漫画「贄姫と獣の王」友藤結 感想


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人間とは別に魔族の国がある世界。
魔族の王様、魔王の生贄になるべく育てられ、生贄に捧げられた人間の少女と魔族の王のお話。
連載中。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

1〜11話

約100年前、先代の魔族の王が、人間と魔族との先の大戦を独断で和睦し停戦させた際に、停戦に反対する魔族の者達を抑えるために、停戦の条件として人間の生贄を差し出させることになり、その習慣がずっと続いている。
その生贄として差し出された15才の少女サリフィは、サリフィを育てた両親が自分たちの子供が生贄にならないように拾ってきて育てていた子供で(つまりサリフィは血の繋がりのない子供)、小さい頃にそれを知ったサリフィは生贄になり魔族の王に糧として食われる自分の運命を受け入れていた。

サリフィの、王を恐れず、食われることを受け入れている淡々とした態度に興味を持った王は、生贄を喰らう供犠のある天啓の夜まで、自分の傍に置くことにする。
魔族の国は人間の体には悪い瘴気が常に漂う国だが、天啓の夜には空の瘴気が晴れる。

供犠の天啓の夜、サリフィは祭壇の間に一人、置いていかれる。
そこへ来たのは、王の命を狙う刺客で、サリフィを助けたのは、人間の姿をした王だった。

 

実は、王は人間とのハーフで瘴気がないと人間の姿になり、魔族の力も無くなってしまう。
そしてその事は、宰相のアヌビスも誰も知らない秘密で、王は天啓の夜は誰にも見られないように暗闇の中で一人で過ごし、供犠の日は自分を傷つけて人間の血を残し、生贄は密かに逃していた。

サリフィは逃してもらっても帰るところがないから、最期は王に食べられたい、強くて優しい王の糧になりたい、と言う。
王は、サリフィを妃にすることにした。
名前がないという王に、サリフィは人間の国の古い言葉で「勇敢な心」という意味のレオンハートと名前をつけ、二人だけの時に王をレオと呼ぶことにした。

魔族は人間を嫌っているし、一般の魔族は人間を恐れてもいる。
そのため、特に王族に人間の血を入れるなどとんでもないと周りからは当然のごとく反対されるが、王の一喝で、反論を許さない。とはいえ、それだけで丸く収まることはなく、反対勢力もいるので、お后候補の姫が有力種族から送られてきたり、王妃として認められるための試練を受けることになったりする。

 

サリフィは人間で瘴気は身体に悪いので、サリフィが倒れ、人間の村の診療所の前に置いていかれ、サリフィは捨てられてしまったのかと思いつつも、診療所を手伝って働く。働き者のサリフィは診療所の人に喜ばれ、周りの人たちともどんどん仲良くなっていくが、ある時、サリフィが生贄だったことがバレて、周りの人の態度が一変。ずっと働いてくれていいと言っていた診療所の人にも出ていってくれと言われてしまう。

そこへ瘴気を中和する指輪を持ったレオが、サリフィを迎えに来る。その指輪を作るのに時間がかかるため、その間、サリフィを瘴気のない人間の国に置いておいたのだった。レオは「迎えに来る」と手紙を置いていったのだが、サリフィは勉強していたものの、まだ魔族の字が読めず、わからなかった。

 

そうして、サリフィを迎えに来たレオと一緒に魔族の国に戻り、宰相を始めとする周りの魔族達に反対されつつも、魔族の王レオとサリフィは、お互いを必要として、一生を共に生きていこうと心に決める。


このお互いが心の支えで、唯一心を許せる人な感じの設定はすごく好きなんですが、やりたいことはなんとなくわかるけど、ちょっといまひとつ、なりきれてない感じがしてしまいました。
キャラが役者とすると、演じきれていないというか。

特にサリフィの方。
熱いうるさいキャラじゃないのはいいんだけど、生贄になることを受け入れて生きてきたせいと言えば、それでキャラとしては合ってるのかもしれないけど、いろんなことを諦めてる感じがしすぎます。
悟ってる風だけど、それを演じきれてなくて、なんかちょっと薄ら寒い感じがしてしまうところが、いまひとつで、もうちょっと何か違えば、すごくいいんだけどなー、惜しいなーという感じです。

 

魔族の王レオは、人間の姿が野性味のある美形で、すっごくカッコいい。
初登場の絵は、ものすごくカッコいー!!と思いました。
でも残念ながら、たまーにしか人間にならないのです。
そして魔族としてのライオンのような姿は、ちょっと鼻のところが間延びしすぎて、そんなにカッコよくない。

巻末にあるオマケ話で、魔族と人間が入れ替わった話がありますが、それを見ると、レオだけじゃなく宰相アヌビスもカッコよくて、作者さんの描く鋭めな目付きの美形男子がすっごくカッコよくて好きだなーと思いました。でも、本編ではめったに出てこないんですよね・・・残念。

 

あと、最初の登場の人間レオは超かっこよかったけど、その後は、コマによって、顔の配置のバランスがいまいちな絵もあるので、そこも今後に期待。

ワニな見た目のお姫様、アミトがいい感じのコミカルさを出してくれています。
ワニはそんなに好きじゃないんだけど、アミトは見た目はかわいい人として描かれてなくて、むしろ真剣な表情は怖さのあるキャラなところがおもしろさを増している。

11話で、天啓の夜、人間の姿で暗い部屋に隠れているレオに、サリフィは立派な王妃になって魔族に人間を認めさせて、レオがこんなふうに隠れなくてもいいようにするから、信じて待ってて、と言うんだけど、その心意気は素晴らしいけれども、それはかなり難しいことだろうなと思いました。
まずはその気持がないと、ではあるけど、サリフィはまだまだ魔族のこともよく知らないし、どうやったら人間を魔族に認めてもらえるかなんて、具体的には全然わかってないだろうし、気持ちさえあればいつか伝わる的な、根性論みたいな考えでしかないと思うので、これからの道のりの遠さを思うと、言うのは簡単だけど・・・と思ってしまう。

なんというか、言ってることはかなり大変な難しいことなのに、その割に、それを貫くというほどの強さをサリフィの言葉に感じないんだよね。

 

王妃として認められるための1つ目の試練は、誰の助力も得ずに聖獣を呼び出す、という試練なんだけど、本番だけじゃなく、練習でも手伝ってもらったり教えてもらったりしちゃだめってことになってるんだけど、それはなんで?って思ってしまった。

宰相アヌビスからしたら、失敗してほしい、だから条件はなるべく厳しくしたい、って意図はあるだろうとして、でも、魔族でも難しい、王族でも誰でも聖獣を呼び出せるわけじゃないという事を、人間の全く初めてやる人が、本だけ見て出来るものなのか?、と思います。
普通に考えたら、無理でしょ?
本見て練習して1ヶ月?程度で、できるくらいなら、他の魔族の人だって、王族なら誰でもできるようになるくらいのものなんじゃないのって思うんです。

本番でサポートはだめってのはわかるけど、練習の時は教えてもらうの有りじゃないの?
それでも恐らく、人間には、できないだろうっていう事なんだと思います。
それを練習まで自力って条件なんかつけられたら、絶対無理じゃない?
その条件をのんでやろうとするのは、無謀すぎて、あり得なさすぎて、ええー?と思いました。

こんな悪条件でも成功させちゃったんだよ、何度も倒れるくらいな大変なことやってるんだよってのを演出させたかったんだろうけど、条件が無理すぎて「ええ?」ってなる。

 

12〜17話

サリフィの幼馴染、イリヤが魔族の国にくる話。
イリヤは幼い頃に、故郷の村を悪い魔族に襲われ、両親と妹を失い、逃げてるところをお師匠さんに助けられた。この時、妹を目の前で魔族に食われているため、魔族への憎しみが強い。魔族を倒せるように強くなるため、お師匠さんについて武者修行の旅をしていて、サリフィがいた村には1〜2年に一度、数日訪れていた。

小さい頃から生贄になることを受け入れていたサリフィは、親しい者を作らないように人とあまり深く関わらないようにして生きてきたため、友達はおらず、イリヤが唯一のサリフィの友達だったが、イリヤにも生贄の運命を受け入れていることを話していなかった。

サリフィが生贄にされたことを知ったイリヤは、敵を取るために魔族の王に会いに来た。
一人で来たため、魔族の兵を相手に暴れたものの、結局捕まってしまう。
サリフィの頼みで、レオはイリヤを国外追放にして二度と魔族の国に足を踏み入れない事という条件で、命は助ける。
サリフィに再会し、サリフィが生きていることを知って喜ぶが、サリフィを人間の国に連れ帰ろうとする。

 

イリヤは子供の頃からサリフィが好きなんだと言うが、サリフィはイリヤの目には私は映っていない、憎しみしかないから、イリヤの気持ちは受け入れられない、王様は争いのない世界を作りたいと思っている、強さの裏に優しさを隠して魔族も人間も守ろうとしてくれている、私も王様のそばにいてそれを助けたい、王様を信じる私を信じてほしい、と言う。

イリヤの憎しみは強く、サリフィの言葉はすぐには受け入れられない。
イリヤはレオと戦い、レオに自分が殺されることで、サリフィの目を覚まさせようとするが、レオは「お前が傷つけばサリフィが悲しむ」と言って、イリヤの剣を避けずに腹で受ける。
「私にはサリフィが必要なのだ」と言うレオ。
レオに駆け寄り、涙を流すサリフィを見て、自分は何をしに来たのかと自問自答するイリヤ。

 

サリフィはイリヤを抱きしめ、生贄になるまでの日々を穏やかにすごす事ができたのはイリヤがいたからで、イリヤにずっと救われていた、だからもう自分を許してあげて、私を守ってくれてありがとうと言う。
守れなかった妹の姿が重なり、泣きながらサリフィを抱きしめるイリヤ。

イリヤの気が済むまで相手をするとレオは言うが、もう一度戦っても相手にならないのはわかっているから修行をやり直すとイリヤは言い、サリフィと聖獣に送られ人間の国に帰る。
またイリヤがサリフィを連れ去るとは思わないのかとイリヤがレオに言うが、お前はもうそうしないとサリフィが信じるなら私もそれを信じるだけだとレオは答える。

 

サリフィを泣かしたら返してもらう、と言いながらイリヤが剣の柄をレオの顎に押し付けるんですが、これ、かなり失礼なことしてるよなーと思いました。そしてそれをレオは甘んじて受けてるんですけど、うーん、これはちょっとどうなの?って思いました。
顎に柄を押し付けられるの、かなりいやーな感じな行為だなぁと思って、これはいくらなんでも、やりすぎでは?という気がします。
これを受け入れちゃうのは、どうなの?ものすごく微妙・・・というか、これは払ってやらせなくていいレベルの行為なんでは?という気がすごくしました。

「私の名はレオンハート」ってレオが言っちゃってるのも、微妙になんか気恥ずかしい。
サリフィにつけてもらった名前を堂々と宣言して、たぶん、「おおー」って感じのはずなんだろうけど、うーん、私はちょっと素直にそう思えなかったです。

 

次の魚竜族の話(〜23話)も読みました。
海の種族の英雄が来て、英雄と従者を入れ替えていて、罰を受けて殺される覚悟で王様を見定めに来たというお話。

なんか全体的に、魔族の抱えている事情とか、イリヤもサリフィも王様もだけど、設定が暗いなぁと思います。

ピッコマで42話、7巻まで「待てば¥0」で読めるんですが、これ以上は読む気にならずに読了です。