漫画「恋癖」緒之 感想(9)

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恋愛のクセが強めな大学生達の恋愛群像劇。
タテスク全193話で完結済み。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

「恋癖」感想(1)
「恋癖」感想(2)
「恋癖」感想(3)
「恋癖」感想(4)
「恋癖」感想(5)
「恋癖」感想(6)
「恋癖」感想(7)
「恋癖」感想(8)
「恋癖」感想(9)

 

 

 

「恋癖」感想(8)からのまとめの感想の続きです。

 

藤沢姉妹

姉:藤沢奈留美(なるみ)
妹:藤沢真奈美(まなみ)

の藤沢姉妹は、物語の謎の中心人物で、序盤からちょいちょい匂わされて出てくる二人ですが、ちゃんと登場するのはだいぶ後半になってからです。

姉妹の名前も似てるし、「なるちゃん」という呼び方と顔が成瀬とも似てるしで、謎であり混乱もさせられる人たちでした。

妹のマナミも姉ナルミとは別に、でも姉と絡んで真央に騙され利用されました。

結局「あの日」に妹は姉をハメるのに利用されてしまったんですが、姉の方は真央をよくわかってるので、妹が利用された事と、そのキッカケを作ったのは自分だという事をすぐに理解して、姉妹間でいがみ合う方向にはいかず、真央に復讐するために、ここから二人で協力していきます。

そもそもなぜ姉は妹と似てるのが嫌だったのかよくわからないですが、復讐の協力関係になるまではあまり仲いい姉妹ではなかったけど、仲悪いというほどでもなく、心のなかで何か思うところがあるっていうのは、わりとよくある兄弟の関係の1つなのかなーと思いました。

姉ナルミは真央の性格とか、結構いろんなことを見透かしてる感じなとこがすごいなーと思ったけど、ナルミが真央を怒らせるような問い詰めるようなことをしなければ、ああならなかったのにとも思いました。

でも、真央とつき合って嫌な目にあった女の子を知ってて、その子の代わりに真央を責めたってことだったのかな。

まあ本人が言うように真央と似て、相手を蹴落とそうとする性格だから、真央にやらなくてもいずれ誰かとぶつかって、似たようなことになったのかもしれないとも思いました。

妹マナミが、間宮に彼のことが気になってる子がいるからと女の子を紹介したのが、実はユーヂューバーの女の子へのお礼として間宮を紹介していたということが後でわかります。

マナミは間宮が中学の頃好きだった子だけど、間宮を騙してるというか利用していて、なんかちょっとそういうことできる子になっちゃったんだなーと残念な気持ちになりました。

妹マナミはまだ素直で純情だった頃に真央に出会っちゃったせいでちょっとすれちゃったのかな。

姉が気に食わないとかはよくあることだけど、姉を罠にはめるのに利用されるなんてのは、なかなかしない経験だと思うし。

真央にやられたやり方で真央へ復讐をするため、裁判だとか法的に訴えるのではなく、人気ユーヂューバーを利用して、実名は出さないけど調べればわかる程度にぼかしてミスコンの裏事情を暴露、そのOBが最近事業を始めたって話をして、真央の会社のマッチングアプリにたどりつかせて打撃を与えるという方法でした。

真実を伝えるのが目的じゃなくて、騒ぎを大きくして真央に打撃を与えること。

マッチングアプリなんていうネットを利用した商品を扱う事業だったら、ネットでの風評被害は、事実かどうかに関係なく大きそうだし、今どきの社会っぽいやり方だなーと思いました。

ちなみにこの奈留美と真奈美の漢字ですが漢字変換で一発で出てきました。
たぶん「なるみ」「まなみ」の一番ポピュラーな漢字にしたんですね。

 

 

真央

真央はメインキャラの中で一番、なに考えてるかわからない人でした。

私には最初からずっとなーんか胡散臭いというか、人当たりいい感じで笑顔で何か言ってても、常に本心は違うこと思ってそうで怖いと感じていた人でした。

113話で里帆が「一見優しそうに見えるけど笑顔の中にそこはかとなく圧を感じる」「苦手」と真央のことを評しているのと同じことを私も感じてました。

185話でも「うるせぇ指図すんなカス」って笑顔で言ってるしね。

マンガで読んでるだけだからいいけど、実際に接するのは、苦手なタイプの人だなぁと思いました。

里帆にそう言わせている作者さんも、里帆寄りの印象を持って、そういうキャラとして描いていると思うんですが、読者からは賛否両論の人だったそうです。

コメント欄でも、真央が好きと書いてる人が多くいて、私には驚きでした。

成瀬もそっち側の人で、しかも沼にハマるかのように一時期、真央に一直線に恋する状態になってる時もあって、それがスゴく嫌でした。

成瀬は気に入ってたので、なんでそんなヤツにひかれちゃうの?っていう残念な気持ちでした。

苦手な人もいるし、ひかれる人もいるっていうそういうキャラをちゃんと描けて、両方の反応を読者から引き出せている作者さんはスゴイなぁと思います。

真央と塚本

真央と塚本は元々はバイトの先輩後輩で、ナルミの事でこじれる前までは、間宮達のようにそこそこ仲良くしてたのになぁ。

でも、よく振り返ってみると、バイト辞める時にまた連絡してと言われて承諾してるけど、連絡してこなさそうだなーって真央に言われてたし、大学で再会した時もたまたま会っただけで連絡とってなかったっぽいし、仲良くもなかったか。

間宮たちお気楽な雰囲気の後輩たちと孤高の人っぽい塚本じゃ違うか。

でも、塚本がナルミにのめり込んじゃってた時に気付きになったのは真央の言葉だったり、いい影響を与えたこともあるんだよね。

まあ人はいろんな面があるものだし、真央は鋭く人のことを見てるところがあるから、相手を傷つけるキツイ言葉のこともあるけど、ズバッと言われて気付きになるってこともあるんだろう。

 

 

真央と成瀬

真央から「あの日」の事を聞き出すため、塚本に協力するために真央に近付いた成瀬でしたが、真央が成瀬の過去の話を聞いて、自分も似た立場なんだと共感してくれたことをキッカケに、グッと気持ちを持っていかれて急に恋する状態になってしまいます。

真央がゲイだと告白したからというのと、真央が自分に接する様子を見て、真央は自分に気持ちはないと成瀬は思ってるけど、それでもいいから真央と一緒にいたいと思うようになります。

成瀬が真央に入れ込み始めているのに気付いた塚本が、もう協力しなくていいと言って成瀬を真央から離そうとしますが、時すでに遅しで、成瀬はもう恋するモードに入っちゃってました。

それに塚本の言葉が少なすぎる。
成瀬はもう自分が必要なくなったのか、突き放されたと感じて、逆効果になってました。

そして塚本や里帆の忠告にも、もう耳を貸すことができなくなってしまいます。

この周りを放置して相手優先の入り込み方はちょっと異常な感じもして、塚本と似てました。

なるべく一緒にいたいは私と同じ、のはずなんですが、成瀬のはなぜか自分と同じという感じがしませんでした。

なぜだろう?真央のことを好きな気持ちが理解できないからかな?

ですが、幸いにというべきか、そうなってから終わるまでの期間はそう長くなかった気がします。

真央が忙しかったとかでしばらく連絡が来ない期間もあったりで、真央と2人で会ったのって3回くらい?

あんな執着してるような感じだったのが冷めたのは、なぜなんだろうって、1回目読んだ時はあまりよくわからなかったです。

ベッドの上で録画されてたかもというのがまずあって。

「あの日」の真相がわかって、真央が藤沢姉妹を自分の利益のために利用したことがわかり、その際に嘘の噂を流すという方法をとっていました。

つまり成瀬の過去の話の被害者側で共感したって言ってたくせに、加害者側と同じことをしていた。

どんな気持ちで自分の話を聞いて「わかる」なんて言ったのかと成瀬が責めると、被害者ぶるのをやめろ、くっだらねー、そういうの自滅っていうんだよ、などと言って成瀬をバカにしてきて、ムカつく言い方をしてきます。

この時かなり酷いことを言われたし、腕を強く掴まれて暴力っぽいこともされたので、それが決定的だったのかな。

 

 


真央は成瀬をどう思ってたのか?

真央が成瀬を見かけて「いいこと思いついた」って藤沢妹に言ったのが、どういうことだったのか、最初はわからなかったんですが、あれって成瀬をおとして恋愛関係にもっていき、塚本達がやろうとしてることを邪魔しようとしたってことだったのかなーとしばらくしてから思いました。

成瀬をおとすのと、塚本達の邪魔がどう関係するのかなって思ったけど、成瀬を通じて情報を得るとかなのかな。

と、思ったけど、もしかしてあのベッドの上での事を録画したことで、成瀬を脅して言うことを聞かせようとしてたってことなの?

あーそうか、あの録画したのはなんだったんだろうって思ってたけど、言うことを聞かせる材料としてやったのか。

ほんとは録画してなかったってのが事実なんじゃないかと思ってるけど、録画したと思わせることで成瀬に言うこと聞かせようとしたのか。

真央がゲイだって言ってたのは嘘だったんだろうなと思います。

真央の過去の恋愛遍歴で女性と付き合ってて、Hしてる関係だったっぽいので、少なくともゲイじゃなくてバイ。

男とつるんでる方が楽しいというのは今でもそんな感じっぽいけど、今まで女性と付き合ってても本気で好きになってないようなので、精神的にはもしかしてゲイ寄りだとしても、恋愛遍歴に男性との恋愛はでてきてないので、ゲイではなさそう。

真央が本当はどうなのかはわからないとしても、成瀬にゲイだって告白したのは成瀬に共感したように見せるための嘘なんだろうなと思いました。

過去つきあってきた女性のように、最初は共感して優しくするっていういつもの手口だったんだな。

183話読むと、自信なさげでコンプレックス抱えてる女は心の拠り所を探してるから、最初は共感して優しくすれば、わりと簡単に心を許してくれるってあって、あー成瀬そのまんまじゃんって思いました。

でもその後、真央のことを責めてくるような強い女は真央は好きじゃなくて、182-185話の言い合いで、マウント取ろうとして、成瀬をバカにして貶めるような事を言ったけど、屈しない成瀬の態度と塚本が助けに入ったので、もう諦めたって感じ。

まあそもそも塚本たちの邪魔するのに利用しようとしただけで、忙しくて全然連絡取らないとかしてたし、181話で会ったのも成瀬からだし、成瀬のことは今までの女性たちと同じように都合良く使おうと思ってただけなんだろうなぁ。

191話で最後に会った時は、真央から会いにきたけど、「もう二度と関わらないから少しだけ話しを聞いて」って頭下げておいて、そのあと「俺とつき合ってよ」と言ってて、「もう二度と関わらない」のは話を聞いてもらうための嘘だったわけで、今もサラッと嘘つくのは変わってない。

成瀬はさすがにもう丸め込まれなくて、「何もかもうまくいかなくて自信がなくなったから、言いなりになりそうな女をそばに置いて自尊心を取り戻したいんですね」と言って真央を拒絶します。

成瀬の言う通り、録画の件とか最後に成瀬をバカにしてた事とか、そんなことしといてよくまた付き合うって言えたよなー。

 

 

この時の真央の気持ちはどうだったのか。

あの頃は楽しかったのは本当かもしれないと思うけど、成瀬のいうように今がうまくいってないから自尊心を取り戻すためもあったのかもしれないし、本当に成瀬とならうまくいくと思ったのかは、半々かなぁという気がしました。

真央がこの時、「なるちゃんさえいればなにもいらないんだ」って言ってるんだけど、これはさすがに嘘だろうと思ったし、成瀬にいい感じに言って、どうにかしようとしてる胡散臭さを感じます。

成瀬のこといいと思う気持ちはあるんだろうけど、今うまくいってないから成瀬で癒やされるために嘘ついてでも交際に持っていこうとしてるのが強いかなぁ。

考えれば考えるほど、やっぱり成瀬の言う通り、全然本心で言ってないと思えてきました。

もしこれでつき合っても、優しいのは最初だけな気がする。

真央は、相手を落として自分を上げる考えを変えてない気がするので、このあと成瀬と真央がぶつかり合って、いろいろすったもんだしないと、ちゃんとうまくいく関係になれないだろうなぁ。

このあと、真央がいい方向にいくかどうかはわからないけど、今までの利用されただけで捨てられた女性達とは違って、何かしら真央の心に響くものを与えられたんじゃないでしょうか。

 

 

塚本と成瀬

塚本は超カッコよくて、成瀬も美人でおもしろいので、最初は塚本と成瀬がカップルにならないかなーと思ってました。

なので、塚本が元カノのナルミの事がすっごく好きだったっぽいことがうかがえるエピソードがでてくるとちょっと胸が痛かったし、塚本が成瀬に全く恋愛感情ないなって感じの態度を残念に感じてました。

でも、最後の方ではもう塚本と成瀬がカップルにって思わなくなってました。

だいぶ間をおいて後半を読んだせいもあるかもしれませんが、1つには成瀬が真央にいっちゃったこと、もう1つは塚本とナルミの過去と今の会話を聞いたこと、真相のことなどのいろいろを経て、二人はカップルっていうより、今の気兼ねなく付き合える友人関係でいいんじゃない?って思えてきたからです。

最後、みんなで海に行ったエピソードでも、山本&鈴木には、塚本と成瀬がキラキラしてみえてましたが、それはたぶん二人が美形だからで、彼らの間に甘い雰囲気は全くなく、気のおけない友人関係って感じでした。

そういう感じでカップルになってもおかしくないけど、まあ別にその二人じゃなくても、それぞれ別の新しい出会いがあって愛する人ができるってことでいいんじゃないかなーって最後を見て思いました。

今の時点では、188話にあるように、お互い同じように報われない恋の終りを迎えて、似た立場でお互いの傷を共感してる者同士の仲間意識みたいな、そういう感じ。

塚本とナルミの関係と、真央と成瀬の関係は同じとは言えない気がするけど(成瀬は騙されてるようなもんだし)、考えてみると、相手に夢中になって優先しちゃう感じが塚本、成瀬が似てて、相手を貶めて自分をあげる性格がナルミと真央で似てて、組み合わせとしては似てたんですね。

 

 

まとめ

レギュラーメンバーがたくさん登場してくる作品でしたが、主役は塚本、成瀬、里帆の3人だったんじゃないかなと思いました。

レギュラーメンバーはみんないい人で、悪人寄りの人は真央だけだったな。

他の人を利用するとか自分の方を優先するとか、多少の利己的な行動はみんなあっても、悪意を持って他人を害してたのは真央だけだったと思います。

物語全体の軸になる話は、「あの日」の真相を調べることで、その謎ももちろん気になって読んでましたが、この作品の一番の見どころは、登場人物たちの人間模様だと思います。

登場人物たちの背景や事情も興味深かったですが、一番は彼らの会話のやり取りの面白さです。

会話の中にいつもいい感じにツッコミが入って、そのセンスが好きです。

最初は大きく2つのグループがあって、それぞれで描かれていたのが、話が進むと徐々に接点が出てきて合流しました。

ただ全員が一堂に会したのは最終話だけだったかな。

全員でじゃないにしても、みんなで会ってわちゃわちゃしてるのがおもしろかったです。

「あの日」の真相を調べる事に直接関わってたのは、塚本と、お手伝いの成瀬、里帆、追求される側の真央で、他の人達は調査の場にいることはあっても、調べてる事を知らなかったし、最終的に真相もその3人(+当事者の真央)以外は知りません。

だけど、このたくさんの登場人物を、誰かと誰かが実はここでつながっていて、というつながりをいろいろと散らばせて、物語が進んでいくにつれそれがつながっていく、というのを描いてるのが、スゴイなーと思いました。

このつながりに適切に気付いて、みんなにそれを教えてあげて導く役割を里帆にやらせてたなと思います。

結局、真央ってなんだったの?って思ったけど、真央もそう全部のことを最初から考えてやってたわけじゃないし、事業を立ち上げる時にナルミを利用するところまではだいぶ前々から計画してる感じだったけど、成瀬のこととかは彼の今まで通りの相手を貶めて利用する行動の結果そうなっただけなんだよなーと思いました。

私は真央のことは全然好きじゃないですが、この作品の中で印象的なキャラの一人であるのは間違いない。

そして塚本はカッコよかった。
マンガで見た目好みなキャラがいるのは重要なポイントです。

真央以外の人たちは、みんなハッピーエンドでよかったです。

塚本と成瀬は恋人ができたわけじゃないですが、塚本はナルミ関連の気になってたことの気持ちの整理をつけられただろうし、成瀬も苦い経験だけど片が付いて終わってるので、みんな前を向いて進んでいける状況になったってことでハッピーエンド。

メインのストーリーはわりとシリアスで社会の問題も描かれてたりしますが、みんなのやり取りが楽しくておもしろいお話でした。

 

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