマニュアル化された文書があった。

田嶋が戻ると志津が事務所の外の階段に震えて座っていて、中に入ると、血だらけのジャケット、頭髪、メガネがハンガーにかけられてぶら下がっていた。
頭髪が本物かどうか確かめようとするとドアが閉められ鍵もかけられてしまい、火炎瓶のような物も投げ込まれ、田嶋は窓ガラスを破って脱出する。

 

近くのコンビニにトイレを借りに行っている間にこうなっていたと志津は言うが、田嶋は不信感を抱く。しかし、志津が敵にしろそうでないにしろ、これで終わりにせず敵とのつながりを絶たないために、志津に今までの自分の暴言等を謝り一緒に行動しようと言う。

田嶋と志津は、身を護るため常に人の目がある場所にいることにして健康ランドに連日通っていた。いつの間にか釈放されていたキョウタルと連絡をとろうとしているがなかなか見つからない。

田嶋は健康ランドのサウナに閉じ込められるが脱出し、田嶋を閉じ込めた男を捕まえ、志津と共に追い詰め、情報を聞き出す。
田嶋と志津の行動はネット上で配信されていて、彼はそれを家で見ていた一人だと言い、彼は先走って行動してしまっただけらしい。そのため誰が配信しているのか等のことは全く知らないが、これが全て終わった後の11日にあるお店でオフ会が予定されているということを聞き出した。

 

あと1日になり田嶋と志津はショッピングや遊園地に行くなどして遊んで過ごす。そして夜は志津に言われてラブホでカラオケをする。
そして志津は「ピーピング好きの変態さん達見てますかー私達がセックスするとでも思いましたか、さあどうでしょう、せーぜーそこでヤキモキしていてくださーい」と挑発的なことを言って、田嶋にキスをする。
この後、二人がセックスしたのかはわからない。

翌朝、田嶋が目覚めるとベッドに大量の血がついていて、志津の姿はなかった。
田嶋はオフ会会場の店に行こうとするが、店の前でキョウタルに止められる。
キョウタルはあれからも敵の尻尾を追っていたらしく、「ここにいる連中は何もしらない、報復したいなら相手が違う」と言う。
田嶋とキョウタルは別の店に入り話をする。
キョウタルはいろいろと調べがついていて、チャットの履歴、メンバーの本名&住所の名簿を田嶋に見せる。そしてこの件の犯人を誘い出したと言って場所を田嶋に教えてくれる。
キョウタルは田嶋に、「どんな状況になっても自分は味方だ」と言う。

 

犯人を呼び出した場所に現れたのは今井だった。
なぜと聞く田嶋に「俺がライターだから、俺が書いたホンで誰かが喜ぶ、それが嬉しいから」だと言う。なぜ田嶋かというと、たまたま田嶋が今井の後輩で仕掛けがしやすく、田嶋が殺人サイトをやっていて、田嶋が相談を持ちかける立場に今井がいたから、だという。

そして志津は殺されておらず、志津をホテルから連れ出して相応のギャラを払って、今回のことを忘れるよう説得したら応じたらしい。
「お前だって、今回の制作費はほとんどお前のギャラだ、1千万オーバーだ、ハリウッド俳優かっての、ははははっ」という今井の言葉に、田嶋はブチ切れ、今井を何度も殴るが、今井はその様子を文章のように口に出して言い、「俺って文才ないなぁ」などという。
気が済んだかと言って去ろうとする今井に「今度は俺が追い詰めてやる、必ず」と田嶋が言うと「いいなそれ、次作の構想ありがとよ」と今井は言った。

 

裁判で、「事前に被告達に2千万円受け取っている事実もかんがみ、被告達の申し出にそって20万円の賠償金で和解は妥当以上」となる。
ネットで配信動画を見ていた連中は、20万を頭割り、運営費払ったと思えば、等と呑気に話している。「ごめんね、悪気はなかったんだけどさ、しかしいいもの見せてもらったよ、でもやっぱ最後のホテルはヤルべきでしょ」というお気楽な言葉に田嶋はブチ切れて殴ろうとするが止められる。

「自分たちは平凡な人間でどんなことが起こってもただの第三者で、とんでもない悪意や殺意の対象になるなんて思いもつかない、でもな それ間違い」と田嶋は彼らに言う。

裁判所の外で、ゲロを吐き、「このまま日常に戻れ・・と? 無理言うなって」と言う田嶋。
パソコンで田嶋の後ろ姿の動画が配信され、チャットの文字で「目が離せない これからどう出ると思う? なんか構想はあるらしい」等と書かれている画面で終わる。

 

感想

ネット上で面白おかしく楽しむ第三者の問題を描いていて、「いぬやしき」にもそういう人たちが出てきていた。もちろん他にもそういう作品はあるだろうけど、私が読んだ中では「いぬやしき」があったなーと。「いぬやしき」ではそういった人たちは、殺されるという決定的な報復を受けるけど、この作品ではそういう人たちは裁かれずに終わってしまう。
法的手段では、そういうものなんだろうと思います。

無責任に面白がっているだけの人たちが、人を傷つけているのに、それを公的手段ではどうにもできないやるせなさ。

でもここでは描かれてないけど、キョウタルが味方だと言ってくれたこと、彼が過去にやった報復を考えると、この後、キョウタルに頼んで同じ手口で彼らに報復することは可能なんじゃないかと思います。もう彼らの調べはついているんだし。

一番謎に思ったのは、売れないライターの今井がどうやって2千万円もの制作費を用意したのか。ネット配信を見ていたのは、限られた人たちだけのようだし、20万の割り勘でさえ持ち合わせがないうんぬん言ってるくらいの普通の人達のようだから、彼らが出したとは思えない。
一体どこから出たのか?

 

どうやら掲載誌が廃刊になり打ち切られてしまった作品らしいので、本当はそこら辺も含めて描かれるはずだったのかもしれないけど、2千万円の説明はないまま終わってしまいました。

それと今井一人がやるのが無理な仕掛けがあったので、ボーガン等、共犯者がいたはずだけど、それについても語られず。ボーガンがあんなに外れるだろうかと田嶋が疑問を口にしているけど、むしろギリギリで外す方が難しいと思うんだけど、そんなプロのボーガン撃つ人がいたのかっていうのも、とても疑問。

レジで「¥410」ばっかり打ち出されるとか、どうやって仕掛けたの?って思ったけど、コンビニはネットにつながってそうだから、キョウタル以外のハッカーに頼んだってことなのか?にしてもできるのかな。

 

志津の部屋に写真を貼るのだって、かなり大変だし、途中起きないように薬をかがせたとか?そして志津が部屋を出て戻るまでの間に、今度はベッドに鉄パイプを仕込むのだって、かなり大変な気がする。
携帯の時刻を固定できるのか、いつの間に田嶋の携帯に仕掛けたのか。
田嶋、志津、ホテルの部屋の鍵を開けられるような技能を持った人が必要だったり、キョウタルを逮捕させ、キョウタル、田嶋を釈放させるのができたり、と限られた普通の人達に配信してるだけの動画にしては、規模が大きくないか?って思いました。
一歩間違えればボーガンとか死んじゃうのに、どうするつもりなのかって思います。

本当はもっと規模の大きい話だったのがそこまで描けないまま終わってしまったのかもしれないけど、サラッと描かれてるけど実際やろうとしたら個人レベルじゃ難しいんじゃないのっていう、どうやってやったのっていう部分があって、うまくまとまってるとは言えないと思うけど、どうなるのって思う程度にはおもしろかったです。

ただ、こういう内容の動画が配信されてたとして見てて面白いのかっていう単純な疑問もありました。私は個人的に面白くないです。

 

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