漫画「メモリスト」Jaehoo 感想(1)

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ピッコマにて。完結。全59話。
他人の記憶が読み取れる超能力を持つ刑事、椿(つばき)とプロファイラー初芝が、ある難事件の捜査をするうちに過去のある事件との繋がりを見つけて、犯人を捜査していくミステリー。

真犯人は誰なのかを探っていくミステリーなので、ミステリーはみんなそういうものかもしれませんが、ちゃんとこの作品を楽しみたいと思うなら犯人を知らずに読むのがオススメです。

最初、この作品は超能力を持った刑事がいろんな事件を解決していくお話なのかと思いましたが、違いました。序盤だけ椿の能力紹介って感じで、小さめの事件がいくつか出てきますが、メインは1つの事件で、そこから過去の事件等に繋がっていきます。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

ストーリーまとめ

主人公は刑事の椿。人の記憶を読む力を持つ彼はメモリストと呼ばれる。大学生の頃から他人の記憶を読み取る超能力があるということで騒がれていて、いろいろなところからスカウトがあったが、卒業後は警察庁に入庁し刑事になった。
その超能力を生かしていろいろな事件を解決したが、性格に難があり、生意気で傲慢で、犯人に暴力をふるったり、命令を無視して他の管轄の警察が捜査していた事件に乗り込んでいってしまったり(数ヶ月かけて捜査していた事件をぶち壊してしまったり)して、他の警察人間からは嫌がられている部分もある。

そんな彼の面倒を見てくれてるのが、おやっさんと呼ばれる年配の刑事、唐沢で、椿と相棒の望月にとって父親のような存在。椿はしょっちゅうおやっさんに怒られているし、おやっさんに憎まれ口もきいているが、二人共おやっさんの事をとても慕っている。

 

大企業の神田グループの跡継ぎが殺された事件をはじめ、事件が起こった時に周りにいた人間が何も覚えていないという殺人事件が4件起こり、その特捜班に椿も配属される。
検挙率100%のプロファイラーとして有名な初芝美苑も特捜班に配属されていた。

初芝は1998年に起こった6件の連続殺人事件と、殺され方、殺された日付が一致していることを指摘する。それに基づき、次の犯行日時は予想できても日付だけでは何もできない。
弁護士の娘が殺害され、また同様にその場にいた人が記憶を無くしているとわかり、現場にかけつけた初芝、椿が犯人と思われる黒フード男と遭遇し格闘するが記憶を消され顔を覚えていない。

初芝、椿たちは1998年の事件の容疑者だった高屋に会いに行き、会った後で椿の記憶が操作されていることに気付いて、高屋を今回の事件の容疑者と考える。
次に予想される犯行日時にチームを組んで高屋を尾行するが、離れて尾行していたはずなのに記憶を消されてしまっていて、備考に失敗。高屋が病院に行ったことは突き止めるが、その病院で次の被害者が遺体で見つかる。

 

その被害者の姉の証言で、今回の連続殺人事件の遺族は神田以外、全員、1998年に起きた「新海町女子中学生集団暴行事件」の加害者達が処罰を逃れられるよう手を貸した人間だとわかる。
神田は加害者の親で事件をもみ消そうと主導した人。
その集団暴行事件のもみ消しに関わった人物の身近な人が、高屋の連続殺人事件の手口で殺されていた。

次に狙われるのは当時、被害者女子中学生の担任だった男の娘と予想されるが、娘ではなく男がさらわれ、殺害される。現場に初芝、椿が駆けつけ、黒フード男と格闘し、黒フード男=高屋を逮捕する。
高屋は銃で撃たれたケガで病院にいたが、警察に警備されていたはずの病室で何者かに殺害されてしまう。

リゾートホテルの火災があり、100人を超える死者を出す。
そしてリゾートホテル関係者が、特捜班の追っている事件と同様の手口で殺されていくが、元の1998年の連続殺人事件の手口と違った部分も特捜班の事件の方を真似ており、模倣犯だとわかる。

 

リゾート総責任者の早川も「新海町女子中学生集団暴行事件」の関係者だったが、彼はもみ消しの事を後悔しており、関係者に不利に働く恐れがあった証拠とそれを始末した記録、通話や金銭のやりとり記録を集めて持っていた。

そして実はリゾート関係者の連続殺人事件は、早川の集めた証拠資料を神田会長をはじめとするもみ消しグループが探していて、特捜班の事件と同一犯だとカモフラージュしようとしたものだった。次長も当時、集団暴行事件を担当した刑事で、もみ消しグループの一員だったため、特捜班にリゾート関係者の連続殺人事件を特捜班の事件と同一犯だという方向に指示していた。

リゾート関係者の連続殺人事件の捜査中、犯人が椿を車でひこうとしたところを、おやっさんがかばい、おやっさんは亡くなってしまう。

 

高屋は死ぬ前に初芝と二人で会話していて、初芝は高屋に「真犯人を捕まえたいなら特捜班を抜けろ、証拠品保管室にある俺が集めた集団暴行事件の資料を見ればそこに真犯人がいる」と言われており、資料を見て何かを見つけた初芝は、特捜班に何も言わずに、集団暴行事件のあった町、新海町に行っていた。

そこで会った記者の遠藤とともに、初芝が資料の写真から見つけた被害者の女子中学生、徳永蘭の弟と思われる男の子を探したが、誰も蘭に弟がいたということすら覚えていなかった。
徳永家の墓参りに行き、蘭たちを知る茂木に会い、茂木から蘭とその弟、事件当時の蘭たちの話を聞く。

 

蘭は子供の頃、早くに両親を失くして、祖母と弟の3人で暮らしており、蘭は周りの評判のいい面倒見もよく真面目ないい子で、高校生だったがアルバイトをして家計を支える一家の大黒柱だった。
蘭が男子高校生数人に集団レイプされる事件に遭い、加害者の男子高校生の一人の親が神田グループの社長で有力者だったため、事件はもみ消され、被害者であるはずの徳永一家が近所からも悪く言われるように仕向けられ、結局、蘭は自殺に追い込まれてしまった。

そして茂木の話から蘭の弟、蓮には相手の記憶を読み取るだけでなく、記憶を自分の物にしてしまう能力があったことがわかり、初芝は蓮が真犯人だと確信する。

蓮は蘭が死んだ後、蘭をレイプした加害者少年たちを集め、彼らの記憶を操作し、何かへの恐怖だけ残して他の記憶を消すと、彼らはお互いを殺し始めた。蓮は直接には手をくださずに姉の復讐をした。この時、高屋も少年達を殺そうと現場に来ていて、結局は何もしていないが、ここで蓮と高屋は会っていた。(高屋の回想より)

 

初芝は茂木に特捜班の写真を見てもらい、知っている顔があるか確認してもらうと一人、茂木の知っている名前と違う人物がいた。そこへ黒フード男が現れ、初芝と茂木を襲い、茂木は撃たれてしまう。
そこへもう一人の黒フード男が現れ、最初の黒フード男のフードを取り、そいつは刑事部長だとわかる。リゾート関係者の連続殺人事件の実行犯は刑事部長だった。
黒フードは刑事部長の弾を避け、脳の信号を読んで避けられるのだと説明する。
黒フードは『あの日の記憶』だけを残して刑事部長の記憶を奪い、刑事部長はまともに会話できないような状態になる。
初芝をかばって黒フードと対決しようとする茂木に、黒フードは「僕ですよ」と言い、フードを取ると、黒フード=真犯人は、蓮=椿だった。

初芝が遠藤を使って特捜班に届けたメッセージのおかげで、特捜班が応援に駆けつけ、椿が真犯人と知って動揺するが、親しかっただけに裏切られたと思った望月が椿を撃つ。
椿はトドメはさされず、救急車で運ばれる途中で電話をかけてきて、初芝、望月にメッセージを伝える。そしてその椿の声はその場にいた関係者全員の無線に流れていると言われ、初芝はそれが椿の能力を伝える媒体だと気付くが、既に遅かった。

 

リゾート関係者の連続殺人事件の犯人として刑事課長が逮捕されたが、本人からは何も聞き出せない状態だった。特捜班メンバーの記憶が3ヶ月近く消えており、その捜査のためにプロファイラーの初芝が呼ばれる。
椿は病院に入院していて、望月に案内された初芝と初対面の挨拶をする。
初芝は自分も特捜班のメンバーだったこと、記憶が消えていることに気付き、調べたが何の記録も残っていなかった。
椿は、茂木に会いに行って自分のしたことを全て話し、茂木に「よくやったとは言えないし自首しろとも言えないが、蓮の気持ちはよくわかる これからどうするつもりだ?」と聞かれる。

高屋が死ぬ時に椿が読み取った高屋の記憶で、高屋からのメッセージを聞いた時の回想。
「犯した罪はまたおまえの大切な誰かの死を呼ぶだろう
 果たしてその時 おまえがどんな選択をするのか
 俺はそれが非常に気になる」

街なかを「ひゅーひゅー」と言いながら歩き、人々の記憶を読む椿。
犯罪を犯した人らしき記憶をみて、椿が振り向いたところで終わる。

 

感想

53話で真犯人が椿だとわかった時、すっごくビックリしました。
初芝の推理で捜査班の近い人、うーん、望月?とか思ってましたが、まかさ椿だったとは!
そんなにミステリーを読んではいないけど、久々にビックリした真犯人でした。

真犯人も記憶を操作できる能力があるらしく、椿との超能力対決?でも真犯人の方が能力が高いっぽいとか思ってたら、どっちも椿だったのかよ!っていう・・・。
結局、もう一人の能力者じゃなくて、能力者は一人しかいなかったのか。
椿が本当の能力を隠して、本来の能力のうちの限定的な能力だけを自分の能力として設定して公開してただけっていうことでした。

 

そりゃー、それだけ椿が、椿という人物になりきって、演技して、読み返してみると0話の、能力に気付いたエピソードから既に椿の作られた設定=嘘だったなんてことじゃ、わからないわー。
読み返してみても、椿はこの事件の最初の方で記憶を読み取れないことや、初芝が日付を予想したこと等に本気で驚いたり怒ったりしているように見えるし、椿が思っていることでも、本当なら出来ないとわかっているはずのことに、「俺ならすぐ解決できる」とか思っていたりするので、そりゃあ読者もわからないと思いました。
それだけ成りきっているということなのかもしれないけど、そこまで誤魔化されてたらわかりません。

そしてそれまでなんとなーく読んでて、それほどおもしろいとも思っていなかったんですが、椿が真犯人だとわかって、俄然面白くなり、この後どう展開していくんだろう、どうなるの?どうなるの?とワクワクしてたら、いつの間にか完結してました・・・。
連載中は最新1話のみ有料で、無料分だけ読んでたので、しばらく更新されないな〜と思ってたら完結していたという・・・・・気付かなかったです。
あれで終わっちゃうとは思わなかった。
最終話は読んでなかったんだけど、もうすぐ終わりなんだとは思ってなかった。
気付いたら最後の方の数話は有料に変わっていて、最終話だけ読んでなかったから、先に購入して読んだけど、最後の方の数話も1回読んだだけなので購入しました。

 

刑事課長に「お前たちは殺しはしない」って言ってたけど、神田会長と次長は殺したんですね。
残りのもみ消しグループメンバーは殺さないんだろうけど、まあそいつら二人はいろいろ主導した極悪人だったから、読者としては当然の結果には思えるけど、殺さないって言ってたのになぜ?とは思います。そこの説明がないので。

そして高屋には自首するって言ってたようだし、最初の方の正体が謎な時も、捕まえてほしいと思ってるような発言をしていたけど、結局自首はしないで、壮大に記憶を奪ってなかったことにしちゃっていましたが、それもなぜなんだろう?
そもそもなぜつかまろうとしてたのかわからなかったけど、それは初芝が推理していたように、罪を犯した真犯人が捕まらないままでは説得力がないからなの?
そういうものなのかな。私は姉の事件の復讐という理由で納得いくけど。
ただ、高屋と同じように、身近な人を殺して喪失感を与えるという方法で、罪のない人を殺すのはやっぱりどうかと思いました。

 

自首するのをやめたのは、最初の計画通りにはいかずに、更に大切な人=おやっさんを殺されて、まだ自分が残って犯罪者を捕まえようと思ったからなのかなぁ。

それとちょうど同じくらいに読んだ「掃除人K」の娘と蘭のレイプ事件はすごく似ているなと思いました。被害者は女子中学生、加害者は男子高校生複数人で、親に権力者がいて事件をもみ消した、加害者の親が被害者の女の子を責めるっていうところ。

「掃除人K」の方もそうでしたが、加害者の母親が女の子に、お前のせいで自分の息子が捕まったと責めるのが、驚きでした。いやいや、あんた責められる立場じゃないでしょ、しかも同じ女性で気持わかる方の人じゃないのって思うのに、そういう逆ギレな人が多いんでしょうか。

高屋も初芝も「椿の犯した罪がまた椿の大切な誰かの死を呼ぶ」と同じような事を言うんですが、なぜなんだろう。その理屈でいうと、高屋の大切な娘も死んでしまうのではと思うんですが。

 

そして高屋は娘だけで妻が出てこなかったんですけど、最初から出てこなくて言及もされないので、あの時点から既に離婚したか何かでいないってことなんですかね。警察の方の説明でさらっと結婚して娘ができたが離婚とかなんとか言ってもおかしくないと思うんですけど。

そして初芝はものすごく冷静な理知的な人って感じなんですけど、父親のことに関してだけは冷静に見れてないんですね。まあ父を殺した本人に言われたら腹が立つのかもしれないけど、父親が犯した悪事も事実なんだろうし、それが罪を犯したのに法では裁かれなかった、というのも悪い事だと思うんだけど、そこは冷静に受け止められないんだなと思いました。

椿が、直接的な加害者はその頃に死に至らしめたけど、20年くらいたった今になって、そのもみ消しに加担した人達に復讐しようとしたのは、なぜなんだろう。
長い時間かけて、誰が加担したのか調べていたから?
そして大人になって警察に入って、考えていた復讐劇の準備が整ったから?なのかな。

 

次長は復讐の対象者に入ってなかったようだけど、元担任の記憶を読むまで次長も絡んでたってことを知らなかったのかな。
蘭の復讐を長いことかけて計画してて、椿の能力を使えば本人に気付かれずに記憶を読むのは簡単だったろうし、元担任も対象者に入ってたなら次長のことだってわかったはず、と思うんだけど、どうなんでしょう。
早川は、当時、神田を蘭たちのところへ誤りに行かせたのだって早川だし、もみ消しに関わったのかな?罪悪感はあっても関わってしまっていたのか?だとしても、あと一人復讐対象にするのだとしたら、早川より次長だと思うんだけど、次長のことはわかってなかったのかどうなのか。

それと読み返しても、わからないところがいくつかありました。
高屋がリゾート火災事件を見て、椿が裏切ったと言ったことや、早川が殺されたことを知って、違ったのかと思ったこと。
次長に呼ばれた時に椿が教授殺害の映像を見てた事を初芝が注目したのはなぜなのか等々。

 

あと高屋の事件の日付と回数が合わない。
8話では12/8と言ってるけど、教授が殺されたのは12/10と6話で言ってる。
そして8話では1998年の連続殺人事件は6回と言って、あげている日付も12/20までの6回なのに、その後、1/12に次の犯行予定だと言って高屋を尾行するし、その次も日付は出てこないが桑原の件が犯行予定より早く実行されたと言っているし、高屋は9回の殺人と言っている。
予定だった早川を入れると9回なので、8話で言ってることが間違ってるのか?

この事件は椿の姉の復讐劇で、彼自身も殺人を犯したけど、それでもまたこれからも、犯罪者を捕まえていくっていう、そういう終わりなのかなぁ。

そして最初読んだ時はなんとなく読んでたので、事件のことをちゃんとは把握してなかったから、理解しようともう一度読み直してみて、細かいことを覚えておけないので各話ごとにメモしてたら、だんだん細かく書くようになってしまい、疲れました。
うまく要点だけまとめようとしたつもりがつい長めになってしまいました。

なぜ殺さないと言ってたのに殺すことにしたのかとか、もうちょっと椿がどう思ってたのかっていう椿の本当の心情を描いてほしかったな。

 

各話のストーリー