漫画「Hush」松苗あけみ 感想


<↑コミックの試し読み> Renta!

完結。最初ピッコマで読み始めましたが、面白くて続きを一気に読みたくて中古で買ってしまいました。作品自体はわりと古くて、連載されてたのは30年くらい前。
最初に出たコミックは全7巻。文庫版は4巻。
それと別に普通のコミックよりちょっと大きめサイズのマーガレットレインボーブックスというので、全4巻ででていて、私はマーガレットレインボーブックスで買いました。

高校生の恋愛物語ですが、人間関係がかなり複雑で、コミカルな雰囲気はあるものの、内容は重めです。お話としてはすごく面白いんですが、恋愛ものとしては、うーんって感じで、最後まで読んでも、一応ハッピーエンドなんだけどスッキリしない読了感でした。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

友人達と一緒にいる喫茶店から、高校生のジロは向かいの美容室で髪を切っている女の子のことをジーッと眺めています。高校生の女の子、小鳥も自分のことをじっと見ている男の子に気付いていて、その男の子のことが気になっていました。
小鳥は長かった髪をバッサリ切ってショートカットにし、さっき自分を見ていた男の子を見かけて追いかけました。ジロは友人達、同じ喫茶店にいた女の子達と一緒に街をぶらついていました。ジロはその女の子にふいをつかれてキスされているところに、小鳥が追いついてキスシーンを見てしまいます。
小鳥は男の子が自分を見ていたんじゃないかと気になって確かめたくて追いかけてきたのに、他の女の子とキスしていたので、勘違いだったと思って恥ずかしくなってすぐに引き返します。

小鳥の両親は離婚していて、中学の3年間は母親と暮らし、高校の3年間は父親と暮らし、その後は卒業する時に決める、という約束になっていて、高校生になったばかりで父親のところへ行く途中でした。
ジロはその同じ高校の先代の理事長の落し胤で、高校の寮に住んでいました。
ジロは喫茶店で出会った女の子の家に行って一緒にお酒を飲んでそのままその子の家に泊まってしまい、途中から覚えていなかったので、ジロはその女の子とHしてしまったんだと思います。

小鳥の父は、小鳥が行く高校の教師で、小鳥が学校を案内されている時に、ジロは小鳥を見かけ、昨日の髪を切った女の子で追いかけてきてくれた子だと気付いて小鳥を追いかけていき、二人は出会います。
ジロは小鳥にひとめぼれしたんだと思う、でも悪いけどもう俺他の女の子と寝ちゃったんだと言います。
付き合う前に浮気しちゃってごめん等と謝りますが、まだつき合ってないしなんて言っていいかと小鳥は戸惑い、俺っていいかげんな男なのかも、ごめん、また会おうなと言って去っていくジロに、小鳥はなんだったんだと思います。

ジロは「悪いことをしたとは思っていないけど、一番最初に寝る相手は世界で一番好きな女の子とだと思っていたんだ」と思っていました。

という感じで、始まりますが、ストーリーを全部書いてるとものすごく長くなって大変そうなので端折ります。といってもそれでも長くなりましたが・・・。

 

最初から、お互い一目惚れで相思相愛なのに、二人の恋の邪魔が強力で、同じ年頃の子だけじゃなく、大人も絡んできて、結構複雑に絡み合い、ずーっとジロと小鳥の仲は邪魔され続けてなかなかうまくいかないのです。その邪魔者のうちの大人の絡み方が、小ずるくて嫌な感じでした。

まず最初にジロと喫茶店で出会った大人のおねーさんに見える女の子はジロと同級生で同じ高校の女の子、三池(ミケ)でした。彼女とは実はジロが勘違いしただけで寝ていません。キスされただけ、その後もふいをついてキスされたりはあっても彼女とはそれ以上にはならず、ジロはミケには恋愛感情は全くなさそうです。だけど、ミケはジロの事が好きで、ジロはすぐ流されちゃうしミケが強引なので、なにかと引っ張っていかれちゃったりして小鳥と一緒にいるのを邪魔されることが多い感じがしました。
連載当時、読者には人気だったキャラらしいですが、私はジロと小鳥の仲を邪魔する邪魔者であまり好きじゃなかったです。

ミケ自身も家庭環境が円満ではなく、姉、弟は真面目で優秀なのにミケはそうではなく、13歳で17歳に見える大人っぽい子で早いうちに男性経験があって、遊び歩いているような子で、母親から生まなければよかったと言われてしまいます。高校も真面目に通うつもりがなかったけど、ジロがいたので高校に通うことにしたのでした。そして父親が、娘をキレイだと会社の人に褒められて喜んでいる姿を見て「キレイになろう」と思った子で、ファザコンなのか、恋愛感情に近いのか、そういう感情を父親に持っているっぽくて、父親の方もミケにだけカードを渡して好きに使わせたりと甘い一方で、男遊びをする娘を張り倒すことも度々あり・・・という、なんか愛憎入り交じった関係なのかな?よくわかりません。
そして、最後に実はミケの父親がジロの実の父親で、ミケとジロは異母兄弟だとわかります。

 

同じく同級生の権田くん(ゴンちゃん)は、女の子みたいにキレイで華奢な子なんだけど、自分に自信がなくて入学式の日に泣いているところを小鳥が声をかけたのがキッカケで、小鳥はゴンちゃんに好かれてしまい、そのあとずーっとゴンちゃんは小鳥について回り、「好き好き」アピールをしてきます。ゴンちゃんはお金持ちの家の子なので、ゴンちゃん家の別荘に招待されたり等します。

最初はジロにはミケ、小鳥にはゴンちゃんがくっついて、ジロと小鳥がなかなか一緒にいられないって感じになります。でも、この二人にはジロも小鳥も恋愛感情を持ってないので、ワイワイうるさく明るく邪魔されるだけで、他の邪魔者に比べると軽い邪魔です。

ゴンちゃんは後半、小鳥、ミケが寮に入った時の同室の中2の女の子(エスカレーター式の学校なので中学もある)がゴンちゃんにくっつくようになってからは、ゴンちゃんはその子にくっつかれてる姿が小さく出てくるだけになってしまった。髪を切ったのは小鳥の勧めでだけど、それ以降、ゴンちゃんは髪を伸ばすことはなく、前のように大きく描かれることもないまま終わった。ゴンちゃんに相手ができてよかったけど、ミケと違ってゴンちゃんはもう役割終わりって感じでほぼ退場みたいな感じになっちゃうのはちょっとさみしかった。でも、小鳥にくっついてるだけではあったから、同じように出てきても他にいっぱい登場人物がいる中で、ゴチャゴチャしちゃうし(してるけど)、あまり役割のないゴンちゃんは出番を減らしたかったのかな、という感じがしました。

 

ジロは、高校の先代理事長の愛人の息子ということになっていますが、現理事長(先代の妻)はおばあさん世代。なので、ジロの兄(先代の息子)は40歳くらい年上。その息子はジロの甥にあたるが20代で高校の教師をしていて、ジロに冷たい態度をとる、良(りょう)。
そして理事長の姪にあたりジロのイトコにあたる氷見子。
が、ジロの父方の親族関係で主に出てくる人たちですが、実はジロはこの一族と血がつながってなかったと終盤でわかります。

ジロは育ててくれたおばあちゃん(戸籍上は母にあたるが年相応に、ばあちゃんと呼んでいる)が大好きで、小鳥にも「一番好きなんだ」と言います。
おばあちゃんの方は、ジロを実の息子以上にかわいがっていて、夫がジロの母親を少女の時に愛したように、自分もジロを愛している、男として見ているかのような感じで描かれています。

そんな一番好きなおばあちゃんに自分の好きな子を紹介したくて、小鳥をおばあちゃんに紹介しますが、小鳥が一人でおばあちゃんを訪ねて渡したバラを小鳥が帰った後で捨ててしまい、小鳥に嫉妬しているのか、といった感じに描かれています。

ここでおばあちゃんの孫みたいな年の男の子の好きな女の子に対する嫉妬ってのがでてきて「うわ〜」と思いました。よくある母親が息子の彼女に嫉妬するってのと似たようなヤツなのかもしれませんが、さすがにおばあちゃんの年の人で少年に対してってのは、うげーっと思っちゃいました。
まあ恋愛感情は年取ったって関係ないのかもだけど、もうちょっと達観しててほしかった。
でもこの作品はこういうのがたくさんでてくるんですヨネ。
小鳥は捨てられたことに気付いちゃって、好きな男の子が一番好きだと言っている人に嫌われたって思って凄くショックを受けます。そりゃそうだよね、胸が痛いよ、かわいそうだ。

でもこの時はそれをジロに言うことができて、ジロと一緒に別の花を選んで渡しに行くということになって、なんとなく解決みたいな感じになります。
それに後半は、ジロに一番好きなばーちゃんと言われて「2番めでしょうが」と思ってたり、おばあちゃんの別荘についてきてたのに小鳥たちのいる海に送り出してやったり、おばあちゃんが亡くなる直前頃には、おばあちゃんは小鳥に「ジロをお願い」と頼むし、この後の良や氷見子がジロにちょっかい出してたことも察していて、小鳥を傷つけたことを謝ったりするし、最初は小鳥の存在にショックを受けるけど受け入れてジロを託すって気持ちになったみたいで、女の嫉妬って感じの嫌なのがでてくるのは最初だけです。
そしてこの後の邪魔者と比べるとおばあちゃんのはかわいいもんです。

 

この後、ジロにちょっかいかけてくるのは、なんと小鳥の母親です。
小鳥の母親はニュースキャスターをしていてテレビにでてる有名人です。
ジロが小鳥にプレゼントを買いたいと思ってしたバイト先で、お客さんとして来た小鳥の母と出会います。ジロの方は小鳥の母がニュースキャスターをしているあの人と知っているので、客としてきた小鳥母を見てすぐわかりますが、小鳥母の方はもちろん知りません。

店でジロは小鳥母にキスをされるし、小鳥母の部屋に行くことになってしまい、そこでジロが小鳥と同じ年だと小鳥母にわかるけど、それでも小鳥母はジロをひと目見たときから知り合いに似ていて心惹かれるものを感じていて、いい雰囲気になってジロから小鳥母にキスをしちゃうし・・・。ジロは小鳥の顔が思い浮かんでそこでやめて帰るけど、流されすぎだよ、ジロ。
この後もなんかずっとそうなんだけどさ・・・。

小鳥母は結構本気でジロが好きになっちゃうし。小鳥が母のとこに泊まりに来てた時にジロが小鳥母のところにきて鉢合わせする時だって、母は小鳥にジロを自分の恋人候補として紹介しようとしてたし。
結局ここで鉢合わせして、やっと小鳥母は小鳥の好きな男の子ジロと自分が好きな男の子が同じ人だってわかって、小鳥もそれがわかってジロを母の所に置いて出ていこうとするんだけど、猫のおかげでジロがピンチになって、そのせいで「ジロが生きて無事ならそれでいい」って小鳥が思っちゃって、母とのことはウヤムヤな感じになります。

さすがに母も娘の好きな男の子を奪おうとは思わず、小鳥母がジロに恋愛感情を向けるのはここで終了になるけど、好きな男の子が母を好きになってるって嫌だよね・・・すごく。
ここでウヤムヤになるのもなんかなぁ。
小鳥がちゃんとジロに怒らないというのは、この後もわりとずっと続きます。

 

小鳥母は、昔、ジロの実の母親に小鳥の子守を頼んでた時期があって知り合いでした。
でも好きな名前で呼んでと言われていたので、本当の名前は知らなくて、ジロの母の正体はわからず。
ジロの母の本名は結局、最後まででてきません。ずっと誰に対しても同じように好きな名前で呼んでと言ってたらしく、施設育ちで同じ名前の子が5人いたので自分の名前が好きじゃなくてもう忘れちゃったとか・・・。

そして小鳥の子守を頼んでた当時、小鳥母はジロの母に惹かれるところがあって、はっきり描かれてないけど、恋愛感情に近い感情を感じてたのかもしれないみたいな描かれ方をしています。
その息子で、顔も似てるジロだから、小鳥母は惹かれたのかもしれないと考えてるけど、昔の友達に似てる&懐かしいってわけじゃなくて、同性だけど惹かれてた人なわけだから、結局言い訳にはならないというか、ジロ母に会ってなくても小鳥母はジロに惹かれたってことなんだから。
うーんやっぱり嫌だよね、小鳥からしたらものすごく。ここでもう終わりにはなるけどさ。
小鳥の母親ってのがなければ、ジロと小鳥母の関係もズルズル続いたんじゃないかなって感じがすごくあって、いやだなーこの関係も。

ジロはせっかくバイトに精を出して小鳥への誕生日プレゼントに指輪を買ったのに渡す前に落としちゃって、花束も落として車にひかれてダメになって、小鳥の家に行こうとしたけど近くで小鳥母をみかけて、今紹介されたらまずいと思って隠れて、ほぼ終わった頃に行って、小鳥にキスして帰ります。
この時がジロと小鳥の初キスで小鳥はキスをプレゼントと思って喜ぶけど、ジロとしては本来予定していたプレゼントを渡せずキスでごまかしたなんて最低だと思ってます。

小鳥は高い指輪なんて望んでなくて、ジロがバイトして時間なくなって一緒にいられなくなるよりも、一緒にいられる時間がある方がいいと思っているのに、ジロにはそういうのがわからない。
たぶんこの考え方の違いがラストまで続いているのかなと言う気がしました。

ジロは小鳥とキスするより先に小鳥母とキスしちゃってるわけで、うーんほんと嫌だなーこういうの。

 

あと恋愛がらみじゃないけど小鳥父もジロとの仲を邪魔してきます。
小鳥父はジロが愛人の息子で実の親のいない境遇であることを問題視していて、それよりもお金持ち一族で真面目(だと小鳥父は思っている)な良の方がいいと思っています。小鳥母もその小鳥父の考えを聞いて呆れますが、ほんと何だそりゃな考えです。ジロはまだ高1なんだから複雑な家庭環境関係なく、何も持ってなくたって当たり前じゃん。これから社会に出て仕事して築いていくもんでしょうが。
小鳥父が言ってるのは要するに家柄ってことで、愛してない金持ちと結婚するより好きな男と結婚した方がいいってことがわからないなんて、バカな大人だなと思う。いまだに物質的な豊かさを幸福だと思っているなんて。いやもちろん豊かさもプラスであったほうがいいですけどね。

そしてこの後の邪魔者はこの物語の中で一番強力で決定的にジロと小鳥の仲を裂きます。
それはジロの親族の良と氷見子で、二人とも悪い人じゃないと言われつつも、小鳥とジロの仲を一番邪魔する大人です。そこには遺産相続とかも絡んできて、単純に恋愛感情だけじゃない大人の思惑があって、ものすごく嫌な感じです。

そして良と氷見子は今で言うセフレ関係でしたが、良は小鳥を狙うことにしたので一応氷見子とは別れますが、寝なくなったというだけで、この二人の間でジロへの策略がめぐらされます。
氷見子は前々からジロを狙っていたというけど、彼女がジロを狙ってたのはなぜなんだろう。
ただ若い男の子が好きでジロは魅力的な男子だから?
でも「氷見子が狙っていた」と言ったのは良で、良は氷見子がジロから情報を聞き出すと「よくやった」と言っているので、やっぱり良が氷見子をけしかけてやらせてたんだよね。

 

良がジロに意地悪してたのは、ジロが大人たちから自分よりも可愛がられてたことに嫉妬してたってことなのかな。それとジロの実の母親に子供の頃会ってて、「初めて本気でほしいと思った女だった」と言ってる感情もそれに絡んでるのか?どう絡んでジロに意地悪する事になるのかよくわからないけど。
というジロへの意地悪プラス、純朴な女子高生である小鳥の存在そのものに癒やされたいという気持ちも本当にあって、小鳥にちょっかいかけてたのかな。
デートに誘ったり小鳥にアタックはしていくけど、今までの彼が接してた女性たちへの対応とは違って、いきなりキスしたりとかせず、ちゃんとずっとそういう性的なことは我慢して小鳥には接していて、終盤でキスするまでは何もしないので、そこはよかったなと思います。

小鳥にちょっかいかけてくる、ゴンちゃん、良等の男達と小鳥とは何もないのが幸いです。
小鳥がジロみたいに、そうそういろんな人にキスされたりしちゃってたら、やっぱり女の子の方がそれってのはさすがに嫌だなと思うので、そこはちゃんと純なままに描いてくれてます。
でも私はジロが何人もの人にキスされちゃうのもすごく嫌ですけど。

そして氷見子。彼女は出戻りで現理事長(おばあちゃん)の方の親族筋の姪で、前理事長とは血の繋がりはない人。
前理事長は好色と言われてた人でいろんな女の人と関係を持っていて、出戻ってきた氷見子とも寝ていたし、ジロの母とも寝ていた関係でした。理事長(おばあちゃん)が言うには、妻(おばあちゃん)に甘えたり泣いたりしてほしくて、妻の困った顔を見たくて、そういう行動をとっていたんだろうってことですが。
学園の敷地内の離れに住んでいて、迷い込んできた男の子の相手をしていた童貞キラーらしい。
そして良も氷見子に14歳の時に童貞を奪われたようです。

 

氷見子は死産の経験があって、もう子供を産めない体らしい。
氷見子は37才で、ジロより22歳年上、良より14歳年上。
でもずっと若く見られていて「すごく美人」てことなんだけど、雰囲気は美人だと思うけど、私にはミケや小鳥母の方が美人だと思ったな。他の女性キャラに比べて目が小さいし顔は地味顔だと思いました。

小鳥母も小鳥の後に堕胎の経験があって、氷見子も小鳥母も生まれてこなかった子は男の子だったらしく、二人ともジロに息子を重ねてみている部分もあるんですが、息子への愛情と恋愛感情が混じってるってことなのかな?よく息子に恋愛感情に近い感情をもつ母親がいるという話は聞くけど、それなの?
そこがいまいち私には理解できない感情でした。私にも息子がいるけどまだ子供だからかもしれないけど、彼女ができても取られるみたいなことは考えてないし、そこに恋愛感情が混ざるってのが、わからないなぁ。年下の自分の子供でもおかしくない年齢の子を好きになるのは理解できるけど、そこに息子を重ねるかなぁ?二人とも実際に成長した息子がいなくて、生まれてこなかった、存在しない息子、実物がいないから、そう思える、つまり妄想みたいなもの、ってことなのかな?

氷見子に部屋にくるよう誘われて、最初の時はキスされるだけで逃げるけど、ジロが誘われてついていっちゃうってのもどうなんだ。そこで小鳥母と小鳥の母娘に気持ちがあってということを話してしまい、その情報は良に筒抜けで、「あと2週間待ってちょうだい」って氷見子が良に言うのとか、完全に二人の間で悪巧みがって、ジロを落とそうとしているんだよな。

 

そして夏休み、ジロは小鳥と一緒に海の近くのゴンちゃん別荘に誘われてたけど、おばあちゃんの別荘についていく方を選びます。それは良におばあちゃんの世話をして母親のことを聞き出せばと囁かれたからというのもあるんです。
そして良が友達をたくさん連れてくるという話を聞いて、ジロは嫌な予感がしたのに、最初にミケとの時もお酒を飲んで記憶をなくして寝ちゃったかもってなったのに、またお酒を大量に飲んでしまい、今度は本当に氷見子と寝てしまいます。(Hしたってことです)

「一番最初に寝る相手は世界で一番好きな女の子」ってジロは思ってたのに、ここまでなんとか逃れてきたのに、結局、氷見子が最初の相手になっちゃいました。すごくショックでした。
男の子は、というかまあ好きな相手と一緒にさえなれれば結局は最初の相手がどうかなんて関係ないとは思います、でも、そういうことをこの物語の中で語ってた男の子が、好きな子がいて両思いになってるのに、結局それをできないっていう展開は、ものすごく残念で嫌でした。
しかも「見事に引っかけられた」とは言うけど、2回目もしてるんですよ。そこはもう自分の意思で行ってるわけです。引っかけられた、はめられた、だけじゃないんですよ。

2回目のHの後、氷見子のところからでてきたところをおばあちゃんに見られます。その前の1回目の後の、良とジロの会話もたぶんおばあちゃんは聞いてたと思われます。だからジロが良と氷見子の策略で氷見子とHしちゃったっていう事に気付いてたと思う。それが最後に小鳥との会話で「小鳥を傷つけた」って言ってたことにつながるんだろうなと思う。

そしてこれ以上ジロが翻弄されないように車を出すから東京に戻れってことになったんでしょう。
ジロを大好きなおばあちゃんだけど、氷見子と寝たことについては感情的になったりしないんですね。
ただの体の関係は気にしないのかな。夫が散々、女性と関係を持ってた人だから、体だけの関係はどうでもいいって感じなんでしょうか。小鳥に対してのように気持ちが入ってる関係に嫉妬はしても。

 

小鳥に会いたいって思ってゴンちゃんの別荘に行くけど、そこへ良と氷見子も追っかけてきます。もちろん表面的にはただ氷見子に海に行きたいと言われて連れてきて、たまたまと言ってますが。
そして氷見子は小鳥父(小鳥と一緒にコンちゃん別荘についてきていた)にアプローチし、それをジロに見せつけ、嫉妬する感情を煽っています。良はそれを見て自分も昔同じことをされて翻弄されたと思っています。
ずーっとですが、ジロは良と氷見子の二人にいいように翻弄され続けるんです。
会いたかった小鳥に会っているのに、氷見子が目の前にいて他の男と一緒にいる姿を見せつけられれば気になってしまうジロ。

そしてこの別荘にいる時に、氷見子に話をしにきた小鳥をジロと勘違いして、氷見子が「今はだめ また東京に戻ったら寝てあげる」と言ってしまい、小鳥にジロと寝たことがバレてしまいます。氷見子はごまかしたつもりでしたがごまかせてません。

小鳥は別荘から戻って1週間、ジロからの電話等を無視しますが、ジロが小鳥の家に来てデートに誘います。なぜ電話も無視して、そんな態度をとるのかとジロに聞かれますが「べつに」とはっきり言いません。
キスをされても「うまいんだ 誰に教えてもらったのか知ってる」と思っています。
そしてジロと最初で最後かもと思いながらデートにでかけます。ジロの方は小鳥にバレてるとは知らないので、前に小鳥に言ったように「いつか絶対一緒に暮らすんだ」そして欲しい物をたくさん買ってあげようと思ったりしています。
そして小鳥は別れ際のキスは拒否します。

 

小鳥はデート中、知らなければ、わからないふりをすれば、幸福なのかもしれない、でもそんなこと絶対できない、と思います。
ジロはデート帰り、氷見子に誘われ、小鳥にキスを拒否されたこと、友人に年増と別れることはない、うまくやってくれるだろと言われたことを思い出して、誘われるままにまた氷見子と寝ます。
これは裏切りじゃない、好きなのは彼女だけ、スポーツみたいなもんだと思いながら。

2学期が始まり女子寮ができて、小鳥、ミケは寮に入ります。
小鳥父、氷見子は女子寮の監督をする人になります。

ジロに今度はどこに行こうかと言われた時に、小鳥は「私たち もう終わりにしよう」と別れを告げます。ジロは内心、当たり前だ、こうなるとわかってたじゃないか、裏切り者と自分で思いながらも、その理由を聞きますが、小鳥はハッキリ言いません。今でも好きだけど、行動についていけない、私たちまだそんな仲じゃないし深刻ぶることないけど、という小鳥の言葉に、小鳥が氷見子とのことを知ってるんだとジロは察します。

こういう、ハッキリ言ってないのに察するっていうのがジロだけじゃなく、この物語の中ではよくでてきます。みんな察するのスゴイな、よくすぐ察するな、と思いながら読んでました。

 

小鳥がはっきり物を言わないことが多いので、小鳥は主人公なのに人気のないキャラだったそうです。確かに小鳥はもうちょっとハッキリ言ってもよかったと思う。前半、ジロと言い合いになった時なんかはちゃんと言ってたけど、基本、ハッキリ言えない子なんだね。
でも私は終盤以外は、なんとなく理解できる気がしたので、それほどもっとハッキリ言って!とは思わなかった。でもここではもうちょっと言っても良かったとは思う。ハッキリ氷見子の名前を出して何か言ったら、それにジロがなんて言うのか知りたかった気はする。

ここで小鳥とは別れるので(いつから付き合うことになってたのかもよくわからないけど)、この後は裏切りではないけど、この後も氷見子とジロの関係は続きます。
ジロは小鳥に別れを告げられた後すぐに氷見子のところへ行き、氷見子を平手打ちしますが、それでもジロは氷見子と別れるわけじゃないんです。
小鳥が良にデートに誘われたのを聞いて(小鳥父も一緒)、対抗して氷見子をデートに誘ったりもします。
でもここではそれぞれのデートで、氷見子と良がお互いを意識している様子が描かれます。

ジロは氷見子に妊娠したと嘘をつかれてからかわれたが、その時に本気にして眼の前が真っ暗になるのを経験して、もっと責任を取れるようになってからじゃないと相手を傷つけるからもうやめようと、氷見子との別れを決意する。
氷見子も新しい相手=小鳥父にしようと思って、ジロと別れることにする。

その話を聞いて良は「うそつけ お前のジロに対する思い入れは普通じゃなかった」で、氷見子の子供の葬式の過去シーンが描かれてるのと、ジロと氷見子がお互い同じタイミングで別れ話を切り出した時に、「あなたは私の息子じゃないし」と思っているのから考えると、氷見子にとってはジロを息子に重ねてみていたっていうのが大きかったのかな。
でもそれで可愛がるとかじゃなくて、寝るってどうなの・・・?
やっぱり氷見子のジロへの感情は理解不能。
ただ良に言われてジロをひっかけるだけが目的じゃなかったらしいのはわかった。
別れ話の時に「ほんとは泣きたい気持ち」と思っているのは好きな気持ちもあったってことなんだよね。

 

結局わりとすぐ別れるなら小鳥との別れはなんだったんだ・・・。って言っても仕方ないことだけど、結局別れるなんてつき合ってみて結果そうなっただけだから、最初からわかってるわけじゃないし。でもこの人達のせいでジロと小鳥が別れたんだって思うとなんだかなぁ。

この物語中のジロは15〜16歳なので「若いんだからしょうがない」と言えばその通りで、全部それが言い訳になっちゃうのかもしれないけど、あまりにいいようにされすぎ。
あまりに汚い大人に思うように操られ騙されすぎちゃって、可哀想すぎる。
そして、だからって、流されすぎだよ、女性関係に関しては。
若いんだからしょうがないのかもしれないけど、男の子のそのくらいの年齢は性衝動に左右されやすくてしょうがないのかもしれないけどさ。

このくらいの年頃の男の子が、年上のキレイなお姉さんに誘惑されたら抗えないってことなんでしょうか。小鳥母も氷見子も。本当に好きな子は小鳥、だけど誘惑されたら性的欲求は抑えられないってこと?
そしてジロは実際に経験して痛い目をみて(小鳥と別れる)痛い目をみそうになって(妊娠)やっと理解したってことなのか。

小鳥はジロが年上の女性に惹かれてしまうのは、母親を求める気持ちが彼の中にあるからだと思っていますが、そういうことなのかな?
そしてジロの方は、自分が一方的に氷見子に甘えていただけなんだと言っていますが、うーんそういうことなのか?ジロからするとそういう気持ちだったってことなんでしょうね。
年上の女性に惹かれる=母親に甘える代わりになってたってこと?

 

そしてミケが始めた恋愛同好会の活動(それぞれデート相手を連れてきてデートして競う)で、小鳥もジロも参加することになる。ジロはミケ&小鳥と同部屋の中2の女の子に誘われてくることになったんだけど、もう氷見子と別れてフリーだったとはいえ、別に好きでもない中2の女の子に誘われてデートをOKしちゃうんです、ジロは。そして中2の女の子のわがままに付き合うんです。(この子はこの後すぐにゴンちゃんに乗り換えますが)

その様子を見て、どうしてジロと今一緒にいるのが自分じゃないのか、あのコはどうしてあんな風に甘えられるのか、あの時許す代わりにイジメてうんとわがまま言ってやればよかった、そうすればきっと何でも言う事聞いて許してくれた、泣きたい、と思ってる小鳥が切ない!

そしてその帰り、ジロと普通に話ができるようになってジロが氷見子と別れたって話も聞いて、「ジロにとって一番好きな女の子じゃなくたって いつもこうやって笑って話せればいいんだ」って小鳥が思ってるのも切ない。
クリスマスが近いようなので、この時点でジロと小鳥が別れて3ヶ月以上経ってて、ジロと氷見子のことを自分の中で消化できて許せる気持ちも出てきたってことなのかな。

そしてその後、ジロの母に似た人を見かけてジロが追いかけていって見つけるけど、ずっと後をつけていたのを気付かれて「気持ち悪い」と言われてしまいますが、この時は誤魔化して帰ります。
自分を見ても気付かないんだと軽くショックを受け、小鳥には人違いだったと報告します。

 

クリスマスの日、ジロの母が学校に来て、おばあさんが気付きますが、追い返そうとします。
夏にジロに自分が死ぬ前にジロの母親を見つけないとって言ってたのになぜ?
そう思ってはいたけど実際会っちゃうとジロを取られると思って追い返しちゃうの?
そしてジロ母は、実はジロはここの一族とは血の繋がりがないということを言おうとして来たけど、おばあさんはやっぱり知ってたんだね、と言い、それを小鳥は聞いてしまい、ジロはここと関係ない=ジロはここにいられない、どこかに連れて行かれてしまうと思って、小鳥がジロ母を追い返します。
小鳥は今までジロの母を見つけようとしてたのにね。

そして直後におばあさんが意識を失ってしまい、そばに小鳥がついていたのになぜもっとよく見てなかったんだとジロになじられてしまいます。
思わず強く言ってしまったことをジロは小鳥に謝りますが、「ジロちゃんのいちばん大事なばーちゃんのことだもんね」と小鳥に言われ、そういうことを小鳥に言わせてしまったことを「いったいいつまで彼女にあんなことを言わせなきゃならないんだ」と反省します。
「一番好きなヤツを幸せにできなきゃ男じゃないよな」

冬休み、寮に残ったジロと小鳥は友達として一緒に街に出かけるんですが、そこでジロが「あ、あのコかわいい」、小鳥「あーいうタイプが好きなのか」って会話をするのは、なんだか嫌だなと思いました。
そこは二人とも友達のフリを精一杯してるってことなの?
でもわざわざ本当は好きな子に、別の女の子を「かわいい」なんて言うことないんじゃないの?
いくら友達のフリするにしても、そういう会話まですることないんじゃないの、残酷だなと思う。

 

そのデートの時、クリスマスの日にジロ母がおばあちゃんに会ったことを小鳥がジロに思わず言ってしまい、ジロは自分の母がどんなにいい加減なヤツか知りたくなかったけど、こうなったらどこまでも知り尽くしてやると言って、小鳥を置いてジロ母のところへ行きます。
ジロ母は年配の小説家のところで家政婦のようなことをして居候していました。
今までもそういう感じで、誰かの所に居候して生きてきたようで、本当の名前は施設でつけられたけど同じ名前の子が5人もいて嫌でもう忘れた、いつも好きな名前で呼んでもらっていた、ということがわかります。

そして、雪がたくさん降っててジロは泊まることになり(小説家は不在)、ジロ母と一緒のベッドに寝て、ジロ母がくっついてきて、そっちがそのつもりならとジロはおそらくHをしようとしますが、結局できないで終わります。
ここもなんだかなぁ・・・。
ジロ母は後でジロに会いに来た時の話からすると、おそらく最初にジロが後をつけてきたときからジロのことを息子だとわかっていたのに、わかっていないふりをしていたようなんだけど、それはなぜなのかよくわかりません。おばあさんが亡くなるまでは会いにきちゃいけないと思っていたから、会いに来てくれて嬉しいと思ったけど、正体を明かさなかったの?
それでいて、この一緒のベッドに入って、Hするのを誘ってるかのような態度はなんでなの?
ジロが一目惚れとか言い訳した真偽を確かめるため?で、ちょっと変わった感じの人だから、普通はだからってそんなことしないようなことをしたってことなの?

なんかこの時のジロ母の態度もイマイチよくわかんないんだよね。
なんで、息子相手に男女の関係っぽく振る舞ったの?
氷見子と似た感じで、ジロ母もそうやって男に取り入って生きてきたんだろうけど、なぜそれを息子にやるの?
そしてまたここでもジロがそうなりそうになる展開がすごく嫌だ。
ジロ母が自分には息子がいて全然関係ない人たちのところへ置いてきたという話をしたことで、ジロはおばあちゃん達と血縁関係がないことを知り、雪の降る中、おばあちゃんの病院へ行きます。

 

デートの後、おばあちゃんのお見舞いに行く予定だったので、小鳥だけお見舞いに行き、おばあちゃんにジロのことを頼むと言われます。そしてジロがジロ母と一緒にいる時、おばあちゃんは亡くなります。
ジロが病院に着いた時は、みんなおばあちゃんと一緒に家に帰った後でした。

葬式の日、ジロ母がジロに会いに来て一緒に暮らそうと言います。
ジロ母は小鳥母の仕事で取材に行った夜間学校で再会していました。なので小鳥母経由でおばあちゃんが亡くなったことを知ったんでしょう。
そして、ジロ母が今まで何度もおばあちゃんに追い返されていたことを知ります。
ジロはずっと一度でいいから自分の母親に会いたいと思っていたけど、もう会えたからいいんだ、好きな子がいて一番大事で、これからその子のことだけ考えていたいんだ、と言って断ります。

そしてジロは小鳥に学校を卒業したら一緒に暮らそうと言い、二人で約束します。
冬休みが明けて三学期、ミケ達が帰ってきて、よりを戻したか聞かれるけど二人は隠します。なぜだろう?いろいろ騒がれると面倒くさいから?

そしておばあさんの遺言が公開されると、おばあさんが生前ジロに言っていた通り、ジロが全財産を相続し、他の人には何も相続させないという内容でした。当然親族はザワザワします。
その中、氷見子がジロを連れ出し、味方になると言ったでしょ、と甘い言葉をかけ、ジロから血の繋がりがないことを聞き出します。氷見子は独り身だから自分がこの先生きていけるだけの遺産を狙ってたってことなのか、ジロは血縁じゃない=ジロは遺産をもらえないと解釈してか、ホッとして思わず本音を漏らして「冗談じゃない、一族中が騙されるとこだった、バカバカしい」と言う。
ジロは「甘い言葉に騙された、バカだ」と思って飛び出していく。

 

良と氷見子はおばあさんが亡くなってからセフレ関係が復活してるっぽい。そうじゃなくても常に二人で悪巧みとか情報交換してるんだけど、ジロから聞き出した血縁じゃないという情報を氷見子が良に伝えると、良は早速、親族会議を開こうとする。
氷見子が情報を教えた代わりに私の要求を聞いてくれるはずだと言って、ジロが卒業までここにいられるように頼むと、良は「こんなに傷ついたのは生まれて初めてだ」と言って、ジロを寮からすぐに追い出してしまう。

良と氷見子はグルだったわけで、しかもこの二人はそれぞれ狙ってる相手がいても、お互いを意識し続けていて、良(氷見子)がこんなところをみたらどう思うだろうかとお互いが思ったりしていました。
つまり、無意識だったかもしれないけど、二人はそれぞれお互いが好きだったってことなんですね、たぶん。そしてジロはずっと大人から可愛がられてきて、良はそれに嫉妬してきたけど、自分の側だと思ってた&好きな氷見子の願いがジロのことだったってことが、傷ついたってことなのかな。

良は寮監をしてるけど、寮から追い出す権限なんて本当はないはず。もし寮から出ないといけないことになったとしても、そんな突然あと5分で準備して出て行けなんていうのは無茶なことで、そんなことがあるはずないと思います。
だからこれは良が感情的になって勝手にやったことだと思います。

なのにジロは、自分はここに関係のない人間なのに16年も置いてもらった、すぐに追い出されてもおかしくないと思っているので、それに反抗せずにすぐに受け入れて出ていってしまうんですね。
だから、本当なら良に言われて、行くところがない時に、義理の兄(おばあちゃん息子)のところへ行けばすぐに追い出されたりせずにどうにかなったはずなのに、もうこの一族の人を頼るわけにはいかないと思ったんでしょうか。

 

そして氷見子は出ていくジロを止めに来て、置いてくれるように言ったんだけどと弁明しますが、逆にジロに「もっと強くなりな」と諭されます。ジロは若さゆえにいいようにされてきたけど、そういうところはちゃんと人を見てたってことなのか、こんな時によく言えるなと思う。
小鳥はジロが出ていったことをミケから聞いて(ミケはよく男子寮に遊びに行っててこの時も追い出される場面に出くわした)、良のところに行って「酷い」と言い、おばあさんはジロが血縁じゃないことを知っていたと告げる。

ジロが出ていくことを予感してたかのように、しばらく前からジロがずっとここにいてほしいと願っていた小鳥の願いに反して、ジロは出ていくことになります。しかも直接別れの挨拶もなしに突然に。
でも、追い立てられて門から閉め出されたってわけじゃないんだから、小鳥に別れの挨拶を言いにいけたと思うんだよね。ミケがいたから寮に入れなくても呼び出してもらえばいいわけで。
ミケに「約束は絶対守る」って伝言したけど、なんで自分で言わないの?
別れが辛くなるから?これからどうすればいいかわからない惨めな姿を見せたくないから?

 

そしてこの後ずーっとラストでジロが小鳥を迎えに来るまで、小鳥に何の連絡もよこしません。
それってなんでなの?そこが一番納得いかなかった。
ラストで卒業式の日にジロが小鳥を迎えに来て、約束を守ったことにはなるけど、それまで2年も経ってるし、迎えに来るまで何の連絡もないなんて小鳥は不安になって当然。だってしようと思えば連絡できるはずなんだから。小鳥の居場所は変わってないんだし。

なぜなの?
良に見つかった時に、小鳥に会いたくないって言ったのは、今はまだ会えない、ってことだったんだろうというのは、まだ理解できる。
「金貯めて住む所もちゃんとできるようになったらでないと」と思ってたみたいだし、それまで迎えにはいけないと思ったのはわかるけど、でも何も連絡しないっていうのはないんじゃないの?
「大丈夫 彼女なら待っててくれる」じゃないんだよ。

そこがものすごくものすごく納得いかなかった。
バイトして指輪買った時もそうだったけど、ジロはバイトして彼女と会える時間が減っても、高い指輪を彼女に贈ってあげたい、でも小鳥はそんな高い物を無理して買ってくれるより、バイトする時間を自分と一緒にいてくれた方がよかった、というのをジロはわかってないんだね。
それが男としてのプライドなのかもしれないけど、そのために実際にはジロは小鳥を2年間、不幸にしていたと思う。幸福にしたいと思ってるはずの一番好きな女の子を。

なぜ?なぜ連絡しなかったの?
まだ迎えにはいけないけど、南の島で小鳥を迎えることができるようにがんばってるんだってことを教えてあげてれば、小鳥の2年間はもっと幸福だったろうに。
それにその間に会っちゃいけないの?一緒に暮らすのは卒業まで無理でも小鳥が会いに行くとかはできたはず。1年半経った頃に、ミケは父親についてジロのいる島にいってジロと再会しています。
それと同じように小鳥だって行けたはずなのに、ジロが連絡してくれていれば。
なーぜーなんだぁあああああ。

 

ミケはジロと再会したことを小鳥に告げますが、小鳥は会いには行きません。
ミケには好きなら理事長に住所聞いて行けばいいと言われるけど、でもそりゃあ小鳥からは行けないよね。ジロに「もう会いたくない」って言われたと思ってるんだから。そして連絡しようと思えばジロの方からできるはずなのにしてくれないんだから。

そして小鳥がジロのことを夢の中で自分が勝手に作った男の子なんじゃないかと思うことにしていて、目を閉じればすぐに会える、いつでも夢の中で会える、なんて思っているのが、ものすごく切ない!
小鳥に切ない思いをさせてばっかりじゃないか!ジロ。
「一番傷つけたくない子を傷つけた」って、もうずーっとなんだよ、ずっとジロは小鳥を傷つけ続けてるんだよ。なんで連絡しないんだよ。

ジロが出ていってから、良は小鳥に一緒にジロを探そうと言って車に乗せてジロのバイト先に行ったりするけれど、途中で良は理事長(おばあちゃんの息子、良の父)から探偵を雇ってジロの居場所等を調べさせたことを聞いているので、良は知っていたはずなのに、小鳥には言わなかったんだね。
良は小鳥を車で連れ出す口実にしてたんだろうね。バイト先とかには行ったにしても。

 

そしてジロを見かけた時には、小鳥に会うようにちゃんとジロに言うけど、ジロが会いたくないって言ったことを、ジロは「今は」会いたくないってことだったと思うんだけど、小鳥には「もう」会いたくないって伝えたんじゃないだろうか。
もしくは正しく伝えたけど、小鳥がそういう意味に受け取ったのかもしれない。
だって、「今は」会えないってちゃんと説明されないと、会いたくないということ自体がなぜだかわからないもんね、小鳥からしたら。ジロが男のプライドで今は会えないなんて小鳥にはわからない。

そしてその時に良は、ジロに理事長からの申し出の南の島で暮らす提案を伝えていて、ジロが行くと答えているので、ジロが南の島に行っていることを良は知っているのに、その後の小鳥の様子を見ると、そういうことも伝えてないんだろうね。

良は完全な悪人ではないけど、半分真実も混ぜて嘘をつくような、ずる賢いヤツなんだ。
良が小鳥に手を出さずに辛抱強く待ってくれたのはよかったけど、でも、ジロから気持ちを離そうとして、ジロのことをちゃんとは伝えなかったんだね。
でも、良だけが悪いわけじゃない。良が本当のことをおそらく言ってないのは悪いけど、ジロが連絡してればすんだ話なんだから。

良と氷見子のセフレ関係はおそらくずっと続いていて、たぶん抱き合っているところを小鳥が見てしまう。その時、一応、小鳥と良はつき合っていたので、またもや氷見子に寝取られてることになるわけだ。
それを良が誤解だと追いかけていって、涙を流していた小鳥を見て、良が小鳥にキスをする。
そして、小鳥は前に言われていた指輪を作ってくれと良に言う。
そして小鳥は良と婚約をする。これが高3の夏休み。
この後、ミケからジロに会ったという話を聞くけれど何もせず、そのまま卒業式を迎える。

 

ジロが出ていってから、ジロからの連絡もなく、会いたくないと言われて、ジロのことを忘れようと思った小鳥の気持ちはわかる。でも小鳥が良とつき合った気持ちはわからない。
ジロを追い出したと知った時に、大嫌いって言ったじゃん。
自分でも「今までのことを考えると好きになるはずがないのに」と言っているのに、「自分の気持ちなんかどうでもいいような気がして」なんて、母が言うように修道女のようなことを言って、良を受け入れてしまったのはなぜなのかわからない。

一番大好きだったジロがいなくなってしまったから、もうどうでもよくなってしまったってことなんだろうか。
だから、良がまたもや氷見子と寝てても、それを見て涙を流しても、それでもジロじゃないからどうでもよくて、良と婚約したんだろうか。

ラスト、卒業式の後、パーティーの準備をしているところにジロが来る。この時は姿は見えないけど「どこの美容室?」と小鳥母に聞いていて、姿をみた小鳥母が驚く表情をしている。
おそらく物語冒頭で出てきた美容室で小鳥が、「あの時のことは夢の中の出来事だったみたい」と考えていると、窓ガラスをコツコツたたく人がいて、それが花束を持ったジロだった。
良が遅いなと思って美容室へ行くと、ジロが美容室から出てきて、それに続いて髪を短く切った小鳥が飛び出してきて、二人で手をつないでかけていく。

「そうだ彼女を
 連れて行ってやってくれ
 南の島でもなんでも
 おまえと暮らす場所なら
 きっとどこだって楽園なんだ」

結局、良はそう思って、二人を追いかけもせず、そのまま静かに見送る。
もうそれを見た瞬間に、二人のことを認めてしまって、少しも驚いた様子もなく受け入れている。
婚約までしていたのに、そんなあっさり二人を認めてしまう良の小鳥への気持ちってなんだったんだろう。

ジロと小鳥が出会って一緒に過ごしたのは1年にも満たない。冬休み明けてすぐくらいにジロは出ていってしまったからずいぶん短い。その後、ジロがいなかった期間は2年もあって、良と小鳥は1年半くらいの間つき合っていたはず。
もちろん、時間の長さなんて関係ないくらいジロと小鳥は運命の二人だったんだと思う。

でも良は小鳥を手に入れようと策略をめぐらし、それなりの期間つき合ったのに、小鳥を連れて行かれることを、そんなにあっさり受け入れるんだろうか。
今までのことは何だったんだ。

そして、観念したように、やっと自分の気持ちを認めて、跡継ぎを産めない氷見子の状況を受け入れて、良は氷見子と一緒になることにする。結局この二人が素直にお互いを認めるまでのゴタゴタに巻き込まれたのかよって感じがする。
そういういろんなことを経ないとそうなれなかったのかもしれないけど。

そして、ジロと小鳥がおそらく南の島で、大きなベッドで二人で裸で寝ている絵で終わる。

 


一応、ジロが約束どおりに小鳥を迎えに来て、南の島で一緒に暮らすことになってハッピーエンドなのかもしれないけど、最後、ジロが美容室に迎えに来た所から二人のセリフは全く何もないのが、残念。
ジロと小鳥が再会して、ジロはどうして何も連絡しなかったのか、教えてほしかった。
良がなかなか手を出さなかったから、ジロは無事間に合って小鳥を迎えられたけど、良の手出しが早かったからどうすんの?自分も他の女と寝ちゃったから良と寝ててもそこは気にしないって思ってたの?そしてさすがに高校卒業前に結婚はしないだろうと思ってたの?
そうだとしても、なぜ全く連絡しなかったの?小鳥がかわいそうじゃん!

もうほんとにこの物語って、ジロが最初から、他の女の子とキスしてるところを小鳥に見せる所から始まって、ずーーーーーーーーっと、小鳥を傷つけ続ける話だったなと思う。
ジロが他の女とキスしたり寝たりするのばっかりで、ジロと小鳥が仲良くしてるシーン、期間ってすごく短かった。だから、すごく辛い話だったよ、これ。

作者さんも、この「マーガレットレインボーブックス」のあとがきで「なにが辛かったかって?やっぱりこの作品のムードが描いていくうちにどんどん重いものになっていってしまったことです」と書いているように、やっぱ辛いよね、このお話。辛いことばかりだよ。
ラブラブな期間ちょっとしかないもん。
最初から二人は両思いのはずなのに、主に大人たちに翻弄され続けて、うまくいかないのばっかりなんだもん。

そして最後も、ほんとに最後の最後で、二人が一緒になれて、でも何の言葉もないので、全くそれまでの辛さが解消されなくて終わっちゃうから、「ハッピーエンドだーよかったー!」って感じじゃなくて、読み終わってハッピーエンドでも、全然読み終わっていい気持ちになれないし、辛いままだし。
あれだけじゃ、辛さが全然解消されない・・・・・。

 

遺産相続問題について。
まず、おばあちゃん、現実的な実務能力はイマイチだったのかな。
ジロへの感情ばかり大きくて、ジロへ全部相続するように遺言書で残したけど、遺言書で残しただけじゃ揉めるって思わなかったのか?しかもジロが血縁じゃないことを誰にも言うなと小鳥に言ってたけど、言わなければそれですむと思ってたの?調べればわかっちゃうんだよ。そして全額相続なんて遺言を残したら親族達が調べようとするだろうって予想できなかったのか?
そこら辺の予想が甘すぎる!

結局、おばあちゃんの願いとは真逆に、ジロは追い出されることになってしまったし。
小鳥に頼んだって、小鳥だってまだ16歳なんだから、小鳥にできるのは心の支えになることくらいで、現実的な生活面のことは小鳥には無理なんだから、ジロが独り立ちできるまでの生活面を誰かに頼んでおかないと。遺言書で、長男を後見人にしてるけど、ちゃんと直接伝えてあったの?
ジロが出ていった後の行方を探偵を使って調べさせたり、自分に相続された島にジロを住まわせたり、実質、長男がジロの面倒を見てくれたけど、でも追い出した良を叱るとかはなかったし、なぜか良に島のことを伝えさせるとか、対応がイマイチな感じ。
もっとしっかり長男に頼まないとダメだったんじゃないの。

それと氷見子も良も、ジロが血縁じゃなければ相続できないと思ってるみたいだけど、遺言書があったら、血縁かどうかは関係なく、遺言書に書いてある人物が相続できると思います。
そこで親族に裁判を起こされたらどうなるかは知らないけど。
でもちゃんとした遺言書があるんだから、血縁うんぬんは関係ないはずと思って「あれ?」って思いました。良も氷見子もそういうこと知らなかったってことかな?それとも作者さんが?
ジロが知らないのは仕方ないとしても。

小鳥母は小鳥父と復縁し、小鳥の弟になる息子を産みました。
なので小鳥の家族の方は、丸く収まってます。
小鳥母は、前に産めなかった息子を得たことで、彼女の中のトラウマのようなものが解消されたんでしょうか。

感想をここら辺まで書いたけど、あまりに小鳥とジロが大人達に翻弄されて、離されてしまう展開が辛くて苦しくて、このラストではそれが解消できず、自分の気持が辛すぎて、途中で放置してしまっていました。

ジロはなぜ小鳥に連絡を取らなかったのか、ちゃんと物語中で説明してほしかった。
小鳥はなぜジロの消息を知っても会いに行かなかったのか、なぜ良と婚約したのかも説明してほしかった。
二人の最後の再会をもっとちゃんと描いてほしかった。
二人にちゃんとセリフ付きの会話をして見せてほしかった。

二人はやっと一緒になれてハッピーエンドだけど、あれだけしか描かれないで終わってしまったのは、ものすごく物足りないし、不満でした。

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