映画「虐殺器官」監督:村瀬修功 原作:伊藤計劃 感想

虐殺器官(完全生産限定版) [Blu-ray]

虐殺器官(完全生産限定版) [Blu-ray]

 

 

映画「虐殺器官」監督:村瀬修功 原作:伊藤計劃 感想
ネタバレありなので、ご承知の上。

原作は伊藤計劃の小説。伊藤計劃の小説を劇場アニメ化する「Project Itoh」でアニメ映画になった三作品の一つ。
テレビCMで見て、いつか見たいと思っていました。
繋がりはないので、どれから見ても大丈夫だったんですが、u-nextの説明にあった○作目と書いてある順に見ました。

この作品は三作品の三作目ということで最後に見ましたが、途中までは3作の中で一番おもしろいかもと思ってましたが、最後まで見るとやっぱりこれも「よくわからない」でした。

 

おもしろいかもと思いながら見てても、わからないことはたくさんあるというか、わからないことだらけな感じではあるんだけど、次どうなるんだろうという興味をひかれる部分はずっとあったので、最後終わるまでは、「おもしろそう」でした。
そして最後まで見て「結局どういうことだったんだ?」ってわからなかったのでイマイチでした。

アメリカの軍隊の精鋭って感じの人達の作戦行動が描かれている部分が多いです。
世界のいろいろな地域で、内戦や紛争を起こしている黒幕と思われるジョン・ポールという人物を追っていく話です。

彼らは任務前にカウンセリングと何かで感情の制御をして任務中に感情的にならないように、感情を制御されています。それと痛覚も怪我をしても痛みを感じないようにされているらしいです。
それで終盤、味方がたくさんやられちゃった時も、クラヴィスとずっと会話してた仲間が、最初は片腕が吹き飛んだと言っていて、その後もずっと普通に会話してるんだけど、クラヴィスが彼のところに着いてみると、どうやら悲惨な状況だったようで、その仲間も死んでしまうんですが、その直前まで普通に会話をしていたんです。しかもクラヴィスはその辺に落ちてた足を渡そうとしてたり、それくらい、痛み等を感じなくなってて感情も感じなすぎておかしくなってるってことを表現しようとしてたシーンだと思うんだけど、画面が暗すぎて何が映ってるのかよくみえず・・・その死んでしまう仲間がどんな状況だったのかわかりませんでした・・・。

 

主人公のクラヴィス・シェパードは任務でスパイのような感じで、ジョン・ポールの愛人だった女性に近づきますが、結局、ジョン・ポール側にバレてて、捕まるけど、仲間に助けられます。
その愛人だった女性、ルツィアのことがクラヴィスは好きになっちゃうみたいなんですが、わかりにくい。ルツィアに接触してしばらく一緒に過ごしてバレて、の後、何かの度に「ルツィアはどこだ?」と聞くのでルツィアを気にかけてるの?ってわかる程度で、いつの間に好きになってたの?っていうか好きだったの?って感じです。

最後は、ルツィアに暗殺命令が出ていた、というのと主義の違いでクラヴィスの相棒のウィリアムズはルツィアを射殺してしまいますが、それに怒って「お前を殺す」と言いまくるくらいにクラヴィスはルツィア大好きになってます。
主義の違いな部分もあると思うけど、今まで相棒だったウィリアムズに対する友情とかはもうどっかいっちゃったのかよって感じで、ウィリアムズを結局爆殺したみたいだし、ウィリアムズを殺した事に対して何の感情もクラヴィスに出てこないので、ちょっと「えー?」でした。
それも感情を制御されてるせい?でもルツィア殺害には憤慨してたよね?

ウィリアムズは暗殺命令が出ていたから命令に従っただけ、ではなく、クラヴィス達の話を聞いていて、ルツィアが言うようにジョン・ポールがしたことをアメリカで明らかにしてアメリカでの今の生活を壊したくないと思ったから、妻子を守りたいと思ったからで、考えの違いによる対立、そして好きな娘を殺されたことに対する報復を受けたわけなので、自業自得の結果、クラヴィスに負けたんだから仕方ないといえばそうなんだけど、クラヴィスは相棒だったのにそんなあっさり殺してなんとも思わないのかよ。

 

クラヴィスとルツィアの最初の会話で、ルツィアが留学先で学んでいた言語についての?結構深い話をするんですが、ルツィアは自分が勉強してたことだから詳しいとして、その話についていけるクラヴィスすごいな、こんな会話普通にしちゃうの?っていう感じのかなり難しい会話をしてました。

その後も、ルツィアと、ジョン・ポールと、クラヴィスは深い会話を繰り返します。
そこがこの作品の肝の部分なんですけど、後でwikipediaをみるとクラヴィスは言葉に関心が強い人だったらしく、そういうことがわかってると、「ああなるほどね」と思えるけど、ないとこの人よくこんな会話できるなと思っちゃうわけで、そのくらいはなんか説明あってほしかった。

ジョン・ポールは言葉について研究していて、例えばナチスドイツが民衆を扇動することなんかを研究していて、言葉を使って「虐殺」をさせる方法を見つけました。
それを使って、各地域の指導者等を操り、内戦等を起こしていたんです。
それは何故かと言うと、アメリカを守るため。
ジョン・ポールの妻子はサラエボに行っている時に爆弾に吹き飛ばされて亡くなりました。二度と近しい人を亡くすような悲劇が起こらないように、世界を先進国と後進国の2つに分けて、先進国の世界を守るために、後進国で内戦や紛争を起こして彼らの中で戦わせ、その矛先が先進国に向かわないようにしていたのです。

 

ですが、それを聞いたルツィア(ジョン・ポールと不倫関係にあり、ジョン・ポールの妻子が死んだ時にはジョン・ポールはルツィアと一緒にいた。クラヴィスが接触後はジョン・ポールと一緒に行動していた)が、ジョン・ポールのせいで殺された人々のためにジョン・ポールの使っている「言葉を使って虐殺をさせる方法」をアメリカで公表するべきだと、ジョン・ポールのしたことを明らかにするべきだと言い、その直後に、ルツィアは射殺されます。

おそらくルツィアが亡くなったため?ジョン・ポールはルツィアの意向に従って、「虐殺をさせる方法」のことを公表しようと思うが、自分がアメリカに行ってもそうさせてはもらえないだろうと言い、その後、言葉はなくクラヴィスとジョン・ポールの間で以心伝心があって、クラヴィスがジョン・ポールを射殺します。

 

この後の展開を見た後でも、ジョン・ポールがここで死ぬ意味はいまいちよくわかりません。
それなりの信念を持って、後進国で虐殺を起こしていたと思うのに、ルツィアに言われただけで、それを辞める気になったってことなんでしょうか?それとも彼女が死んだからその気になった?
そしてアメリカで公表するのはクラヴィスに任せたんだとして、そこでジョン・ポールが死ぬ意味は?
もうこれ以上、虐殺をさせないため?そういうことに自分が利用されないようにするため?
クラヴィスがアメリカで公表するための布石としてジョン・ポールの死は必要だったのか、というところが、ちゃんと説明してもらわないとわからない。

 

それと序盤の作戦で、地獄の話をしていたクラヴィス達の仲間のアレックスが、作戦行動中に暴走したような行動をとったため(クラヴィスが会話していた敵の偉い人を射殺して銃を撃ちまくった)、クラヴィスに射殺されてしまうんですが、これはおそらく彼はその国の言語を話せたのでジョン・ポールの「虐殺文法」に影響されてしまったってことだったと思うんだけど、一体いつその言葉を聞いたんだろう。
あそこで流れていたベートーヴェンの「月光」の中に音として入ってたのか?とも思ったけど、それだとクラヴィスも影響されちゃうはずだし、そういえばアレックスだけあの国の言語を話せるって言ってたような気がしたのでそれかなとは思ったけど、いつか不明。見返せばわかるかもしれないけどもう見れないし、みれたとしてもそこまでするのは面倒だからいいや。
というのと、wikipediaを見ると小説ではアレックスはここで死んでないようで・・・うーん。
小説だとこの作戦行動中に誰かが暴走して射殺されたってこと自体がないのかな?


「暗殺を行う極秘部隊員クラヴィス・シェパードは告発されることになった」
ということで、アメリカの公聴会で、クラヴィスはジョン・ポールとの約束?を果たして虐殺をさせる方法のことを公表しました。

「僕は罪を背負うことにした
 自分を罰することにした
 心が覆われる前に
 無感覚になってしまう前に
 ジョンには悪いが、それがルツィアとの約束を果たすことだと気付いたから
 愛しい者たちを失うことになるだろうが
 それはきっと新しい世界の始まりとなる
 これが僕の物語だ」

というクラヴィスの独白で終わりますが、「これが僕の物語だ」って言われても
「何が?」って感じなんですけど。
何のことをさして「これが」って言ってるのか、わかんないです。

そしてここで「ジョンには悪いが」って言ってる意味もわからず、ジョン・ポールの思ったとおりに虐殺のことを公表したんだよね?なのになぜ「悪いが」なの?
「愛しい者たちを失うことになる」とか「新しい世界の始まり」とか何のことかチンプンカンプンでした。

 

そして、wikipediaを見てみると、大筋はほぼ同じでしたが、最後、クラヴィスは公聴会で、「ジョン・ポールに渡された「虐殺文法」を使用し、英語圏の「虐殺器官」を活性化させ、アメリカを中心とした内戦を引き起こす」ってあるんですけど、「ええーーー!?そんな大切な部分、映画じゃなかったじゃん、なんで?」って思いました。

で、上に書いたクラヴィスの独白を聞きながら書いている時に、思いついたんです。
んん?もしかして、この意味わかんないと思ってた独白で言ってるのって、wikipediaに書いてあった結末の、「虐殺文法」を使うってことを指してたの?って。

うわーーーーーーー、これわかる人いるのかなぁ?
映画だけ見てわかる人スゴイと思う。
ジョンの最後の独白が、「虐殺文法」を使うってことを意味してたなんて。
wikipedia 見なかったら全然わからなかった。
だからジョンに悪いんだね、愛しい者たちを失うんだね。

クラヴィスが最後の任務から戻った後に、付箋いっぱい貼って何かしてるのも何だったのかわかんなかったけど、「虐殺文法」を使って話すことを考えてたってことなんだね、たぶん。
最後に「it's my story」=これが僕の物語だ って付箋に書いてあったのはわかったんだけど、結局やっぱり「これが僕の物語だ」の意味はわかんないなぁ・・・。

 

言葉で虐殺を起こさせるっていうのはスゴイなと思ったし、終盤までのアメリカ軍と彼らの攻防はそれなりに面白かった。でも最後、結局なんだったんだってところで、「ん?」って感じで終わっちゃった。
でもそれは映画を見ただけじゃ「虐殺文法」を使ってアメリカで内戦を起こさせることにしたのがわかんなかったから、かなぁ。

今までいつも他国をいいように操作したりちょっかい出したりしてたアメリカが、痛い目を見て、自分たちも同じ目に合う、自分たちだけぬくぬくと生活してんなよ、痛みを知れってとこが小気味いい、のかもしれない。
ただ、映画ではそれを感じられなかったので・・・。

3作を全部見て全部に言えることなんですが、いつか、小説の方を読んでみようと思います。

 

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

 

コミックの試し読みはコチラ 1〜3巻