小説「御曹司の敏腕社長が初恋をこじらせたようです」作者:園内かな 画:筑谷たか菜 感想


<↑試し読み> Renta!

短期で雇われた派遣社員女性に人生初の恋に落ちてしまったイケメン社長が恋に溺れてヘタレになってしまうお話。彼女に一途になりすぎる社長の思考がかわいくておもしろいです。

ピッコマにて。完結。
珍しくピッコマで最終話まで「待てば¥0」で読める作品です。
ジャンルはTLで、Hシーンの描写もあります。
amazon kindle unlimited でも読めます(2019/6現在)。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

実家の一族が手広く事業をしている御息家の御曹司、御息伶貴(みそく れいき)は自分で会社を立ち上げ、M&Aの会社の社長。御息家の分家の息子、伶貴の年下のイトコの雅貴が仕事のノウハウを教えてほしいと三ヶ月の期間限定で一緒に働いているが、その後は本拠地の京都に帰って仕事を手がける予定になっている。

 

雅貴には一途に愛する彼女がいる。
雅貴は容姿端麗で、道行く人が振り返るほどの美貌。
雅貴は、伶貴の会社に勤めていた佐伯という女性に、見つめられたくもないし想われるのも迷惑だと、佐伯が告白もしていないのに、はっきり告げた。
佐伯がどう思っていたかはわからないが、雅貴の美貌ゆえに知らず知らずのうちに見惚れてしまっていたのだろうが、気の強い佐伯は怒って退職願を出してきた。
佐伯は会社の立ち上げたときから働いている、生意気なところもあるが優秀な社員だったので、雅貴は休職扱いにして、代わりに雅貴が東京にいる間は別の者を短期で雇うことにした。

そこで雇うことになったのが、派遣社員の椎名理香子。
もう一人候補がいたが、雅貴は一目見たときから何か理香子にひかれるものがあって、後頭部をガツンと殴られたような衝撃を受けた。

ここから雅貴の理香子に対する想いが暴走していく。
終業時間になると責任者がタイムシートにサインをする事になっているが、雅貴は理香子に毎日サインを求められるのが密かな楽しみになっていた。彼女にペンを渡される時に微かに手が触れる程度の事にドキドキする。

 

ある日、電話中に終業時間になったため雅貴はサインができず、代わりに理香子が副社長の天岡にサインを頼んだのを見て歯噛みしそうになる。彼女からペンを受け取る時に手が触れるのかと嫉妬しそうになり、天岡が自分のペンで書いたのでそれはよかったが、「業務はどうですか」と天岡が声をかけ、それに理香子が笑顔で受け答えしているのを見て、嫉妬した。

翌日は終業時間間際に来た電話を「打合せ中だから折返し」にして、理香子にサインを求められるのを逃さないようにしているのとか、天岡が明日のランチに誘っているのを見て「何という巧妙な手法で誘い出すんだ、この男は」と内心思って睨みつけるのとか、雅貴が理香子の言動に一喜一憂する様子が、かわいくておもしろい。

結局ランチは天岡と二人ではなく、伶貴も一緒にということで、伶貴はその日、朝からソワソワしてしまう。
天岡はそんな伶貴の様子から伶貴の気持ちをしっかり察しているようで、笑いを噛み殺したりしている。

 

ランチでは「椎名さんはどこに住んでるの?」とか「家族って?」とか聞いちゃって、プライバシーを侵害するような直接的な物言いはだめだと天岡にダメ出しされたり。

理香子は、月花歌劇団という宝塚のような女性だけの歌劇団の熱烈なファンで、演劇鑑賞が趣味。
月花歌劇団の人気スターが退団するニュースに動揺し、仕事中にも何度も席を立って涙してしてしまうくらい。
理香子のブログかSNSの文面が友人のコメント付きで、理香子視点のお話として間にはさまれる。

伶貴は、仕事のできる有能なイケメンで、雅貴ほどではないが今までに女性に言い寄られる事も多く、それなりに交際経験はあるものの、本気で好きになった経験はなく、女性はどちらかと言えば面倒くさいと思っていたくらいだった。

なので、伶貴にとって理香子に感じる感情は初めての経験で、心臓が痛くなったりドキドキしたりを、体がおかしくなったのかと思ってしまうほど。

 

伶貴、雅貴の御息一族は昔から恋に落ちるとやけに執着し、相手を束縛する者が多い。
怨霊になって取り憑いたとか、無理心中を図ったとか、座敷牢に閉じ込めたとか、平安時代からそんな一族の話はゴロゴロしている。

雅貴も幼なじみの女性に一筋で、それ以外の女性からのアプローチを鬱陶しく思っているので、佐伯の件となった。今も身辺の警護を兼ねた調査報告と称して、彼女の身近に人を置いているらしい。

伶貴は、仕事はできるのに、恋愛ではヘタレになってしまっていて、雅貴に何度も無能呼ばわりされて、呆れられる。

なんとか理香子に告白して承諾されるが、業務中に社長を誑かしたと変な目で見られると派遣会社にも申し訳ないので、派遣社員としての契約期間が終わってから正式な交際にしてほしいと言われる。

 

理香子が観劇で休みをもらった日のこと、伶貴が関西に日帰り出張の予定で東京駅にいた時に、新幹線乗り場の近くで理香子をみかける。気になってついていくと広島行きの新幹線に乗り込んだので、自分のチケットを変えて同じ便に乗り、仕事をほったらかして、そのまま温泉旅館まで理香子の後を追う。

自分に嘘をついて休みをとって、誰か他の男と会う予定なのか等と妄想が膨らんで嫉妬に苦しくなる伶貴。
伶貴は、とうとう旅館で意を決して理香子の部屋に乗り込む。
当然、理香子は突然こんなところに現れた伶貴に驚愕。
伶貴は理香子を問い詰めるが、実は理香子は宝塚市にある大劇場で観劇するため、前乗りで近くの温泉に泊まりに来ていただけだった。理香子は大劇場の話もしていたのだが、伶貴は理香子の話をニコニコとうんうん聞いてはいたが、内容をちゃんと理解していなかったのだった。

他に好きな男がいるんじゃないか、本当は嫌がられていたんじゃないかとか、自分に自信がなくて、確かめるのが怖かったという伶貴に、理香子は、今まで伶貴は完璧なすごい人だと思っていたから自分は遊ばれているか何か裏があるのかと思っていて、自分の方こそ自信がなかったが、今日みたいに、取り乱して情けない所もあると思うと、必死な所が可愛く見えた、と言って、二人の仲はより深まることになった。

 

ここで誤解が解消され、一緒の部屋に泊まって、二人は一夜を共にする。そしてHシーン。
翌日は、一緒に観劇した後、関西旅行を楽しんで、東京に帰る。

その後、オーストラリアで英語留学してた佐伯は現地の男と恋に落ちた挙げ句、妊娠したということで、社には戻らない事になった。彼女は創立当初からのメンバーだからということで、休暇延長にも応じて優遇していたのに、結局、戻らないって・・・。
まあ最初に彼女は退職するって言ってたのを、そんな事情で創立メンバーな彼女を退職させては申し訳ないって気持ちで、引き止めてたわけで、いわば伶貴の良心が傷まないための自己満足な処置だったから、佐伯は悪くないんだけど、なんか彼女に振り回されたように感じてしまった。

佐伯が戻らないので、別に人を雇うことに決め、理香子は契約満了で退職。
順調に伶貴と結婚に向けて、両家の両親に挨拶したり等と進めていき、もうすぐ二人は結婚する。

今は理香子は伶貴の家に一緒に住んでいて、あまり出かけずにCSで観劇して過ごしている。
彼女をずっと自分の家に囲っておいて、外に出したくない伶貴は、それにとても満足していて、同じ考えの雅貴に羨ましがられている。

 

理香子は、押されて別に伶貴が嫌なわけじゃないから流された感があって、伶貴を好きにはなっただろうけど、イマイチな感じ。
理香子のブログかSNSも、理香子視点の気持ちがわかるのはいいけど、内容的にはイマイチでした。
最後は理香子のブログかSNSで終わって、理香子は本当に好きになったのか疑問な感じなので、終わり方もイマイチ。

とにかく、伶貴が理香子を大好きになっちゃって、一喜一憂、右往左往する様がかわいくておもしろかったです。そこが一番よかったポイント。