小説「(仮)花嫁のやんごとなき事情8 離婚祭りは盛大に!?」作者:夕鷺かのう イラスト:山下ナナオ 感想


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中世っぽい世界観で、孤児院育ちの女の子が、お姫様の替え玉として、すぐに離婚するミッションで隣国の皇子に嫁いでいくお話。のシリーズ8作目。
6人目の皇子、ヨミが登場。皇宮に行くお話。

以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

「(仮)花嫁のやんごとなき事情1」感想
「(仮)花嫁のやんごとなき事情2」感想
「(仮)花嫁のやんごとなき事情3」感想
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「(仮)花嫁のやんごとなき事情6」感想
「(仮)花嫁のやんごとなき事情7」感想
「(仮)花嫁のやんごとなき事情8」感想

 

ストーリー

ヨミ・アグラヴェイン・エルラント
書庫番の皇子

母が妃の位をもらえない愛妾のため、周りは蔑むか利用しようとするかの人間ばかりで、人嫌いになり、いつも図書室に籠もって本を読んでばかりいた。
例外は、すぐ上の兄2人パールとユアンで、彼らは図書室に食事を持ってきて一緒に食べる等、ヨミの事をよく気にかけてくれていて、ヨミも彼らと一緒にいるのは好きだった。

パールはクロウが拝領してからは、ずっとそちらにいるので、ヨミが「クロウはずるい、僕からパールをとっていく」とすねると、パールは「兄上は与える人だ、あのひとに奪われるものなんてないはずだ、何ひとつ、ね」と泣いているようにも見える笑みを浮かべた。
「その意味はヨミにもユアンにもいつか話すよ」と言っていたが、その機会は訪れなかった。
ヨミはその笑顔の意味をどうしてもっと深く考えなかったのだろうと、いつも後悔と共に思い出す。

クロウ、フェル達は中央教会から黒龍城に戻るところだったが、皇帝から「春分節の祭典を皇宮で盛大に執り行うので皇子たちはその妻とともに欠けることなく集うこと」という通達が来て、途中で方向転換して皇宮に向かうことになった。

 

いつもはクロウの留守の城を守るケイだが、今回は「名のある東方商会を営んでいる」という理由で、皇帝に名指しされて呼ばれたため、ケイも同行する。
皇帝の手紙には「6人が皆集うことはないので喜ばしい」という奇妙な一文があり、皇子6人というのは亡くなったパールを入れた人数。
それに加えて、皇宮にはリグレインもいるせいか、クロウもケイも雰囲気が暗い。

途中の宿で侍女ラナが合流。
クロウはケイに中央教会でわかったことを伝える。
正教が宗教というのは表向きの姿で、本来は妖精に対抗するための存在で、聖詩篇は妖精に対する武器。
妖精王を封じ込めるのに役立つ楔石をカイズから預かったが、使い方を継承したのは第11聖席のオーゼンなので、わからない。
パールの日記に「扉」という言葉があり「楔石」と合わせてひとつだと書いてあった。

うーん、前巻で説明されてたのとちょっと違うような・・?
(本は確認できないけど)
「妖精王を封じ込めるのに役立つ」なんて具体的な事いってたっけ?
妖精に対抗するのに役立つ鍵っぽいけど、っていうぼんやりした事だけだった気がするんだけど、妖精王なんてピンポイントで言ってなかった気がするんだけどなぁ。
それに使い方は聖席12人で分けて継承してるんじゃなかった?
「オーゼンが」なんて、言ってたっけ?

 

クロウはパールの日記にあった「この国はもう駄目だ」という言葉と、オーゼンの言っていた「この国は護る価値がないほど腐っていた」という言葉がひっかかっている。
仮説はたてたが草創期からのエルラント国史に詳しい協力者が必要だと考え、末の皇子ヨミの事を思い浮かべていた。

皇宮に到着し、ユアンに会うと、新たなお供、ハヤブサのネヴァンを紹介される。
優秀な血統のを鷹匠に譲ってもらったハヤブサで、ユナイアまで一両日で文を届けて戻ってこれるという。(馬だと片道7日)
ジルフォードもミゼルカと一緒に合流。
フェルと面識のない残りの皇子ヨミは、黄龍公として去年拝領したばかりの16歳。

皇子が皇宮に来た時は、自分の母親の離宮に滞在するのが常だが、リグレインは男嫌いで離宮は女性のみ、クロウが拝領して離宮を出てからはクロウもほぼ入れない状態なので、ジルフォードの母の離宮に滞在するよう手配してくれたとのことで、有り難く受ける。

クロウ達が中央教会に行ってきた話をふられ、オーゼンの裏切り事件の話をすると、予想通りユアンはショックを受ける。裏切る素振りに心当たりはないが、動機は思い当たる事があるという。
オーゼンは10年程前、エルラントとユナイアの小競り合いで妻子を亡くしていた。
教会に妻子は入れないので聖職者に妻帯者は少ないが、オーゼンが夫婦仲良いのは教会でも評判だった。

 

オーゼンはクルヴァッハの北東の辺境の出身。村が焼かれて妻子が亡くなった事はカイズにも話しておらず、ユアンが知っていたのはある時、娘が生きていればお前くらいかなと言われたから。

やっぱりね。前巻で妻子の話が出た時に、きっと妻子を亡くしててそれが原因なんだろうなぁと思ってました。

皇帝、ウーベル・ペンドラゴン・エルラント。貴色は赤。モルドレッド帝の再来と謳われ対外的に穏健派の皇帝が続いていたエルラント帝国は彼の代になって武力で領土を拡大し、リグレインの祖国フレアメル王国も侵略され滅んだ。

皇帝へ謁見の時間になり、緊張でフェルは吐きそうになる。
実際に謁見の間へ行くと、皇帝の威圧感がすごい。
髪色は違うが、会ったことのある兄弟の中では皇帝はクロウに一番似ている。

いつもはおちゃらけているジルフォードの真面目な挨拶の後、皇帝も挨拶を述べ、春分節の儀礼の1つ「花霊の剣舞」をするようにいう。
いつも兄弟6人の中から2人選ばれ、善霊と悪霊に割り振られて即興の剣舞をしていた。

 

皇帝はイグレックに続きまた背信者がでた、皮肉を込めて疑わしい息子を善の役にするといって、クロウを名指しすると、兵たちがクロウを囲み槍を向ける。フェルは慌ててクロウに寄ろうとするが阻まれクロウにも止められる。

クロウが皇帝に理由を問うと、クロウの家令ケイが東方帝国の密偵である事、商路の建設、対立するユナイア王族との婚姻、で謀反の疑いがあるからだと政務官が答える。だがクロウは落ち着いて、そうだとして実害がないから今まで許可、黙認されていた事なのになぜなのかと尋ねる。

すると初代皇帝モルドレッドの剣を盗み出し皇帝の権威失墜を画策していると政務官が答える。
剣は宝物庫からつい先日盗まれ、実行犯は紅龍師団の兵で捕まえたものの「命じたのは黒龍公でユナイアや東方帝国と通じ皇帝の権威を失墜させエルラントに混乱を招くつもりだ、呪毒の犯人も黒龍公だ」と自白して自害したらしい。
エルラントでは皇帝の権威の象徴は、王冠ではなくモルドレッドの剣で、継承は戴冠式ではなく受剣式を行う。

 

クロウは見に覚えがないと言って皇帝に話を聞いて欲しいと言うが、問答無用で「連れて行け」と命令する。が、フェルがクロウを助けようと口を開いたけど噛んで変なことを言ってしまい、それがクロウに少し余裕を生んで、クロウは皇帝の戯れにフェルも戯れで返したのだという。

そして皇帝はクロウの釈明を聞く気になり、クロウは「自害した兵の件は無理矢理命令を聞かせる樹毒があることは陛下も知っているはず、実行犯が私の名を白状してから自害するのは不自然では?」という。
そして「春分の祭りまでに自身で潔白を証明し、真犯人とモルドレッドの剣を差し出せ」という条件で処分は保留になる。期限はあと5日。

謁見は終了し、一緒に謁見した兄弟たちは、ジルフォードの離宮に行って話をする。
ジルフォードがクロウに、1人で抱え込まずに情報を共有し我々を頼れといい、リグレインについてきちんと話をしたかったという。
クロウは、呪毒もモルドレッドの剣を盗んだのも黒幕はリグレインだと思っている、皇宮の外に剣を持ち出すのは難しいため、リグレインの離宮にあるだろうと推測しているという。

 

リグレインの離宮には男性は入れない。確証なしに兵に捜索させるわけにもいかない。
フェルが手を挙げるがクロウに却下される。

モルドレッドの剣は即位した者しか見ることも触れることもできず、ウーベルの受剣式は先帝、ドルイド第一聖席、ウーベルのみで行われ、今存命なのはウーベルのみなので、誰も見たことがなく形状さえも知らない。

モルドレッドの剣の事がわかるかもしれないのは、目録も史書も全部読み込んで暗記している第六皇子ヨミだとユアンが提案する。
騒がしいジルフォードがいると逃げてしまうかもしれないからとジルフォードは除外され、ユアン、クロウ、フェルで皇宮の図書室へ。

隅に座り込んでいたヨミを見つけ、モルドレッドの剣についてクロウが尋ねるが、話す義理はないと拒絶される。ジルフォードを毎日けしかけると脅すと、エルラント史上で父帝に反逆した息子の数と末路をツラツラと言い出す。
それにユアンが文句を言うとヨミは「真実を求めるなら血よりも紅く草よりも緑濃く雪よりも白い場所に」という聖詩篇の一部を口にし、モルドレッドの剣の事で自分が教えてあげるのはここまでと言って眠ってしまい、ユアンが揺さぶっても起きなかった。

部屋に戻りながら、フェルはクロウが自分に向けられた憎しみと同じだけ母親を憎んでいるのではないかと考える。そして明言されなかったが母親を殺す覚悟だったのではないかと思う。

んん?明言されなかった?
前巻で「殺さなければ殺される」ってフェルに言ってるのは明言してないのか?
「リグレインを殺す」とは言ってないけどそれはもう言ったも同然な言葉な気がするけど。

 

フェルの夢
先王コノールと、彼の専属の預言者だった前孤児院長ダグザの会話をフェルが夢に見ている。
コノールが妻が命と引き換えに産んだ忘れ形見のフェルを妖精王から取り戻す方法をダグザに調べさせていて、王宮と教会の機密情報からそれを得られたダグザがコノールに伝え、コノールがフェルを取り戻すように頼んでいるのと、ダグザがその覚悟と条件をコノールに確かめている場面。

コノール王は妖精王の呪いでろくな死に様にならない事は覚悟の上。妖精の目をあざむくには、それに見合う大切なもの、フェルとの親子の絆そのものを対価として差し出さねばならず、コノールとは親子でなくなり、彼女に接触しようと考えないようにしなければ、連れ戻されてしまう。コノールはそれを神誓で誓い、ダグザは命に変えてもフェルを取り戻すと約束する。
ここでフェルは目を覚まし、夢の内容を覚えていない。

 

ヨミが、モルドレッドの剣の在り処について特別に話したいことがあるとフェルに会いに来る。
ついてきてと言われて、着いたのは真っ白なリグレインの離宮でいつのまにかヨミは消えていて、侍女たちに通されて中に入ると、童女のような容姿のリグレインに会う。
リグレインがフェルをここに連れてくるようヨミに頼んだらしい。

赤い色ばかりのお菓子等に呪毒が入っているのではと手を付けられない。
言動の幼いリグレインにフェルが和みかけると、突然持っていた人形をナイフで指して「死ね」を連発した後、フェルは腕を掴まれて固まってしまう。
「こいつはヤバイ」と思っていると、クロウが来て、リグレインの手を離してくれた。
ヨミがヒントとして口ずさんだ聖詩篇はリグレインを指していた事がわかってクロウはここに来たのだった。

クロウはフェルを連れて去ろうとするが、リグレインに「パールのようにお嫁さんもいなくなるのかしら」という言葉に足を止め歯を食いしばる。次の「あの子はあなたのせいで死んだ、呪われた子、あなたさえいなければ誰も死なずに済んだのに。あなたもこの世に生まれなければ苦しまずにすんだのにね」というリグレインの言葉にフェルがブチギレ、リグレインの頬を叩いた。

 

フェルは虫がいたと言って謝り、近づいて来たクロウの頬も自分の頬も叩き、「親が子に言っていいことじゃない、旦那さなもなぜ言われたままなのか」という。
そしてこんな事を言われるのがクロウにとって日常茶飯事だったのだという事を思い知る。

フェルはリグレインに怒鳴った後、クロウを陥れようとしているのはリグレインなのだと確信した、モルドレッドの剣を返してと直球で要求する。
それに対してリグレインは「フェルは何も知らない、あなたがクロウと幸せになる道はなく解決の扉などみつからないのに必死で滑稽だ、呪われろ」と狂ったように高笑いしだした。

その様子に呆然としたフェルを引っ張って帰ろうとするクロウだが、急に笑うのをやめたリグレインに引き止められ、「賭けをしよう、私の出す課題をフェルが全部できたら離宮を好きに探していい」と言われる。
できなかったらフェルを差し出すよう言われ、クロウは反対するがフェルは受けて立つ。

クロウ&フェルは、ジルフォード、ユアンにリグレインとの1件を話す。
ヨミがリグレインと組んでいるのかもという話を、ヨミがパールをすごく慕っていたというユアンは信じられない。
リグレインの出したお題は、触れれば崩れるぼろぼろの灰の縄をなう等の無理難題のようなものだが、フェルはトンチで対応できそうだと見通しを立てている。

 

賭けの検分とフェルの護衛はジルフォードとミゼが引き受けてくれた。
フェルがリグレインの賭けをしている間、クロウは別の方法で嫌疑を晴らす行動を起こすという。

クロウはセタンタ王にユアンのハヤブサを使って調査依頼を出していた。
ちょうどガウェインが呼ばれて、ユナイア中央教会等を調べようとしたが目ぼしい手がかりが見つかっていないと話し合っていたところだった。

クロウはエルラント建国の祖モルドレッドが急速に力を伸ばしたのは妖精に力を借りたせいじゃないかと推測し、フェルと前孤児院長との関係を調べて欲しいとの依頼だった。
前院長ダグザがコノールの専属預言者だった記録は消されていて、セタンタはその事を知らなかった。
ダグザが残した言葉から、手がかりは孤児院にあるとふんでセタンタとガウェインは孤児院に向かう。

 

孤児院の地下で、ガウェイン宛のダグザの手紙が見つかる。
クロウの読みどおり、エルラント帝国はモルドレッドが当時の妖精王の力を借りて建てた国だった。
妖精王が力を貸したのは妖精の力だけでは叶わない欲しい物があったため、それと引き換えに。
太陽が昇る暁は青い浄化の力、太陽の沈む黄昏は紅い災禍の力を司る。

暁の色を宿す血筋はイル族。
青い浄化の力を持つ暁の子は殺して喰らうことで無害な糧に。
彼らは妖精を信仰し進んで生贄を差し出して禍いを避けてきた。

黄昏の色を宿す血筋はユナイア王族。
災禍の力を増す夕暮れの子は異界に連れ去り娶って力を取り込む。
彼らは聖詩篇を編み上げて真っ向から対抗した。

そのため聖詩篇を恐れない人間の介入を欲した妖精王がモルドレッドの野望に目をつけ、力をやる代わりに夕暮れの姫を奪うのに手を貸すよう取引をもちかけた。
妖精の加護を受けて強大化したエルラントに報復されるようになり、ユナイア王家は国の安全のために生贄として夕暮れの姫を差し出すしかなくなった。
だが、血筋が絶えないように王家は滅ぼさず。

 

エルラントが正教を信仰したのは、協力相手ではあるが万が一に備えて、妖精への対抗手段を持っておくため、ユナイアを真似て。

取り替え子は身体が弱く、子を奪われた親に疎まれるため、たいていはすぐに亡くなり、シレイネは珍しい例。
裏系譜に残るセタンタの曾祖母は、伝染病の大流行で王族が断絶の危機にあったため、血筋を残すために、すぐに連れ去られず、子を産んだ後に連れて行かれた。

そして妖精の要求を拒んだユナイア王がいた時が、夕暮れの姫の生まれた時期とエルラントとの戦争が重なった時。

ダグザはもう少しでドルイドになる予定だった人物で、ドルイドとして継承した知識と王宮で専属預言者として得た知識を使って、妖精王からフェルを奪い返した。
そして妖精から隠すためにフェルを聖職者の庇護の元に置き、聖詩編を覚えさせて身を守らせようとした。

花嫁を奪い返したコノール王は報復から逃れられなかった。
今、花嫁を横取りして妖精王の報復を受ける可能性が最も高いのはクロウ。

 

ユアンのハヤブサに返事を持たせ、ダグザの手紙のことをクロウに伝える。
またエルネットさりたの鳩を使ったキリヤからの手紙もクロウに届く。
パールの日記も血で固まったページを切り離して読み込んでいた。

血よりもなお紅いもの
それは心を燃え焦がす怒り
真草よりもなお緑濃きもの
それは苦く舌刺す緑青の毒
雪よりもなお白きもの
日輪よりも明らかな真実

剣の情報としてヨミが口ずさんでいた聖詩篇と同じ言葉がパールの日記にもあった。
ヨミがクロウに会いに来て、また剣にまつわる聖詩篇の話をする。
そして「扉」がモルドレッドの剣なのではと思う。

ヨミはクロウがパールの日記を持っている事に気付いて、触らせてほしいという。
「取り戻したいものがあるんです。クロウ兄上、あなたには分かるはず」

 

フェルは離宮で、リグレイン、ジルフォード、ミゼの見守る中、ユアンのハヤブサを借りて鴨を捕まえ羽を取り、1つ目の課題をクリアする。

クロウに聞いた話では、リグレインは夫、娘を殺され心を壊し、彼女の中の時も壊れてしまい、20年以上前から容姿が変わらず、心は日に日に幼くなっていき、特にパールが死んでから急激に退行が進んだらしい。

フェルはジルフォードから、クロウがこの離宮で何度もリグレインに殺されかかった事を聞く。生まれてすぐに殺されそうになった時はジルフォードの母の離宮にしばらく預けられていたが、しばらくしてまた戻された。毒を盛られる事が多く、13歳の時に毒蜘蛛を服に仕込まれた時は高熱を出して寝込んで死にかけ、パールが誰も兄に近づけず、つきっきりで看病したそうだ。
そしてクロウにとってパールだけが心の拠り所で、理性を保つ砦だった。

その話を聞いて、リグレイを絶対許さないというフェルにジルフォードは、誰か1人自分を理解してくれる人がそばにいることで人は救われる、フェルが感じてきた楽しいこと嬉しかったことをクロウに教えてあげてほしい、それがあの子を癒やしてくれるだろうからという。

 

その夜、クロウとフェルは長椅子に座って作戦会議。
クロウがウーベルの思惑についてフェルに説明する。ウーベルは大商路そのものは欲しいと思っているはずだが、それをまともにクロウが成し遂げてしまうとクロウの権勢が増してウーベルにとっておもしろくない。

あの謁見の場でウーベルにとっては、クロウが処断されてもよかったし、宝剣盗難の疑いを晴らしてもケイの密偵疑惑があればクロウはウーベルに従順な手駒になり、東方交易の利益も同時に手に入れられるので、どちらに転んでもよかった。

リグレインとウーベルは共謀していないが、リグレインの目論見がウーベルに都合がよかった。
リグレインがウーベルへの恨みをクロウにぶつけていることを知っていて、その感情を利用してクロウの力を殺ごうとしているだけ。

フェルはジルフォードに言われた事を実践しようと、自分が小さい頃にガウェインにされて嬉しかった事、高い高い、ギュッとして頭なでなでを考えるが体格差で無理なので、クロウの髪を梳く事にする。
ここで少しふれあいのひととき。

 

そして翌日、クロウがジルフォードに会った時に、ジルフォードがフェルに助言した事にふれると、いつもと違って照れて、「あの頃は何もしてやれなかった、失うまでわからず、素直に手を差し伸べられなかった後悔がある、私が変わろうとしたときには遅かった」という。

クロウがキリヤに尋ねた呪毒の話をジルフォードにする。「眠らずの蝶」の類型で理性を奪ったことすら気付かせず人間を意のままにできるものはないかという答えが「知らずの理(ことわり)」という呪毒が存在するとのこと。
クロウは妖精王がウーベルにこれを使って操っているのではないかと疑っている。

ユアンがカイズからクロウ宛に手紙が来たと持ってくる。
扉は鍵と合わせて使うことで妖精だけを向こう側に送り帰すことができる。
妖精はあわいをくぐるもの、不可能と可能のはざまも彼らを呼び寄せる、答えが不可能な問いかけにわざと答えさせることで連れ去りたい相手を自分の世界に近づけることができる、という内容にリグレインがフェルに仕掛けている賭けの課題がそれで、課題自体が罠だったと気付き、ジルフォードと共にすぐに離宮に兵を突入させることにした。

リグレインの離宮で課題をこなしていたフェルは、どうしても解けない「触れば崩れる灰の帯」をどうやって締めようかと考えているうちに頭がぼうっとしてきて、「人の身では無理だ、そうだ『あちら』に渡ればいい」という考えになり、ミゼを退室させ、境界である水=湖に入っていく。

 

クロウ、ジルフォード、ユアンが離宮に突入し、湖に入るフェルの姿を見つけたクロウがフェルに近付こうとすると、オーゼンが出てきて引き止める。クロウはオーゼンがリグレインに匿われていると予想して、離宮の一斉捜索の準備を進め、今朝突入する予定でいたので、オーゼンが出てきても驚かない。

オーゼンは、「隠れずの月」で怪物になった鳥や魚を操っているが、それらはあわいから来たものが直接取り憑いていて、宿主であるオーゼンは正気を保ったまま出し入れできるらしい。
ユアンは「隠れずの月」の獣を操る恩師の姿を目の当たりにし「なぜです?」といって呆然とする。

ジルフォードがクロウに急いでフェルの所へ行くように言うが、今度はリグレインが「彼女の魂は連れ去らえてしまった、もう手遅れ」と呼び止める。そして試すなら術をかけた私を殺すことだと言って、クロウに自分を殺すよう煽るが、クロウはフェルの「あなたに月を残す」という言葉を思い出して思い止まる。

クロウは「あなたなどのために地獄に落ちるわけにはいかないから、あなたを殺さない。俺は先に進む、あなたはそこにいればいい」と言ってフェルの所へ行く。

 

湖に入りフェルを揺さぶって呼びかけても、うつろな眼差しのフェルの頬をクロウは両手で包んで引き寄せ、本当の名前「フェル」と呼びかけ、キスをする・・・ような場面で、「忘れたのか、今日は特売日だ!」と怒鳴ると、フェルが正気を取り戻す。
フェルが正気になってよかったのだが、キスをせずに特売日と言ってしまった自分にもそれが成功したことにも、微妙な気持ちになるクロウ。

湖の中には「隠れずの月」の怪魚がいてフェルを襲ってくるが、クロウが剣で刺して開いたエラにフェルが手を突っ込み(魚の解体の仕事の癖で)、そこに古い剣を見つける。
クロウはモルドレッドの剣ではと思い、ちょうどはめられそうな所にカイズから渡された青い楔石をはめ、その剣とフェルの瞳の力を使って、怪魚を元の魚に戻すことに成功する。

クロウとフェルが湖から出ると、ウーベルの赤龍兵も来ていて(クロウが赤龍兵(=ウーベル)がリグレインの離宮に来ざるを得ないように画策した結果)、リグレインが大人しく捕まる様子を見てオーゼンも怪鳥を収め捕まる。
ジルフォード、ユアン、他大勢の兵たちの目の前で、怪鳥を操る様子を見られたのが証拠となり、リグレインは幽閉されることになった。

 

クロウが見つけたと思ったモルドレッドの剣だが、別にもう1本、剣が離宮で見つかり、ウーベルがもう1本の方をモルドレッドの剣と認めたため、フェルが見つけた剣はクロウの手元に残った。

ケイの素性が明らかにされる。東方帝国の第13皇子で本名は、景蔡泰(けい さいたい)。
皇子だが母の身分は低いし、黒髪黒目が普通の東方帝国で、褐色の肌、金髪という容姿だし、同じ母の子の中でも5番目というのもあるし、エルラントと皇子の扱いが違うので、皇子といってもたいしたことはないのだという。
商人を装った東方帝国の密偵の長をしている。

ケイが東方帝国の密偵ではなく、東方帝国の使者という形を取ることで、ウーベルの追求を逃れ、リグレインの思惑にのってクロウを抑えようとしたウーベルの意図をかわす。

拘束されたオーゼンにクロウは第11聖席の知識について尋ねる。
扉と鍵が揃ったモルドレッドの剣は妖精だけを送り返す力を持っているが、それは妖精王についても同じなのかと。オーゼンの答えは「同じだが違う」。

普通の妖精に取り憑かれた獣やそれを使役していた者は助かるが、妖精王が取り憑いていた場合は違う。
妖精は気に入った死体の屍に青い火を灯し皮を被る。
そして妖精王は必ず人を宿主に選ぶ。

 

楔石をつけたモルドレッドの剣(扉)で妖精王の宿った者の心臓を貫けば、宿主の魂を道連れに妖精王をあちらに葬ることができる。
正しく弔われなかった魂は妖精の餌食になるかもしれないという話があり、妖精に喰われたとしても救われる可能性はあるが、扉を使って屠られた妖精王の宿主は魂もろとも吹き飛び、決して救われることはない。安息の眠りではなく虚無。

クロウが善役を担うように言われた春分節の「花霊の剣舞」の身支度をフェルがクロウにしてあげ、またクロウの髪をすき、ちょっと甘いひととき。

「花霊の剣舞」の悪役はヨミだと思っていたが、背の高さが違い、太刀筋も鋭く、フリーな剣舞だが斬り合いが儀礼の域を出て激しくなり、誰かが入れ替わっているのかと思うが仮面を被っているのでわからない。クロウが小声で咎めると「懐かしいね、クロウ兄上」と悪役が答える。
クロウが仮面を叩き落とすと、現れたのは最後に見たときよりも少し成長して、生きていればこのくらいになっていただろうという姿になったパールだった。

 

感想

この前に番外編の短編集の巻があるんですが、読み飛ばしました。
あとがきによると、ケイの正体やガウェインの昔馴染みゼファはその巻に出てきているようです。
ゼファ?たぶんガウェインがユナイアに戻った時に出てきたんだろうけど、感想を書き飛ばしたみたいだし覚えてない・・・。

あと今までにも触れられていましたが、紙の本にはカバー裏に絵があるようです。
電子書籍でもあるのかどうかわかりませんが、ピッコマにはありません。
そしてコミカライズの事も触れられています。

この巻でやっとウーベルとリグレインが登場しました。
ウーベルは謁見の時にちょっとしゃべっただけだし、心の声も書かれてないので何を考えてるのかは、クロウが推測しているだけで、まだ全くわかりませんが。

 

リグレインは私が思い描いていたのと違って、幼い感じの容姿&言動の人でした。
妖艶な感じで悪い人より、かえってヤバイ感じがするタイプですね。
登場して最後にあっさり?捕まってましたが、たぶんこれで終わりじゃなくてまた出てくるんでしょうね。

オーゼンは聖席として受け継いだ秘儀を意外にあっさり教えてくれました。
まあここでそれがわからないと最後に出てきたパールの登場に、更なるショックを与えられないですしね。

とっても嫌な感じに、パールの身体は使われてて、モルドレッドの剣という妖精への武器を手にしても、それを使うのを一番ためらう相手になってるってことですね。
でも成長してるってことは、パールの身体は生きてるってことなんでしょうか。

ヨミが言っていた「取り戻したいもの」はパールの事なんだろうけど、パールの手帳を見せてくれと言って、ヨミがページをめくって何かを探していた後、クロウとの間に何か会話なかったんだろうか?
「あなたには分かるはず」と言われて、それは何のことだとか、パールの手帳を見て何か見つかったのかとか、尋ねそうなもんだけど、それに対する答えがなかったっていう事なんだろうか。

ヨミの描かれ方からして、今までクロウとの会話で質問にまともに答えてないのであり得るけど、このシーンがここで終わってしまって、その後も何も言及されないで、ヨミが敵か味方かわからないって思われてるままなので、クロウとヨミの会話もあのままでブツッと終わってるの?っていうのが疑問です。

 

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